1.チャーザー村にて
驚き桃の木山椒の木。元同人作家である私は異世界のド田舎の村長の娘として転生しました。
兵士の娘じゃなくてよかった。村にはいろんな材料があったから。
溢れでる創作意欲を満たすために、麦わらから藁半紙を、かまどや煙突の煤から鉛筆もどきを作った。
村長である父親がそれを交易品として量産してくれたので、おこぼれにあずかっている私の創作活動はそこそこ充実している。
十二歳になった時、ある人物が私の部屋にずかずかとやってきた。
その人物は、部屋に貼ってある私の力作を見て言った。
「ちょっと顎がとがりすぎじゃない? あの絵は君のお父さん? 美化しすぎじゃない?」
いきなり疑問の三連発。
いくら年上でも失礼すぎる。
「いきなり何ですか!
あの絵は……たしかに美化しすぎかもしれないけど、藁半紙とか量産するためにお父さんを説得する材料として、しかたなかったんですよ!」
「でも、あの顎はないわ~。カイジよりとんがってるじゃない。」
「そんなことはないです! カイジよりは……。」
私ははっとして、口をつぐんだ。
ヤツを見てみると、ニヤニヤと私を見ている。
気まずい。
そして多分バレた。私が転生者であることを。と同時にヤツも同類ということも。
「まあ、私たちの正体はおいといて、真っ白な紙で作品を作ってみない?
そのためにスカウトに来たのだけど。」
「真っ白な紙! もちろんいい筆記具も……あるんですよね……。」
我を忘れて答えたけど、初対面で年上の人だった……。ちょっと失礼だったかもしれない。
「ちょっとビックリさせてしまったかもしれないけど、転生者かどうか確認したかったの。ごめんなさいね。
いろいろ話したいことがあるかもしれないけど、私の目的として転生者を集めているの。ほぼ転生者だけの村があるのだけど、そこに奉公に来ない?」
「奉公? あの『おしん』が船に乗せられてドナドナされること?」
「まったく違うって訳ではないけど……、子牛のように売られていくわけじゃないわ。きちんとあなたのお父さんに許可を取ってからウマミ村に……。
あっ、ウマミ村というのは転生者が集まっている村のことね。
とにかく、きちんと手続きをして来てもらいたいの、三、四年ぐらい。」
「ちょっと待って、展開が早すぎるわ。あなたの名前も聞いてないし。」
「そういえば自己紹介がまだだったわね。
私の名前はシャール ジョバニール。行商をしながら転生者を探す旅をしているわ。
紙? と鉛筆? を作った子がいると聞いてこの村にやってきたの。」
「私の名前はアイナゴ。姓はないわ。
ところで私が作ったのはきちんとした藁半紙と鉛筆です! ちょっと鉛筆のほうは芯が折れやすいけど……。」
改めてシャールを見てみた。背が高い。180cmぐらいあるんじゃないかな。髪の毛の色は赤味のかかったブラウンで瞳の色はブラウン。彫りの深い顔立ちで、スタイルもいい。
ちなみに私は成長途中で身長は140cmほど。髪の毛や瞳の色は前世と同じ黒だ。
「それで、私はウマミ村で何をすればいいの?」
「村ではマンガを描いてほしいわ。
あと、アイナゴちゃんはこの世界のことをよく知らないでしょ。
だから、漫画の題材となるような、いろんな経験をしてほしいな。」
「いろんな経験? 誰でも一度だけするようなこと?」
「たぶん、思っているような経験じゃなくて……。ところで、この世界に魔法があること知ってる? あなたも魔法が使えるようになってほしいわ。」
風のうわさで魔法があることは知ってた。でもどうやって魔法が使えるようになるのだろう。
私が言葉の意味を考えていると、シャールが説明しだした。
「魔法っていうのは神様か精霊様にお願いして超常現象が起こることでしょ、呪文とか唱えて。
この世界では宗教の熱心な信者でなければ、魔法は使えないわ。」
「えっ、この村の教会が奉ってる宗教じゃだめなの?」
「この村で信仰されている宗教でも魔法が使えるかもしれないけど、私たちに都合のいいような魔法は分からないわ。神様によって違うもの。
だけど私たちが信仰している女神様は、よっぽどではない限りお願いを聞いてくれるわ。
勢力範囲の中だけだけどね。」
「じゃあ、眠らなくてもいい魔法とか、視力が悪くならない魔法とか、トイレにいかなくてもいい魔法とか……。」
「ちょっとまって、そこまで都合がいい魔法はない、はず。たぶん。
どうしてそんなオタクの夢のような魔法がぽんぽん出てくるの。
でも女神様にお願いしてみたら、そんな魔法が使えるようになるかもしれないかな。いや、ならないだろうなぁ……。」
「でも可能性はゼロではないですよね。
私、ウマミ村に行って、改宗して、女神様にお願いしてみます!
連れて行ってください、スキーに……じゃなくてウマミ村に!」
私が了解してことによって、事はとんとん拍子に進んでいった。
私はあれだけの金貨を積み上げた交渉は初めて見た。ああいうやり方があることも知っていたが、私がその対象になったのはちょっと複雑な気分だ。
そして四年間、私はウマミ村に行くことが決まった。
ちなみに、ブリキにタヌキにセンタクキは、この世界では見かけてない。




