意地
4本目、5本目と的中し続ける雪を隼人は悔しそうな表情で見ていた
「・・・くそ、雪のやついつの間にあんな実力を」
悔しい。ただ純粋に悔しい。もっと練習しないと・・・
「もっと・・・雪以上に」
・・・あ、雪が勝ったらアイス分けてもらおっと
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6本目。朝からほぼ給水なしで弓を引いているカーリーは体力をかなり消耗していた
「・・・・・はぁ、はぁ・・」
・・・暑い。日本の夏はこんなに蒸し暑いなんて・・・
「・・・・・・ふう・・・ふう」
呼吸を整え、引き分ける
「・・・」
キャン!
・・・パンッ!
時間にして2秒ほどしかない会。しかし、矢はしっかり的を貫いた。
「はぁ・・・はぁ・・はぁ」
・・・腕が、身体が重い。
・・・ゆっきーは?
「・・・・・・・・・・・・」
キャン!
パンッ!
雪、的中。
・・・やっぱり。少し前の射も今みたいに会が長くなって、弦音が良くなっていた。
・・・ゆっきー、後ろにいるから分からないけど、きっとカッコイイ射をしているのかな・・・
一方雪は何故こんなに気持ちの良い射が出来ているのか自分でも分からず、不思議に思っていた。
「・・・・?」
なんだ?感覚は会意外変わらない。意識しているわけどもないけど・・・
キャン!
・・・・
「あ・・」
井田、敗退。
「・・・やってしまった」
苦い顔でカケを外す井田に、鹿本が声をかけた
「井田はもともと射詰め弱いもんね?」
「嫌味か!?」
「あはは!ごめんごめん。でもさ、1年生、頑張ってるよね」
「ああ、カーリーに雪か。確かに6本連続か・・・成長したな。」
「いつも遅くまで練習してたもんね」
「・・・ただ、カーリーはそろそろ・・」
「みたいだね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・水谷も当然のように的中。
・・・ちょっと、辛いかも
「・・・はぁ・・はぁ・・はぁ」
打ち起こし・・・大三。
矢道が少しチカチカする。あまり力が入らない。
引き分け・・・会。
「・・・」
キャン!
・・・・・・・
カーリー、敗退。
「・・・・あ」
射場から出た途端、カーリーは視界がぶれるのを感じた。
「おっと・・・大丈夫か、カーリー?」
ふらつくカーリーを支え、浅野が声をかける。
「・・・ちょっと・・・辛い」
「顔色が悪いな。引いてるときにもおかしいとは思ったが・・・葉月、カーリーを道場の外で休ませてやれ。脱水症状かもしれない」
「分かりました。・・・カーリーちゃん、大丈夫?」
「・・・悔しい。」
「え?」
「・・・負けるのは、悔しい」
悔しそうな・・・というより、悲しい目でカーリーは的を見つめた
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さて、一騎打ちですよ先輩
ここからです!
雪、正直驚いたよ。毎日遅くまで残って練習しているのは知ってたけど、これほどの自信に繋がるなんてね・・・。そして時々見せる会の長いあの射・・・絶対モノにしてほしい。
でもアイスは僕のものだよ!
「・・・・・・」
カーリーがいなくなり、自分のタイミングで打ち起こせる。
大三、引き分け・・・よし、リズムは完璧
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
この感覚
キャン!
パンッ!
雪、的中。
これだ。この射なら
「・・・・・・」
キャン!
パンッ!
水谷、的中。
「試合の中で成長していくか・・・」
「浅野先生?」
「・・・井田、ビデオを回しておけ。特に雪の射だ」
「はい。分かりました。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
キャン!
パンッ!
雪、的中
「・・・・・・・」
キャン!
パン!
水谷、的中。
「はい、そこまで!」
9本目が終わったところで、浅野先生が試合を止めた
「え?」
「今から小的に変えるから、一旦退場してぎり粉、中り粉を付け直しな」
指示通り一度退場して下カケを交換し、ぎり粉を付けた
「水谷先輩。小的勝負ですね」
「ふっ・・やるね、雪。でも、俺は手加減する気はないよ?」
「もちろんです!」
「ところで・・・」
「ん?どうした?」
「小的ってなんですか?」
「・・・・お、おう・・・マジか」




