↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/66

第22話 右?あれ、左?

 ――翌日。リアはダンスの最終確認を迎えていた。


 リアは基本的なステップを一通り覚え、いよいよ最終確認の日を迎えた。


「それでは殿下、よろしくお願いいたします」


 ノアが一歩下がる。


 ルシアスはリアの前に立つと、静かに右手を差し出した。


「……始めるぞ」


「は、はい!」


 リアは少し緊張しながら、その手を取った。


 ルシアスの手が、リアの手をしっかりと包む。


「……」


 その瞬間、リアの胸が小さく高鳴った。


(……やっぱり、王子様と踊るってすごいな)


 昨日までノアと何度も練習していたはずなのに、相手がルシアスになると妙に緊張する。


「緊張しているのか?」


「え?」


 ルシアスがリアを見つめる。


「少しだけ……」


「そうか」


 ルシアスは、ほんの少し口元を緩めた。


「なら、俺を見ろ」


「……え?」


「足元ばかり見ていては、相手と合わせられない」


「は、はい……」


 リアは顔を上げる。


 すぐ目の前に、ルシアスの顔があった。


(……近っ!)


 思わず瞬きをする。


 けれど、いつまでも目を逸らしているわけにもいかない。


 リアは意を決して、ルシアスの目を見つめ返した。


「……こうですか?」


「……ああ」


 ルシアスが頷く。


「でも……」


 リアは少しだけ首を傾げた。


「ルシアスさんも、私のことちゃんと見てくださいね?」


「……」


 ルシアスの動きが、ほんの一瞬止まった。


「……何?」


「だって、相手を見ないと合わせられないんですよね?」


 リアは何の疑いもなく、にっこりと笑う。


「だから、お互いにちゃんと見ないと」


「……そうだな」


 ルシアスは一瞬だけ視線を逸らした。


(……なぜ、今ので動揺した?)


 そんなルシアスの変化に、リアは気づかない。


「じゃあ、続きお願いします!」


「ああ」


 ルシアスは平静を装いながら、再びリアへ向き直った。


「一歩」


「はい」


「次は右だ」


「右……こっち?」


 リアが自信満々に踏み出す。


「それは左だ」


「……あれ?」


 リアが自分の足元を見る。


「……右って、こっちでしたっけ?」


「そうです」


 後ろからノアが思わず吹き出した。


「リア殿、昨日あれだけ練習したのに……」


「だって、右と左って似てません?」


「似てませんよ」


「えぇ……」


 リアは納得できないように自分の両手を見る。


「じゃあ、こっちが右……?」


「それは右です」


「よし!」


「なぜそんなに自信満々なんですか」


 ノアが笑う。


 ルシアスも、わずかに口元を緩めた。


「……リア」


「はい?」


「まず、右と左を覚えるところから始めた方がよさそうだな」


「えっ」


 リアは頬をぷくっと膨らませた。


「そこは大丈夫です!」


「……」


 ノアは一瞬、言葉を失った。


「大丈夫、なんですね?」


「はい!」


 リアはぷくっとした頬のまま、こくんと頷く。


「ちゃんと分かってます!」


「……では、もう一度」


「はい!」


 ノアは笑いを堪えながら、再び二人の動きを確認する。


 リアと向き合っていたルシアスは、頬を膨らませたまま真剣に構える彼女を見て、わずかに目を細めた。


「……本当に分かっているのか?」


「分かってます!」


「そうか」


 そう答えたルシアスの口元が、ほんの少しだけ緩む。


「じゃあ、続けよう」


「はい!」

 

 リアは何も気にせず、再びステップを踏み始めた。


 一曲踊り終えると、ルシアスはそっと手を離した。


「……十分だ」


「本当ですか!」


 リアの顔がぱっと明るくなる。


 ノアも嬉しそうに微笑む。


「これなら舞踏会でも安心ですね」


「ありがとうございます!」


 リアは二人へ笑顔を向ける。


 その笑顔を見たルシアスは、ほんのわずかに口元を緩めた。


「……よく頑張った」


 その一言に、リアは少し照れくさそうにはにかんだ。


 (舞踏会、楽しみだな……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。