第28話 いつか悪い女に捕まっちゃうよ……
今日は、待ちに待った魔法研究の発表会の日だ。
(みんなどんな魔法を発表するんだろう……)
リアは朝から目を輝かせていた。
朝食を食べ終え、会場に着くと、オスカーが研究発表の準備をしていた。
リアたちは関係者席へ移動し、ルシアスは少し離れた来賓席へ向かった。
「リア殿、席はこちらですね」
「はい!」
ノアに続いて席についたリアは、ふと前方に目を向けた。
来賓席には、ルシアスが座っている。
(さすが王子様!やっぱりああいう席なんだ……)
そんなことを考えていると、不意にルシアスと目が合った。
「……?」
ルシアスは一瞬だけリアを見つめると、わずかに目を細めた。
リアは嬉しそうに、小さく手を振る。
するとルシアスも、ほんの少しだけ頷いた。
「これより、魔法研究の発表を始めます」
アナウンスが流れ、他国の研究者たちによる発表が始まった。
いくつかの発表が続き、やがてオスカーの番がやってきた。
魔法陣の構造や魔力効率についての研究が披露される。
「……うーん」
「分からないですか?」
ノアが小声で聞いてくる。
「はい……。でも、オスカーさんがすごいってことは分かります!」
「……そこですか」
ノアが苦笑する。
「だって難しいこといっぱい話してるんですもん」
リアは感心したように舞台を見つめた。
やがて発表が終わると、会場から大きな拍手が沸き起こった。
それからも他国の発表が続き、あっという間に時間は過ぎていった。
「以上で、魔法研究発表会は終了します」
終了のアナウンスが流れると、会場からは次々と人が立ち上がった。
「終わったー!」
リアも席を立ち、ぐっと背伸びをする。
「お疲れ様でした、リア殿」
「ノアさんもお疲れ様です」
こうして、魔法研究発表会は幕を閉じた。
そして翌日。
「わぁ……!これ、どうやって使うんだろう」
展示会場に入った瞬間、リアの目が輝いた。
「何か気に入った物があれば、いつでも言って」
後ろからカインの声が聞こえた。
「あ、カイン王子!これってなんですか?」
リアは目の前に展示されている魔法道具を指差した。
「それは魔力を込めると、温度を調整できる魔法具だよ」
「へぇ……便利そう!」
「気に入った?」
「はい!」
「じゃあ買おうか」
「え?」
「気に入ったんだろ?」
「いやいや、見るだけで十分ですよ」
「遠慮しなくていいよ。リアが欲しいものは全部買ってあげる」
(カイン王子、いつか悪い女に捕まっちゃうよ……ちょっと心配だな)
「カイン王子、落ち着いてください」
ナタリーがすかさず口を挟んだ。
「展示品を全部買われたら、持って帰れません」
「……確かに」
「そういう問題じゃないと思いますけど……」
リアが苦笑する。
「リア様が欲しいものは、せめて一つにしてください」
「じゃあ、一つならいい?」
「え?」
カインが嬉しそうにリアを見る。
「何か一つ、選んでよ」
「うーん……」
そのとき、リアの視線が隣の展示台に止まった。
「……あれ、なんだろう?」
小さな箱型の魔道具が置かれている。
「これは、食べ物を甘いお菓子に変えられる魔道具だよ」
「えっ……!……欲しい」
リアの目が輝いた。
「決まりだね」
カインが満足そうに笑った。
(……まあ、一個くらいならいいよね)
「カイン王子、ありがとうございます」
魔道具を受け取ったリアは、ノアたちのもとへ戻った。
「リア殿、何か買ったのですか?」
「はい! カイン王子に買ってもらいました!」
「……へぇ、そうですか」
ノアはにこりと笑った。
――けれど、なぜか目だけが笑っていない。
「……カインか」
ルシアスも、わずかに眉を寄せる。
「これ! 食べ物を甘いお菓子にできるんですよ!」
そんな二人の様子には気づかず、リアは嬉しそうに魔道具を見せた。
「今度、一緒に使ってみようか」
後ろからカインが声をかける。
「いいですね!」
リアは嬉しそうに頷いた。
「…………」
「…………」
ノアとルシアスの視線が、同時にカインへ向かう。
「……?」
リアは不思議そうに首を傾げた。
その様子を見ていたナタリーは、小さくため息をつく。
(リア様、本当に魔性なんだから……!)
そんなナタリーの心の叫びも知らず、リアは新しい魔道具を抱え、嬉しそうに笑っていた。
こうして、魔道具の展示会は終わりを迎えた。
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