第59話 こいつと……結婚
その頃、ゼルス王国では――。
「ヴァン。あなた、リアと結婚しなさい」
王妃はヴァンを部屋に呼び付けるなり、そう告げた。
「……はっ?」
ヴァンは素っ頓狂な声を上げる。
「いきなり、何言ってんだよ!」
「いきなりではありません。前から決めていたことです」
「前からって……俺は何も聞いてねぇぞ!」
「ええ。話していませんでしたから」
「それをいきなりっつーんだよ!」
ヴァンが声を荒らげるが、王妃は気にした様子もない。
「あなたに話す必要がなかっただけです」
「はぁ!?」
王妃は静かにヴァンを見つめる。
「リアは、おそらく十一年前に姿を消したアスタリア王国の王女です」
「…………」
先ほどまで声を荒らげていたヴァンの表情が固まった。
「……あいつが?」
「ええ。年齢。そして光と闇、二つの属性を持っていること。偶然とは考えにくいでしょう」
「…………」
「アスタリア王家の血を、ゼルス王家へ取り込む。それは十一年前から考えていたことです」
ヴァンが眉を寄せる。
「……だから、俺とリアを結婚させるってのかよ」
「そうです」
「本人は?」
「何です?」
「リアは、そのこと知ってんのかって聞いてんだよ」
「いいえ。まだ話していません」
「だったら――」
「本人の意思は関係ありません」
「……何だよ、それ」
ヴァンの表情が険しくなる。
「俺は、そんな話に従うつもりはねぇぞ」
しかし、王妃は涼しい顔で微笑むだけだった。
* * *
王妃の部屋を出たヴァンは、そのままリアのいる部屋へと戻った。
「…………」
部屋へ入ってきたヴァンを見て、リアが不思議そうに首を傾げる。
「ヴァンさん、そんな険しい顔してどうしたんですか?」
「……別に」
「そうですか?」
リアはキョトンとしたまま、ヴァンを見つめる。
「…………」
ヴァンも、そんなリアをじっと見つめ返した。
(こいつと……結婚)
そう考えると、何だか妙な気分になる。
(……まぁ、俺は別に、こいつと結婚してもいいけど――)
「――はっ!?」
「えっ?」
(いや、俺何考えてんだよ!)
ヴァンは勢いよくリアから顔を逸らした。
「……ヴァンさん?」
「なんでもねぇ!」
「でも今、自分でびっくりしてませんでした?」
「してねぇよ!」
「してましたよ」
「うるせぇ!」
「えぇ……」
リアはますます分からなくなって、首を傾げる。
(ほんとにヴァンさん、どうしちゃったんだろ……)




