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〈第三十九話 大切な存在〉

 


『ココ、少しだけいい?』



 私は念話で、ココをバスルームに連れ出す。



『何~?』



 ココがとことこと、私の後をついてくる。



 私はバスルームに服を着たまま入った。ココが入ると、私はドアを閉めた。



「……訊きたいことがあるんだけど。っていうか、相談かな」



「それは、スザク様やサスケに聞かれたくないこと?」



 バスタブの淵に腰をかける私の腿の上に乗り、ココは私を見上げる。私は頷いた。



「眠ってるのに?」



 シュリナとサス君は、早めの晩ご飯を食べ終わると、そのまま体を小さく丸めて眠ってしまった。疲れてたんだね。私は食事の後、ミレイを下がらせた。



 私はココの台詞に、また頷く。シュリナとサス君の眠りの邪魔はしたくないし、今から話すことを聞かれたくなかった。私は頷いてから口を開く。



「……あのね。教えて欲しいんだ。サス君やシュリナの負担を少しでも軽くしたい。……私の魔力をシュリナとサス君に渡すことが出来るかな」



「使われている分を、常に満杯にしときたいってこと?」



 さすが、ココだ。私がどうしたいか、分かっている。



「スザク様ほどじゃないけど、ムツキの考えていることぐらい分かるよ」

 少し呆れながら、ココは言う。



 確かに、ココの言う通りだ。念話を交わすということは、そういうことだ。心の声と感情は曖昧で密接なもの。私は感情の機微を読むぐらいしか出来ないけど。それも、やろうと思ってだ。ただ、感情の振り幅が大きい時は、私でも伝わってくる。そんな時、私は、シュリナとココ、そしてサス君と繋がってるんだなって、心がほっこりと温かくなるんだ。



「……出来る?」



「う~ん。正直いえば、難しいかな。だって、スザク様もサスケも望んでないからね」



「望んでない?」



「そう。望んでない。スザク様もサスケも、ムツキのことを大切に思ってるからね。出来る限り、負担をかけたくないんだと思うよ。ムツキはさぁ、セッカにもナナにも魔力を与えているよね。それは、僕たちにも言えることなんだ。契約を交わした時点で、ムツキは僕たちに魔力を与えているよ」



「だったら!」



 ーー何で、シュリナもサス君も辛そうなの!? 私の魔力が少ないから? でも、私の魔力は決して少なくない。それに一応、私は神族だ。亜神だ。彼らを助ける一旦を担えるぐらいの魔力はあるはずだ。それとも、私の魔力で補えないほどの魔力を放出してるの?



 私は納得いかなくて、ココに詰め寄る。



「それはね、ムツキ。僕たちは最低限の魔力しか受け取らないからだよ」



(……最低限の魔力?)



「そう。最低限の魔力。従魔の関係を維持している、最低ラインの魔力しか受け取っていない」

 静かな声で、ココは告げる。



 知らなかった。ココが告げた真実は、私を混乱させる。



「……何で?」



「スザク様は言っていたよ。自分は紙と一緒だって。……水溜まりに紙を置くと、水分を吸い取るように、自分もまた、ムツキから大量の魔力を吸ってしまうって。それが理由で、ムツキが危険な目に合うことになったら、自分が許せないってね。大なり小なり、サスケも同じ意見だった。それが、最低限の魔力しか受け取らない理由」



「…………それでも私は、皆の力になりたい。苦しいのが分かってて、何も出来ない自分が嫌……」

 ようやく吐き出した声は、か細く震えていた。



 皆の気持ちは、すっごく嬉しかった。大事にされてることを、改めて知って、心から嬉しかった。嬉しくて、泣きそうになった。でも、その気持ちと比例するように、心に深々とナイフが突き刺さり、苦しいほど痛みだす。痛くて、痛くて、心が悲鳴を上げる。



 そしてその痛みは、当然、ココにも伝わっていた。



「ムツキ……。一つだけ、方法がある」

 ココは悲痛な声で、そう告げた。



(……方法があるの?)



 その言葉を頭で理解した瞬間、弾かれたように、私は俯いていた顔を上げた。



「ムツキ本人から、吸いとることが出来ないのなら、ムツキから直接吸いとらなければいいだけの話だよね」



「他の人から補うってこと? セッカやナナのように」



 セッカとナナの場合は、魔物の血だ。



 まさか、五聖獣のシュリナや霊獣のサス君が、魔物の血を必要としているとは到底思えない。



 だとしたらーー



「代わりの媒体に、ムツキの魔力を封じ込めたものを、スザク様とサスケに、肌身放さず持ってもらえればいいんだよ」



(代わりの媒体? そんな都合のいいもの、あるの?)



「あるよ」

 ココが答える。



「それは何?」



「ムツキがよく見ている物だよ。今も持ってる」



(よく見ている物? 今も持っている物?)



「ーー!! 分かった!! 魔石ね!」

 唐突に、頭にひらめく。ココは大きく頷いた。



 なるほど……。魔石なら……



 それからの、私の行動は早かった。ちゃんとその前に、ココの頬にキスすることは忘れてなかったよ。





 お待たせしました。

 このような時間帯になってしまい、本当に申し訳ありませんでしたm(__)m


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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