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射!~Kyudou~  作者: ココロ丸
17/23

個人の思い

とにかく夏の弓道場は熱い。直接日光が当たることはないが、道場内は圧倒的な蒸し暑さに包まれていた。


今日は朝から道場にいる浅野。弓を引いているわけではないが、その額には汗が流れている。


そして唐突にこんなことを言った。


「じゃあ、最後に個人戦でもやるか!勝った人は・・・そうだなぁ・・・先生がアイス奢る!」



そして、みんなが食いついた



「「おおおお!!」」



この暑さだ。アイスなんて食べたら極楽だろう。そう考える一同は蒸し暑い道場で闘志を燃やした。



「ルールは単純。全員が一本ずつ引いていき、外した人は抜けていく。最後の1人が優勝ってことでどうだ!?」


「「はい!」」



というわけで、まずは男子5人から引くこととなった。立順は、井田、雪、竜、隼人、水谷とクジで決まった。



「水谷先輩、僕、負けませんよ」

「へぇ、雪。えらく強気だね?」

「僕だってこの夏休み結構練習してるんです!やってやりますよ!」


「ゆっきー、その前に俺達に勝たないとな?」

「竜、隼人。・・・お前らアイスしか頭にないだろ・・・」

「「・・・・・」」



「ま、まぁ、早く始めようぜ?」


そんなやり取りを見ていた井田が声を掛ける。

そして5人が並ぶ。


「起立!・・・はじめ!」


浅野の進行で個人戦が始まった。




「・・・・・・・」



いつもどおりのリズムで打ち起こす水谷先輩。


2番の僕はそれに合わせて打ち起こすタイミングを計る。




キャン!


パンッ!


的中。



「・・・・・・」



水谷先輩が的中したのが分かる。でもそれは僕の的中とは関係ない。そう、集中しろ。



自分の射!




キャン!


パンッ!



的中。



・・・・よし、いつもどおりに引けた。この調子で集中、集中。





「ふむ・・・・雪、上手くなったな・・・」


浅野がポツリと呟く。


「彼、いつも自主練残ってますし、夜まで残ってる時もありますよ?」


葉月が付け加える。


「ほう・・・」







・・・一本目は竜と隼人が外してしまい、退場。アイスへの想いが強すぎたようだ・・・



続いて女子3人。立順はカーリー、鹿本、葉月となった。




「・・・・・・」



キャン!

・・・パンッ!



的中。

カーリーの弓は軽いので、矢は大きな放物線を描いて飛んでいく。よって、弦音のあと、少し間があいて的に中る音がする。

水谷は正反対だ。水谷は重い弓を使用しているため、レーザービームのように矢が飛んでいく。的中時の音も大きい。



女子はまさかの葉月が外してしまった。


「アイス・・・・」


退場後、そんなことを呟いた彼女は、やはりアイスへの想いが強かったのだろうか・・・?




「じゃあ、ここからは5人だな。カーリー、雪、鹿本、井田、水谷の順で行くぞ」



さて、ここからが勝負だ。夏休みは半分過ぎたけど、いよいよ練習の成果を発揮することが出来る!


「負けない、カーリーにも」

「・・・ゆっきー・・・・私も、負けない」




「では、始めるぞー」


中り粉を多めにつける。いつもより少し手汗が多い。


「起立!・・・はじめ!」



足踏み。少し日が差していて、左足だけ熱を感じた。



「・・・・」



リズムの早いカーリー。矢さばきを終えると、すでに取り懸けを始めていた。



「・・・・・」



こいつ、改めて見ると、意外と小さいよな・・・。モデルみたいな感じだけど、どこか・・・


いや、違う違う!・・・集中、集中!



キャン!


・・・パンッ!


カーリー、的中。



「・・・」



ギャン!


パンッ!


雪、的中。




・・・危ない、今のは会がかなり短くなった。伸びあいは意識していたのに、集中が足りなかったのか?



「・・・・・・」



キャン!


・・・パンッ!


鹿本、的中。


カーリーもだったが、鹿本先輩も以前に増して安定した射をしている。



「・・・・・」


キャン!


パンッ!


「・・・・・・」


キャン!


パンッ!



井田、水谷、的中。



「・・・・・・」


カーリーは既に2本目を打ち起こししていた。



「・・・・・・っ」



早い、早いよカーリー・・・



そんなカーリーのリズムに焦る雪を心で微笑む人がいた。


鹿本だった。



「・・・・・・・」


雪、大変そうね。ふふ。カーリーちゃんは実は体配はあまり大前に向いていないんだよね~。合わせるのは結構大変なんだよね・・・。あーあー、打ち起こし早くなってるし。・・・あれ?



「・・・・・・・・・・・・」


さっきとは違ってかなり長い会。写真みたいに動かない。・・・どゆこと?


鹿本は混乱した。思わず大三でリズムが崩れ、手首に力が入ってしまう。



キャン!


パンッ!



雪、的中。



「・・・・・・ッ」



キャン!


・・・・・・



鹿本、敗退。



・・・今、雪の弦音、音が違ったような・・・?むーー!それより悔しい!またカーリーちゃんに負けた!


退場で鹿本はそんなことを思った。


「最後、ずれたよね?」


すぐに葉月が聞いてくる。


「うん・・・」

「なんか雪、いつもと違ったわよ。」

「長かったよね、会。」

「いや、それだけじゃないの。」


え?どういうことだろう。私は直接雪の射を見れないから分からない



「リズムが乱れたように見えたけど・・・なんかね、軽かったのよ。」

「軽かった?」

「うん。なんか表現しにくいんだけど・・・とにかく、いい方向に変化してたの。」


そっか・・・雪、頑張ってたもんね・・・



越されたくないな





「・・・・・・」


雪のやつ、良い射するようになったじゃないか・・・

雪の後ろに立つのは初めてだが、色々分かるな。



勝負は4本目に突入。残っているのはカーリー、雪、井田、水谷。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「・・・・・」


なんだ、さっきの射・・・集中しすぎて何が起こったのか分からなかったが・・・



良い射だったのは分かる



カーリーが相変わらず早いリズムで打ち起こす。



「・・・・・・」


キャン!


・・・パンッ!






的中。


しかし、カーリーの会が段々短くなっていることにみんな気づき始めた。



「・・・・・・・・」




ギャン!


パンッ!


的中。



先ほどとは一点、雪はいつもどおりの射に戻った。






「・・・・・・・」


・・・やはり先ほどの射は偶然かな。結構良かったんだけど


水谷は額の汗を二の腕で拭いながら雪を見た。


・・・でも、さっきの射が出来たら的中率は伸びるだろうなぁ

今もかなりの集中力だけど




キャン!


パンッ!



「・・・・・・・」



井田の的中と同時に引き分けに入る水谷。



的を見つめる。ただそれだけ。中てることは考えない。あとは伸びるだけ。



「・・・・・・・・」



キャン!


パンッ!





アイスは、俺のものだ。


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