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帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


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第47話 リア様、逃げてください!

 建国祭から、数日が経った。


 あれからリアは、ルシアスの言葉が頭から離れずにいた。


『お前がどこから来たかは関係ない。今、お前がここにいるなら――俺は、お前に笑っていてほしい』


(どうしよう……気を抜くと、あの時のルシアスさんが出てくる)


 思い出すたびに、胸の奥が落ち着かなくなる。


 そんなリアの変化に、ナタリーはとっくに気づいていた。


(いったい殿下と、どんなことがあったのでしょう)


 どこか楽しそうにリアを見つめていると――。


 コン、コン。


 部屋の扉がノックされた。


 扉を開けると、そこには最近王宮に雇われた使用人が立っていた。


「失礼いたします。リア様、オスカー様がお呼びです」


「オスカーさんが? なんだろう?」


「先日の魔法について、少し分かったことがあるそうです」


「そうなんですね! わかりました。ナタリーさん、一緒に来てもらえますか?」


「もちろんです」


 リアはナタリーとともに、使用人のあとについて部屋を出た。


 (……あれ? こっちだったっけ?)

 

 リアが首を傾げた、その時。


「……あの」


 使用人が振り返る。


「どこへ向かっているんですか? 研究室へ向かう方向ではありませんよね?」


 使用人はピタリと足を止めた。


 すると――。


 廊下の角から、二人の男が姿を現した。


「……え?」


 リアが思わず足を止める。


 ナタリーはすぐさまリアの前へ出た。


「リア様、私の後ろへ」


「ナタリーさん……?」


 その声に、先ほどまでの柔らかさはない。


 使用人の男がゆっくりと振り返る。


「申し訳ありません、リア様」


 そう言いながらも、その表情に申し訳なさなど微塵もなかった。


「少々、我々と一緒に来ていただきます」


「……誰なんですか、あなたたち」


 リアが身構える。


「リア様、逃げてください!」


 ナタリーが叫んだ、その瞬間――。


 床に刻まれていた魔法陣が、淡い光を放った。


「えっ……?」


 リアが足元へ視線を落とす。


 いつの間に――。


「リア様!」


 ナタリーがリアへ手を伸ばす。


 けれど、その手が届くより早く、魔法陣の光が一気に強くなった。


 眩い光に、ナタリーは思わず目を閉じる。

 

 そして、再び目を開けた時には――。

 

「……リア様?」

 

 そこにいたはずのリアも、男たちも、跡形もなく消えていた。

 

「そんな……!」

 

 ナタリーは慌てて周囲を見渡す。

 

 しかし、どこにもリアの姿はない。

 

(早く……殿下にお知らせしなければ!)

 

 ナタリーは、急いでルシアスたちの元へと向かった。


「殿下……!」


 勢いよく扉が開き、ルシアスが顔を上げる。


 そこには、息を切らしたナタリーが立っていた。


「どうした」


「リア様が……!」


 その名前を聞いた瞬間、ルシアスの表情が変わる。


「リアに何があった」


「連れ去られました……!」


「……何?」


 ルシアスが立ち上がる。


 そばにいたノアも、険しい表情でナタリーを見た。


「どういうことだ」


「オスカー様がお呼びだと使用人が部屋へ来たんです。ですが、研究室とは違う場所へ案内されて……そこで突然、床の魔法陣が光って……」


「魔法陣?」


「はい。光が消えた時には、リア様たちの姿が消えていました」


 一瞬、部屋が静まり返る。


「その場所へ案内しろ」


 ルシアスの声が、低く響いた。


 ナタリーに案内され、ルシアスとノアはリアが消えた場所へと急いだ。


 ほどなくして、知らせを受けたオスカーも駆けつける。


「先生、これは……」


「ちょっと待って」


 オスカーは床に残された魔法陣の跡へしゃがみ込み、じっと目を凝らした。


 しばらく調べていたオスカーの表情が、次第に険しくなっていく。


「……これは転移魔法の痕跡だ」


「転移魔法?」


 ノアが聞き返す。


「正確には、その出来損ないだね。こんなもの、普通なら使い物にならない」


 オスカーは床に残る術式を指でなぞる。


「だが――行き先をあらかじめ固定し、一度きりの転移に限定すれば、発動させることは可能だ」

 

「行き先は分かるのか」


 ルシアスが尋ねる。


 オスカーはしばらく術式を見つめたあと、首を横に振った。


「……いや。これだけじゃ分からない」


 ルシアスの表情が険しくなる。


「ノア」


「はい」


「城門を封鎖しろ。王宮内に協力者が残っている可能性がある。今日出入りした者をすべて調べろ。最近雇われた使用人についてもだ」

 

「承知しました」


「それと、各地へ捜索を出せ」


 ルシアスはもう一度、リアが消えた場所へ視線を落とした。

 

 ほんの数日前まで、隣で笑っていたリア。

 

 その姿が脳裏をよぎる。

 

 ルシアスは拳を強く握りしめた。

 

「……必ず見つける」

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます!


皆さまに少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


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