〈第五十五話 マジですか〉
レンが早々に工房に戻ってから、私たちは約束の時間まで、二十一階層を探索することにした。
探索といっても、遠出はしない。周辺をうろつく程度だ。
セッカとナナの進化の確認をするためだけだから、そんなに遠出する必要ないし、約束の時間に間に合わなかったら困るしね。
魔物の姿を探して三十分ぐらい歩いていると、突然、獣の断末魔が聞こえた。
意外と近くだ。
私たちはシュリナの認識魔法で気配を消し、風下から近付く。
ーー目の前に、ミノタオロスがいた。
二メートルは有に越えているだろうミノタオロスは、単独で行動している。
首から上は牛で、胴体の腹の部分は毛がないが、腹筋が八個に分かれている。背面には毛が生えていて、尻尾も生えていた。そして、二足歩行だ。
金棒で撲殺した魔物を引き千切り、その肉を貪り食っていた。
魔物は既に原形を留めていない。
ただ、フサフサの太い尻尾が落ちている。たぶん、魔狼だろう。
ていうか、ミノタオロスって牛の魔物だよね。
肉食なんだ……
でも、この階層にミノタオロス?
二十一階層から二十二階層を主に探索して十日、ミノタオロスが現れることはなかった。
いや、それ以前に、ミノタオロスがこのダンジョンに出現すること自体、聞いていなかった。二十三階層まで攻略されているから、出現するとしたら、それ以外の階層のはずだ。
事実、ミノタオロスは高位の魔物。
最低ランク(幼体)でさえ、Aランクの魔物だった。
それが、この階層まで上がって来ている。
これは一応、報告しとかなくちゃいけないかな。
そう考えながら、声を出さずに【ステータス】と唱えた。
ーーミノタオロス。
ランクA+(防御特化)
HP 528
魔力 0
魔耐 25
防御 825
防御が異様に高い。それに比べて、魔耐は非常に低い。アンバランスだ。それに、注意すべきは、あの筋肉。力も相当強いだろう。
接近戦は尤も避けたい相手だ。
倒すなら……魔法が妥当だよね。
セッカとナナを試したかったんだけど……仕方ないか。
集団だったら即効逃げるけど、単独なら倒せるかな。
『よい機会だ。ムツキ、セッカとナナを使え』
シュリナが念話で指示を出す。
『えっ……!?』
思わず、隣に浮かんでいるシュリナを凝視する。
……マジですか。
師匠の言うことは絶対だ。
こうなったら、腹を据えるしかない。私は軽く息を吐き出すと、声を上げた。
「サス君、後衛お願い!」と。
いつもはサス君が前衛なのだが、今回は後衛に回る。
と同時に、シュリナは認識を解いた。
セッカとナナを構え戦闘体勢をとる私を、ミノタオロスは一瞥すると、持っていた肉片を地面に叩き付ける。
そしてーーミノタオロスは雄叫びを上げた。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




