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射!~Kyudou~  作者: ココロ丸
19/23

だから俺は

今度久しぶりに大会に出ます

早気、治ってませんw

小的・・・俺も中てたことはないな・・・。それにしてもゆっきーのやつ、ここまで粘るなんて。


「竜!もう少し前!」

「あ、はい!」


それにしても小的って直径24センチしかないから、いまいち位置がわからない・・・


「どうですかー!?」


的の位置を修正し、射場の浅野先生に確認する


「おう、いいぞ!」


ふう。


ゆっきー、中てるかな?・・・結構面白くなってきたかも



「でも・・・なんか」



・・・あー、そっか。


「悔しいのか、俺。ゆっきーと同じ位置に立ってないから」



・・・練習あるのみ、だな




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「始め!」



小的になってもたいしてルールは変わらない。先に外してしまったほうが負けだ。

水谷先輩は24センチの的だって説明してくれたけど・・・




「小さいな。・・・・でも」



雪は呟いた。


そして静かに、丁寧に打ち起こす。



「井田先輩、雪ってどうして突然こんな射に・・」

「隼人、お前も知ってるだろう?雪が毎日遅くまで練習していることを」

「まぁ、話では」

「さっきカーリーに聞いたが、矢数が一日150本は越えてるらしい。」




引き分け。会。下筋での伸びが気持ち良い。


「・・・・・・・・・・・・・・・」




キャン!


パンッ!



雪、的中


「それ、俺の倍以上なんですけど・・・」

「努力の成果だな。緊張した場面で自分に勝てたんだろうな」





ふん、雪は的中か。やるねぇ・・・


でーも




「・・・・・・・・・」




キャン!


パンッ!



俺には勝てない





「水谷君も譲らないわね」

「そりゃそうよ。水谷君、代が変わってから射詰めで負けなしじゃない」





くそ・・・小的で初めて中ったのにその感動する時間すらくれないんですか水谷先輩!


でも、今のこの射なら!



「・・・・・・・」



集中、集中・・・



「やはり会の安定が増してる。なぁ、竜?」

「おわっ・・・井田先輩、いつの間にカメラ回して・・」




キャン!

バチンッ!!

「え?」


カッ!





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「はい、というわけで水谷が優勝!良かったな、一年に負けなくて!」

「いや~、まだまだ余裕ですよ!あはは~」


水谷は爽やかな笑顔で浅野先生からアイスを受け取った。



「ぐぬぅ・・・水谷め!」

「井田先輩、睨みすぎです・・・。でも、やっぱり優勝は水谷先輩か~・・」

「おい竜!そんなこと言うと・・・」


「良いんだよ、隼人。・・・俺は負け犬のノミみたいなもんだから・・はは、あはは」

「あー!雪、元気出せって!お前十分頑張ったって!な?」

「ありがとな、隼人。・・・こんな負け犬のノミに・・・」

「あー!誰か、誰か!この迷える負け犬に救済を!」



「・・・ゆっきーは頑張った。日ごろの練習の花が咲いた。」

「カ、カーリー・・・」

「・・・それは・・・まるで桜のよう」

「うん、無理して良いこと言おうとしなくていいから!あと季節は夏!」

「・・・ふふふ。・・・やっと元気出してくれた」

「なっ・・・カーリー・・お前」

「俺は花粉症だから桜はちょっと・・・」

「隼人!空気を読めよ!?あと、隼人の事情なんて知らないから!」



結局、僕は小的2本目で弦切れをし、動揺して弓手がぶれて、的枠に当たってしまった。


もっとあの雰囲気で引きたいな。水谷先輩だけじゃなく、もっとたくさん。強い人と。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



部活後、水谷は葉月と路地を歩いていた。というのも、帰る方向が同じなのだが・・・



「ね、ねぇ水谷君。隠してること・・・あるでしょ?」

「え?なんのこと?」


「・・・水谷君、バイトしてるでしょ?」

「えっ!?・・・な、なんでそれを・・」


「目撃情報があるのよ。」

「うーわー・・・マジか」

「本当だったのね。・・・呆れた。うちの部はバイト禁止のはずなんだけど?」

「まぁ・・・そうだけど」

「なにか理由でもあるの?水谷君に限って遊ぶ金、なんてことはないと思うけど」



「遊ぶ金なんかじゃない!!」


「・・・!?」



普段は温厚な水谷君が・・・怒鳴った・・・



「あ、いやごめん、ただ私は・・・」

「・・・・いや、俺のほうこそ・・大声出してごめん」

「あ・・・うん・・」


「・・・うん、そうだね。主将様には教えておこうかな。」

「え?」

「俺がバイトしてる理由、知りたいんでしょ?」


知りたい。水谷君は負けず嫌いで、人一倍努力をしていた。でもある日から練習に来ない日が増えていった。でも、練習している時は以前より鋭い目で的を見つめるようになった。

本当は総体だってスタメンで出場できるはずなのに、自分はまだ出場することが出来ない。そういって結局引くことはなかった。


「豪江北高校のある女子なんだけどさ」

「あー、前に練習試合もしたし、強豪高校ね」

「うん。まぁそこの女子と付き合ってるんだ。」



「え!?なに水谷君、彼女とかいたの!?」


「あはは、まぁね。その子は弓道部のマネージャーでさ。」

「マネージャーなの?」

「前まで、引いてた。」

「前まで?」


「ここから先は少し悲しい話になるけど・・・いいかな?」

「水谷君さえよければ」

「そっか・・・分かった。じゃあ話そうか。」




少し気が重そうな彼は息をついた。


私は気になった。彼を怒鳴らせるほどの話が知りたかった。








「あれ?あれは確か弓道部の先輩の人・・・だよね?」



そんな2人を偶然見かけた人がいた。


「なんか深刻そうな顔・・・まさか!部内恋愛!?修羅場!?」


雪の幼馴染の綾乃だった。



「これは報告ですな・・・いや、なんでも言うと人間関係拗れるかも・・・ああ、悩ましい!・・・・まぁ、いっか。あの先輩達の問題だろうし。かーえろ!」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「え・・・じゃあ、絶対に全国に行きたいって言ってたのも?」

「うん」

「無断でバイトしてたのも!?」

「うん」



「ごめん・・・私・・・余計な好奇心で・・」

「ううん、葉月は部の規律を守ろうとしただけでしょ?どんな事情であれ、悪いのは俺だ。」


「でも・・でも!」



葉月の目から涙が流れた。



「・・・泣くなよ。俺は決めたんだ。同情はいらないさ。」

「・・ひっく・・・っ・・・ひっく・・・」


「葉月・・・。」


「・・・ひっく・・・ひっく・・っ・・・そんな話・・・」


「・・・・」


「・・・そん・・なの・・悲しいよ」



「ああ、俺が1番泣きたい。でもな、今は悲しんでる場合じゃないんだ。」

「・・うく・・っ・・」


「全国に行くんだ。絶対に。絶対に!!」




ひぐらしが鳴く夕暮れに向かって彼は叫んだ。


私は彼が強いことを本当の意味で知った。


だから、彼の話を聞いて、悲しいのか、良かったのか。分からなくなっていた。






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