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帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


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第27話 晩餐会、美味しい物いっぱい食べます!

「では、参りましょうか」


 ナタリーに促され、四人は晩餐会の会場へと足を踏み入れた。


 煌びやかなシャンデリア。

 色とりどりのドレスに身を包んだ貴族たち。


 リアは物珍しそうに辺りを見回す。


(わぁ……!すごい!)


 すると――


「リア!」


 聞き覚えのある声が響いた。


 振り返ると、そこにはカインがいた。


「……!」


 カインは一瞬、言葉を失う。


 ラベンダーのドレス。

 ゆるくまとめられた髪。

 そして、髪に飾られた美しい髪飾り。


(あぁ……)


 さっき会ったばかりなのに。


(……めちゃくちゃ好きだ)


カインの顔が一気に明るくなる。


「リア、すごく綺麗だね!」


「ありがとうございます。カイン王子も素敵ですよ!」


「……!」


 カインの動きが止まった。


 (まずい。嬉しすぎる……!)


 カインの頬が、じわりと赤くなる。


「……そ、そう?ありがとう」


「はい!とても似合っています」


 (どうしよう、可愛すぎて心臓が……!)


「ふふっ、最初はびっくりしましたけど、カイン王子って面白いですね」


「……面白い?」


 カインは一瞬、きょとんとした。


(面白い……?褒められてる……よね?)


 楽しそうに笑うリアを見て、カインもつられるように笑う。


(……まあ、リアが楽しそうならいいか)


「そう?じゃあ、もっと面白いところ見せようかな」

 

「はい!楽しみにしてますね」


「……ところで、リアには婚約者とかいるの?」


「婚約者ですか?」


「うん」


「いませんよ」


「……!」


 カインの目が輝く。


(よし!)


「そっか。じゃあ――」


「でも、そもそも私、まだ結婚とか興味ないです」


「…………」


カインの言葉が止まった。


「……え?」


「まだまだやりたいこともありますし、もっと青春を謳歌したいので!」


リアは、にこっと笑う。


「友達と遊んだり、美味しいものを食べたり、いろんなところにも行ってみたいですし」


「…………」


カインは一瞬、言葉を失った。


(青春……?)


けれど――


「じゃあ、僕と一緒に色んなところに行けばいいよ!」


「え?」


「美味しいものも一緒に食べよう!王都には珍しい料理もたくさんあるんだ」

 

「……!」


 リアの目が輝いた。


「本当ですか!?」


「もちろん!」


(よし。まずはここからだ!)


 カインは再び勢いを取り戻した。


「じゃあ、今度――」


「美味しいもの、いっぱい食べたいです!」


「……うん。いっぱい食べよう」


(……なんか思ってたのと違うけど)


 その後ろで、二人はそれぞれ思う。


(……はぁ、面倒なのが増えたな)


 ノアは呆れながら、小さくため息を吐いた。


(……)


 ルシアスは無言のまま、楽しそうに話すリアとカインを見つめる。


(……なぜ、こんなに気に入らないんだ)


 カインがリアの隣で嬉しそうにしていることが、妙に気に障った。


 そのとき、リアがくるりと振り返る。


「みんなで美味しいもの食べましょうね!」


「……!」


 カインの笑顔が一瞬固まる。


(……え?)


(二人じゃないの?)


 けれど、リアはそんなことなど気にせず、嬉しそうに笑っている。


「楽しみですね!」


「……うん」


 カインは笑顔を保ちながら、心の中で小さく肩を落とした。


(……まあ、いいか。まずは一緒にいられるし)


(……こいつ、今絶対二人きりだと思ってたな)


 ノアは、軽くカインを睨む。


(……)


 その隣で、ルシアスはほんのわずかに表情を緩めた。


(……)


 なぜだか、先ほどまで胸の奥にあった苛立ちが、少しだけ薄れている。ルシアス自身、それがなぜなのかは分からなかった。


 その後も晩餐会は、穏やかな雰囲気のまま続いていった。


 次々と運ばれてくる料理に、リアは目を輝かせる。


「わぁ……!これも美味しそうです!」


「気に入ったものがあれば、遠慮なく食べて」


 カインが笑いながら勧める。


「はい!」


 リアは嬉しそうに頷き、料理を口に運んだ。


「んーっ! 美味しいです!」

 

 その様子を見て、ノアは思わず小さく笑う。


(……さっきまでの空気が嘘みたいだな)


 隣では、ルシアスも静かにリアを見ていた。楽しそうに料理を味わうリアを見ていると、不思議とこちらまで穏やかな気持ちになった。


「ルシアスさんも、これ食べてみてください!」


 突然、リアが皿を差し出す。


「すごく美味しいですよ!」


「……そうか」


 ルシアスは一瞬だけ目を瞬かせると、差し出された料理を受け取った。


「……悪くないな」


「ですよね!」


 リアは嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見つめながら、ルシアスの表情もわずかに和らぐ。


(……楽しそうだな)


 なぜだろう。


 リアが楽しそうにしていると、それだけで胸の奥が穏やかになる。


 その理由を、ルシアスはまだ知らない。


 そんな穏やかな時間の中、夜はゆっくりと更けていった。

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