2.ウマミ村への旅路
みなさん、お元気ですか。
車輪のある乗り物に乗ると、横を向いてあいさつしたくなるのは、私だけではないはず。
ウマミ村にむけて馬車が出発しました。御者台にいるけど荷馬車に揺られている。
ドナドナ。
それにしても、あちらの情報が足りない。ちょっと聞いてみよう。
「ウマミ村のウマミってこの世界の単語じゃないような気がするけど、どうしてそんな名前なの?」
「ウマミ村の名前? それは村を作った長老のロマンである、ファンタジー世界での自動車を作ってみたいというのに関係があるのよ。確かある大きな自動車会社の本社が村にあったらしくて、それにあやかって名付けたらしいわ。」
「えっ、自動車!? 自動車があるならこんな荷馬車に揺られないですむのに。
どうして自動車でこなかったの?」
「自動車の本体は作れそうだったけど、燃料が見つからなかったの。
だから自動車は作ってないわ。」
「ファンタジー世界だから、魔石とかそういうのはないの? それとも蒸気機関で……。」
「前世で蒸気機関車を見たことがない? 車体の三分の一ぐらいは石炭を積んでいるわ。なかなか燃費が悪いのよ、蒸気機関って。」
「そうなんだ……。」
「魔石みたいなエネルギーを貯める物質も見つかってないわ。女神様も作ってくれなかったし。」
自動車の期待が膨らみ、一瞬でしぼんでしまった。
「それなら自転車とかローラースルーゴーゴーみたいなものは作れるでしょ。」
「ローラースルーゴーゴーって……、何?」
「ほら、座らずに乗る前が二輪の三輪車で、後ろの車輪をペダルを蹴って動かす乗り物よ。」
「あっ、キックボードみたいなものね。」
「キックボードは地面を蹴って動かすけど、ローラースルーゴーゴーは地面を足で蹴らずに動かせるのよ。」
「それで、ローラースルーゴーゴーは自転車より速いの?」
「速くない……。」
「とにかく、道はガタガタだし、ゴムのタイヤもないから自動車があったとしても速く走れないわ。自転車も同様。」
「でも、パジェロなら不整地でも……。」
「パジェロも自動車。無理。」
「自転車ならBMXだったら不整地も走れるわ。」
「BMXでも結局は自転車でしょ。多くの荷物は運べないわ。荷馬車の代わりにはならない。」
だんだんシャールの口調が強くなってきているような気がする。
ウマミ村の科学技術がどの程度か分からないから、聞いただけなのに。
「ところで、村の長老はファンタジー世界で自動車を作ろうとしていたみたいだけど、シャールさんにはそういう夢みたいなものってないの?」
「よくぞ聞いてくれました。
私、シャール ジョバニールにはロマンがある!」
「ロマンって、ミクロマン?」
「そうそう、ボーカロイドに自分では歌えない歌を歌わせるのはロマンだよね。」
「シャラップ! ボケをボケで返してはいけないって学校で習わなかった? 社会の常識だよ!
とにかくミクロマンというのは男児向けの10cmぐらいの人形で、ロボットに乗せたりするおもちゃ。
ミクロマンとロボダッチは、おもちゃがそこそこ売れたけど、アニメ化してないのよ。」
「いつの話だよ……。」
「それとも東京の下の方とか。」
「???」
「東京ロマンチカ……。」
「なにそれ。」
「それとも日活ロマン「それ以上、女の子は言ってはいけない!!」」
シャールは大声で私の言葉をさえぎった。
「ロマンは飛行もしないし、漫才大会で二連覇もしない!」
「そうなんだ。ロマンチックは止まるし、あげないよね。」
「ボケをボケで返してはいけないんじゃなかったのか?」
「私、ボケてないよ。」
「……。」
シャールは自分を落ち着かせるように深呼吸をしていた。
私の話に疲れる要素などなかったのに、たぶん。
しばらくしてから、シャールは落ち着いて話し始めた。
「私のロマンの話だったね。
ファンタジー世界ならではの服装として、ビキニアーマーってあるよね。
私はビキニアーマーを着た人に囲まれて暮らしたいんだ。
防御力があまりなく、寒そうなあの鎧。
まさしくロマンじゃないか。」
「ということは、私もビキニアーマーを着るってこと? 背も低いし胸も小さいから似合わないわよ。」
「それは成長すればなんとかなる。」
「私のお母さんは背が低い方だよ。」
「大丈夫、子供の身長は伸びる。適切なことをすれば絶対に背は伸びる。」
「適切なことって何?」
シャールは初対面の時のような、してやったりという顔で話し始めた。
「身長を伸ばすには大切なことがいくつかある。」
「そうだよね。」
「適切な食事。」
「うん。」
「適切な運動。」
「うん。」
「適切な睡眠。」
「うん。うん。」
「適切な魔法。
これらを実行すれば、子供は誰でも180cmぐらいになれる!」
「ちょっと待って! 最後! 最後の適切!」
前世、身長が143cmしかなかった私は、近くまでこられて『あれ~、あいつはどこに行ったのかな~』とかやられたり、私の話を聞くためにしゃがまれたり、階段で下から見上げられ『大きくなったね~』とか言われたりした。
そんな私が身長180cmって……。
「け、契約では私はマンガを描けばいいとなってました。」
「そして、いろいろな経験を積んでもらうとも、なっていた。
ファンタジー世界なら、冒険者でしょ? 冒険者にもなってもらわないと、いいマンガは描けないよ。」
「げ、限度があるかと。」
「背が高くてもマンガは描けるよ。とにかく戦うのは背が高い方が有利。
大丈夫、慣れるよ。」
ふと考えると、身長が高いのはいいことだと思う。
「しかし、方法が……。」
「ちゃんと実績があるから安全だよ。私もその方法で背が高くなった。」
「痛く、ない?」
「痛くなかったよ。大丈夫、大丈夫。」
「……。」
ということで、私は180cmの長身となって、ビキニアーマーを着ることになるらしい……。




