接近者
弓道したいなぁ・・・・
熱気に包まれた道路。ずっと先には陽炎が見えている。
さすが夏。暑いな・・・。
「カーリー、今日は何時まで練習する?」
「・・・気分次第?」
「お、おう。そうか」
雪とカーリーは大盛りの店を出て、学校の道場へと歩いていた。
「それにしても暑いな・・・だから夏は嫌いなんだよ・・。カーリーは大丈夫か?」
「・・・暑い。死ぬ。」
「いやそれはない」
「あの~、君達。ちょっといい?」
不意に後ろから話しかけられ、2人は振り返った。
30代前半くらいの男だった。
「あ、俺、こういうものなんだけど」
そういいながらその男は名刺を渡してきた。
「秋雲英二。・・・射?」
「そう!秋雲英二!弓道関係の雑誌を作っているんだけど・・・知らない?射って」
「射・・・いや、僕は雑誌とかはあまり読まないので・・・。というか、僕達になんの用ですか?」
射という名の弓道雑誌を作っているというこの秋雲という男。えらく遠回りに話を進めてくるので、直球で聞いてみた。
「うん。まず、君は雪君だね?そんで、そこの金髪美少女がカーリーさん!・・・合ってるよね?」
なんで名前を・・・
雪が警戒の目をしているのに気づいたのか、秋雲は笑いながら言った。
「いや~、ただ少し話を聞きたいだけだよ!」
「・・・ゆっきー、この人別に悪い人じゃないよ。」
「おお!さすがカーリーさん!では、早速話を・・・」
「知らない人と話しちゃいけない」
「え・・・」
「・・・行こう、ゆっきー」
「え?あ、ああ、そうだな」
「ん?え?ちょっ・・・」
カーリーが雪の手を引いて曲がり角を曲がる。
慌てて秋雲も追いかけて曲がるが、そこはもう八城工業高校の目の前だった。
「む・・・ここで騒ぐとまずいな・・・。仕方ない、今日は戻るか・・」
はぁ、と息をついて秋雲英二は路地裏へと歩く始めた。
あの茶目っ気の表情は浮かんでいなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おう、おかえり。あれ?隼人と竜は?」
道場に戻ると水谷先輩と井田先輩が既に練習を始めていた。コンビニ弁当で済ませた鹿本先輩も弓を引いていた。
「もう少ししたら来ると思いますよ?あ、そういえば、先輩たち、射っていう雑誌知ってますか?」
「ああ、射か。そこの棚に置いてあるやつだろ?」
え?
井田先輩の指差す棚には、射が確かにあった。しかも月刊・・・。道場内にあったとは・・・
「雪、気づかなかったのか?というか、その射がどうかしたか?」
僕はそこで秋雲英二のことを話した。
「ただの変質者じゃねぇの?」
井田先輩は笑いながらそういった。しかし、水谷先輩は驚いた表情をしている。
「先輩?」
「雪、お前秋雲さんに会ったのか?今さっきそこらへんの道で?」
「はい。・・・知り合いですか?」
「秋雲英二さんは、天皇杯で優勝した経験をもつ人だ。高校時代でも多くの武勇伝があるけど・・」
「そ、そうなんですか?」
まさかそんな人だったとは・・・
「秋雲さんが何で雪やカーリーちゃんに・・・いや、カーリーちゃんか!」
ああ、カーリー単体に興味ありで僕はおまけってことか・・・・
「確かに外国人が弓道をするのは珍しいからね。特にカーリーちゃんは可愛いから」
いつの間にか会話の中にいた鹿本先輩がニヤニヤしながら言った。
「・・・べ、別に可愛くは・・ない」
「照れてるのか、カーリー?」
「ゆっきーうるさい。・・・早く練習。」
そういうとカーリーは更衣室へと入っていった。
「ニヤニヤニヤ」
「ニヤニヤニヤ」
「ニヤニヤニヤ」
「井田先輩・・・何笑っ・・・竜、隼人、戻ってきて早々ニヤニヤするな・・」
しばし、ツンデレ夫婦と少しいじられることになった
この前の大雪は酷かったですね笑




