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帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


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第58話 ……身分?

 ゼルス王国――。


 王妃の元に、エルディア王国からの正式な書状が届く。


 王妃は静かに書状を開き、その内容に目を通した。


「……返還、ね」


 そう呟くと、王妃はゆっくりと口元に笑みを浮かべた。


 * * *


「殿下! ゼルス王国から返答がありました」


 ノアは手にした書状を開き、その内容を読み上げる。


「『彼女の身分について確認すべき事項があるため、現時点での引き渡しには応じられない』……とのことです」


「……身分?」


 ルシアスが僅かに眉を寄せる。


「妙ですね……。なぜゼルス王国が、リア殿の身分を確認する必要があるのでしょうか」


 ノアも怪訝そうに書状へ視線を落とした。


「…………」


 ルシアスは黙ったまま考え込む。


 リアが狙われた理由。


 ゼルス王国が、彼女の身分を確認しようとしている理由。


「……オスカーを呼べ」


「はい」


 しばらくすると、オスカーが部屋へやってきた。


「先生、実はゼルス王国からこんな返答がきて――」


 ノアは、リアの身分について確認すべきことがあるため、現時点では引き渡しに応じられないという返答があったことを説明する。


 話を聞き終えたオスカーは、考え込むように顎へ手を添えた。


「……身分、ねぇ」


「オスカーの見解を聞きたい」


 ルシアスが静かに告げる。


「そうだねぇ……」


 オスカーはしばらく考えたあと、ゆっくりと口を開いた。


「どうやら、ただの誘拐ってわけじゃなさそうだね」

 

「と、いうと?」


「リアちゃんを連れ去ったことと、身分を確認すること。この二つには、何か繋がりがあると考えた方が自然だろうねぇ」


「……つまり、ゼルス王国には、リア殿を連れ去るだけの理由があったと?」

 

「そういうことだね。ただ、その理由が何なのかまでは、まだわからないけどねぇ」

 

「…………」


 ルシアスの瞳が僅かに細められる。


「調べられるか」


「ゼルス王国が、どうしてお嬢さんの身分を気にしているのか――だね?」


「ああ」


「そうだねぇ……少し調べてみるとしようか」


 オスカーはそう言って、ゆっくりと頷いた。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!

皆さまに少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

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