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帰りたいのに、帰してくれません。  作者: 希。


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第19話 王都へお出かけです。後編!

 食事を終えた三人は、資料館へ向かった。


 アスタリア王国の展示を探したものの、残されていた展示品はごくわずかだった。


 近くにいた学芸員へ声をかけ、話を聞いてみることにした。


「……申し訳ありません。アストリア王国は滅亡から十一年が経っています。当時の資料や展示品の多くは、戦火によって失われてしまいました」


 リアは肩を落とす。


「……そう、ですか」


 学芸員は少し考え込むように顎へ手を添えた。


「ですが、一つだけお伝えできることがあります」


 三人は顔を上げる。


「アヴェリオス王国をご存じでしょうか」


「ええ。以前、王宮の書庫でも名前が挙がっていました。アストリア王国と親交の深かった国だと」


ノアが答える。


学芸員は静かに頷いた。


「はい。その通りです。アヴェリオス王国はアストリア王国と最も深い友好関係を築いていた国です。当時は魔法技術の共同研究も行われていたと伝えられています」

 

「共同研究……」


 リアは小さく呟く。


「そのため、召喚魔法やアストリア王国に関する資料が残っているとすれば、アヴェリオス王国が最も可能性が高いでしょう」


 ルシアスは腕を組み、静かに頷いた。


「……やはり、アヴェリオス王国へ向かうしかないようだな」


「ええ。行く価値は十分にありそうですね」


 ノアも同意するように頷いた。


 こうして、次はアヴェリオス王国へ向かうという方向で話がまとまり、三人は資料館を後にした。


「せっかく王都まで来たんだ。少し街を見て回るか」


「いいんですか!楽しみです!」


 リアは嬉しそうに目を輝かせた。


「いいですね!そうしましょう。リア殿、行きたいお店はありますか?」


 ノアがリアに問いかける。

 

 ノアはリアに問いかける。


「んー、そうですね……」


 リアは少し考え、笑顔を浮かべる。


「市場を見てみたいです!」


「市場ですか?」


「はい!王都にはいろいろなお店があるって聞いたので」


 ノアは微笑んだ。


「では、市場へ行きましょう。ちょうどこの時間は賑わっていますよ」


 市場に着くと、雑貨屋や髪飾り屋、パン屋に果物屋まで、たくさんの店が軒を連ねていた。


 あちこちから客を呼び込む店主たちの声が飛び交い、大勢の人で賑わっている。


「わぁ……!」


 リアは思わず足を止め、目の前に広がる市場を見渡した。

 

 市場を進んでいくと、アクセサリーや髪飾りを扱う店が目に入った。


 リアは足を止め、二人を振り返る。


「あそこのお店、見てきてもいいですか?」


「もちろんですよ」


 ノアが微笑みながら頷く。


「……可愛い」


 リアは店先に並ぶ髪飾りを眺め、その中の一つをそっと手に取った。


 それは、色とりどりの薔薇をモチーフにした髪飾りだった。


 花びらには小さな魔石があしらわれ、光を受けるたびにきらきらと輝いている。


 思わず見惚れてしまうほど、繊細で可愛らしい髪飾りだった。


「綺麗……」


 リアは小さく呟く。


 (……でも、ちょっと高いなぁ)


 リアは名残惜しそうに髪飾りを元の場所へ戻した。


 そんなリアの様子を、ルシアスは静かに見つめていた。


 その後は、魔道具店を覗いてみたり、果物屋で甘い桃を食べたりして過ごした。


 いつの間にか市場はさらに賑わいを増し、人通りも激しくなってくる。


 リアは露店に気を取られ、人の波に押されそうになった。


「危ない」


 ノアは咄嗟にリアの肩を引き寄せた。


「きゃっ……」


 気づけば、リアはノアのすぐ隣にいた。


「大丈夫ですか?」


「は、はい……ありがとうございます」


 ノアは周囲を見回す。


 人の波は、先ほどよりもさらに増えていた。


「このままだと、逸れてしまいそうですね」


 そう言って、ノアはリアの手を取った。


「市場を抜けるまで、少しだけ失礼します」


「……はい」


 小さな手が、自分の手の中に収まる。


「……」


 ノアの指が、ほんの一瞬だけ止まった。


(……思ったより、小さいな)


 いつもなら、ただ手を引いて歩くだけのこと。


 それなのに。


 触れた手から伝わる温もりが、妙に気になった。


 ノアは、無意識に握っていた手の力を少しだけ緩めた。

 

(……何を意識しているんだ、俺は)


「ノアさん?」


「……はい?」


 リアが不思議そうに振り返る。


「どうかしました?」


「いえ。何でもありませんよ」


 ノアは笑って答えた。


 けれど――


 その手を離すタイミングだけは、なぜか少しだけ迷った。


「……」


 そしてリアもまた、繋がれた手をそっと見つめていた。


(男の人と手を繋ぐなんて、いつぶりだろう……)


 なんだか妙に落ち着かなくて、リアはそっと視線を前へ戻した。


「……」


 少し前を歩いていたルシアスは、その様子を横目で見つめていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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