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帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


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第29話 ノアさん、ナイスフォロー……!

「リア様、朝ですよ」


「んー……あと五分……」


「今日は王都へお出かけする日ですよ」


「……!」


 リアは勢いよく起き上がった。


「そうでした!」


 ナタリーは思わず笑った。


「昨日までとは大違いですね」


「だって、今日は王都を見て回れるんですよ!」


「はい。カイン王子が案内してくださるそうですね」


「どんなところがあるんだろう」


 リアはふと、今回アヴェリオスへ来た本来の目的を思い出した。


(そうだ。アストリア王国のことも調べないと……)


 すっかり観光気分になっていたリアは、慌てて気を引き締めた。


 そして集合場所に行くと、もうすでにみんな集まっていた。


「お待たせしました!」


「リア、おはよう!今日はどこか行きたいところはある?」


「おはようございます!はい……最初は資料館に行きたいです」


「資料館?」


 カインが少し意外そうに首を傾げる。


「えっと……勉強になりますし!」


(しまった。もっとそれっぽい理由を考えておけばよかった……)


 リアが内心焦っていると、ノアが口を開いた。


「リア殿は魔法に興味がおありですからねぇ。アヴェリオスは魔法研究が盛んな国ですし、王都の資料館なら珍しい資料もあるでしょう」


 (ノアさん、ナイスフォロー……!)


「なるほど。それなら面白そうですね! では、まず資料館へ行きましょうか」


 カインが納得したように頷く。


「よろしくお願いします」


 そうして一行は馬車へ乗り込んだ。


 しばらく馬車に揺られていると、やがて目的地へ到着した。


「こちらが王都の資料館です」


 カインが馬車から降りながら告げる。


「わぁ……!」


 リアは目を輝かせ、資料館を見上げる。


「私はセバスさんに頼まれている用事があるので、少し別のところへ行ってきますね!昼食の時間になったら合流しましょう」


「分かりました!じゃあ、また後で!」


 リアはナタリーに手を振る。


 ナタリーと別れ、リア達は資料館へ入っていった。


 中には魔法や歴史に関する資料が所狭しと並んでいる。


「すごい……! こんなにたくさんあるんですね」


 リアは興味深そうに棚を見て回る。


 そして、アストリア王国に関する資料を探し始めた。


 しばらくして、カインが一冊の資料に目を留めた。

 

「アストリアか……懐かしいな」


「カイン王子、アストリア王国に行ったことがあるんですか?」

 

 リアが尋ねると、カインは少し遠くを見るように笑った。


「昔、よく遊びに行ってたんだ。アヴェリオスとアストリアは交流があったからね」


「へぇ……!」


「俺が十歳くらいの頃だったかな。あの頃はよく王宮にも行ってたよ」


「そうなんですね」


 リアは興味深そうにカインを見た。


「確か、当時の王女は俺より三つ下だったから……七歳くらいだったかな」


「どんな子だったんですか?」


 カインは少し考えるように首を傾げた。


「そうだな……明るくて、元気な子だったよ」


「へぇ」


「ただ、ちょっとおっちょこちょいだったかな。よく庭を走り回って転んでた記憶がある」


「ふふっ。そうなんですね」


 リアは微笑みながら、再び資料へ目を落とした。


「……この記録」


 ルシアスが古い資料を指でなぞる。


「アストリア王国が滅亡する直前、隣国との間で軍事衝突があったとある」


「隣国……」


 リアは以前、王宮の書庫で見た資料を思い出した。


(そういえば、アストリアは隣国に攻められたって書いてあった……)


 ルシアスがページをめくる。


「当時、アストリアと国境を接していた国の中に、ゼルス王国がある」


「ゼルス王国……あの独裁国ですか?」


 ノアが資料を覗き込み、少しだけ眉を寄せる。


「治安もあまり良くないと聞きますし、何かと悪い噂の絶えない国ですねぇ」

 

「えっ……そんな国がアストリアを……?」


「いや、まだ断定はできない。資料にも国名までは書かれていない」


 ルシアスが資料を見つめる。


「……ただ、アストリアが魔法研究で知られた国だったことは間違いないようだ」


 そう言って、ルシアスは隣の棚へ視線を移した。


「魔法関連の資料もかなり多いな」


「本当ですね」


 リアも興味を引かれ、ルシアスの隣へ歩み寄る。


 いくつかの資料を眺めていると、古びた一冊の本が目に入った。


「禁呪……?」


 リアが表紙に書かれた文字を読み上げる。


「禁呪の記録ですねぇ」


 ノアが横から覗き込む。


「現在、禁呪として扱われている魔法がまとめられているようです」


「召喚魔法……転移魔法……記憶封印……」


(召喚魔法……エルディアの図書館でも禁忌だって書いてあったっけ)


 リアがページをめくる。


「死者蘇生に、魂魄操作……こんなものまで」


「どれも危険性が高く、現在では使用が禁じられているようですね」


「アストリアも魔法研究が盛んな国だったからね。昔、遊びに行ったときも、魔法に関する話をよく聞いたよ」

 

「そうなんですね」


 リアは資料をめくりながら頷く。


「……あの国がなくなるなんて、当時は思いもしなかったな」


 カインは遠くを見つめるように呟いた。


 しばらくアストリア王国に関する資料を探したが、これ以上めぼしい情報は見つからなかった。


「これ以上探しても、他の情報は出てこないだろう」


 ルシアスはリアにそっと告げる。


「そうですね、そろそろ資料館を出ましょうか」


 リアはカインの元へ行く。


「カイン王子!たくさん勉強できました!そろそろ他のところに行きましょう」


「そうだね!そろそろお昼だし、おすすめのレストランがあるんだ。そこで昼食をとろう」


「もうそんな時間なんですね!どうりでお腹がすいたなと思ってました」


 リアがこてんと首を傾ける。


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