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帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


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第31話 万年筆……!

 しばらく歩くと、市場の中心地に着き、人も増えてきた。


「リア」


 後ろからルシアスが話しかけてきた。


「あまり離れないように」


「大丈夫ですよ」


「……そういう問題じゃない」


 ルシアスはそう言って、リアとの距離を確認するように視線を向けた


「ふふ……ルシアスさんって、意外と心配性ですね」


 リアはクスクス笑いながらルシアスを見る。

 そして、そのままルシアスの隣を歩き始めた。


「お前が無防備すぎるだけだ」


「あっ……!」


 そのとき、リアは一軒の雑貨屋を見つけ、そちらへ駆けていく。


「……まったく。言った側から……」


 ルシアスは呆れたようにため息を吐くと、リアの後を追った。


 店の中に入ると、可愛らしい小物がたくさん並んでいた。リアは目を輝かせながら、ガラス細工の置物を手に取る。


(この間、ルシアスさんからプレゼントをもらったから、お返しに何か買おうかな)


 リアは店内を見回す。


 カインとノアは、いつの間にか別の棚の前で足を止めていた。


「これはリアに似合いそうだね」


「そうですね。でも、こちらのほうがリア殿には似合うと思いますよ」


 二人は互いに意見を譲らず、リアに似合いそうな小物を真剣に選んでいる。


 一方、ルシアスは店の隅でそんな三人の様子を静かに眺めていた。


 リアはそんなことには気づかず、ナタリーに声をかける。


「ナタリーさん」


「はい?」


「この間、ルシアスさんからプレゼントをもらったので、お返しに何か買いたいんですけど……何がいいと思いますか?」


「殿下へのお返しですか?」


 ナタリーは少し考えるように店内を見回すと、文房具が置かれている棚へ向かった。


「それでしたら、公務で使う万年筆なんていかがでしょう?」


(リア様から貰ったものなら、何でも喜びそうですが……)


「万年筆……!いいですね!」


(たくさん種類があるなぁ……。ルシアスさんのイメージは、青とかシルバーかな)


リアは首を傾げながら、青やシルバーの万年筆を探す。


「あっ……!これ、どうですか?」


 リアが選んだのは、深い青色の万年筆だった。キャップはシルバーになっている。


「殿下にお似合いだと思います!」


 ナタリーが微笑む。


「ですよね!じゃあ、これにします」


「ええ、きっと喜びますよ」


 リアは万年筆を手に、店主のもとへ向かう。


(殿下はどんな反応をするのかしら……)


 ナタリーは、リアがプレゼントを渡すところをこっそり覗こうと考えていた。

 

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