第20話 髪飾りをもらいました。
しばらく市場を回った三人は、日が暮れる前に王宮へ戻り、それぞれの部屋へと別れた。
「リア様、お帰りなさいませ!王都は楽しめましたか?」
「はい!とっても楽しかったです」
リアが嬉しそうにナタリーへ今日の出来事を話していると――。
コンコン──
部屋の扉がノックされる。
ナタリーが扉を開けると、そこにはルシアスが立っていた。
(えっ!? 殿下!?)
ナタリーが驚いていると、ルシアスはリアに箱を差し出した。
「……これを」
「えっ……?」
リアは箱を開けると、昼間見ていた髪飾りが入っていた。
「あっ、これ……!」
「気に入っていただろう。……誕生日祝いだ」
「ありがとうございます……!」
リアは、目を輝かせながらルシアスにお礼を言う。
それを見ていたナタリーは心の中で大興奮していた。
(きゃーーーっ!!)
(殿下からプレゼント!?)
(リア様に直接お渡しになるなんて……!!)
(これは大事件ですわ!!)
「とてもお似合いになると思います」
心の声とは裏腹に、ナタリーは涼しい顔でそう告げた。
「それだけだ。今日はゆっくり休め」
ぶっきらぼうに言い残し、ルシアスは踵を返す。
「はい!ありがとうございます。大切にします!ルシアスさんもゆっくり休んでください」
ルシアスは小さく頷くと、そのまま部屋を後にした。
するとナタリーはリアの両手を握って、
「リア様!!殿下が女性に贈り物をされるなんて初めてです!!」
興奮しながらリアに告げた。
「えっ!?そうなんですか!?」
リアは思わず手元の髪飾りへ視線を落とした。
その胸は、じんわりと温かな気持ちで満たされていた。
その夜。
リアは部屋の窓辺に座り、昼間の出来事を思い返していた。
初めて訪れた王都。
たくさんの人々が行き交う市場。
色鮮やかに並ぶ商品。
焼きたてのパンや、甘い果物の味。
どれもリアにとって新鮮で、楽しい思い出になっていた。
そして、そっと机の上へ視線を向ける。
そこには、ルシアスから贈られた髪飾りが置かれていた。
薔薇を模した小さな魔石が、月明かりを受けて淡く輝いている。
(……嬉しかったな)
胸の奥が、じんわりと温かくなる。
この世界へ来たばかりの頃は、不安でいっぱいだった。
自分が何者なのか。
なぜこの場所へ来たのか。
まだ分からないことはたくさんある。
それでも――。
「……大丈夫」
リアは小さく呟いた。
一緒に手がかりを探してくれる人がいる。
支えてくれる人がいる。
だから、きっと前へ進める。
リアは髪飾りを大切にしまうと、ベッドへ潜り込んだ。




