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第10話 花が再生しました。

 やがて、目的の場所へとたどり着いた。


 そこには、色とりどりの花が咲き誇っていた。


 赤、白、黄色。


 中でも、さまざまな色の薔薇が美しく咲いている。


「わぁ……」


 リアは思わず足を止めた。


「綺麗……」


 庭園を見渡していると、ふと、一輪の薔薇に目が留まった。


「あっ」


 他の薔薇と比べて、少し元気がない。


 葉はしおれ、花びらも今にも落ちてしまいそうだった。


 リアはその薔薇のそばへ近づく。


「この薔薇だけ、元気がない……」


「……」


 ルシアスは、リアの視線の先にある薔薇を見た。


「それはもう、枯れかけている」


 リアは、しおれた薔薇を見つめた。


「かわいそう……」


 リアは、しおれた薔薇を見つめた。


 そして、そっと花びらに触れる。


 その瞬間――


 パァァ……


「……え?」


 リアの指先から、淡い光がこぼれ落ちた。


 柔らかな光はゆっくりと広がり、しおれかけた薔薇を包み込んでいく。


 うなだれていた花が、まるで目を覚ますかのように顔を上げる。

 

 萎れていた葉はみるみるうちに瑞々しさを取り戻し、鮮やかな緑へと変わっていった。


「なに、これ……」


 リアは目を見開いたまま、動くことができない。


 さらに光が強くなる。


 落ちかけていた花びらが一枚、また一枚と元の位置へ戻っていく。


 色褪せていた花びらにも、少しずつ鮮やかな色が戻ってきた。


 そして――


 最後の花びらが重なった瞬間、光がふわりと弾ける。


 そこには先ほどまで枯れかけていたとは思えないほど、美しい薔薇が咲き誇っていた。


「……嘘」


 リアは薔薇を見つめたまま、呆然と呟いた。


 薔薇を見る。


 自分の手を見る。


 もう一度、薔薇を見る。


(……え?)


(……何これ?)


(私、何したの?)


 頭の中に、疑問符だけが次々と浮かぶ。

 

 ルシアスの表情から、先ほどまでの穏やかさが消えていた。


「お前は……今、何をした?」


 ルシアスの低い声が、静かな庭園に響いた。


「えっと……」


 リアは自分の手と、目の前で美しく咲く薔薇を交互に見た。


 自分でも、何が起きたのか分からない。


「特に……何もしてないです」


「……」


 ルシアスは黙ったまま、リアを見つめていた。


 その表情からは、何を考えているのか分からない。


 やがて、ルシアスは薔薇へ視線を移した。


 枯れかけていたはずの薔薇。


 それが今は、まるで何事もなかったかのように咲いている。


「お前の魔力について調べる」


「魔力……?」


「自分が何をしたのか分からないのだろう」


「はい……」


「なら、調べる必要がある」


 ルシアスはそう言うと、踵を返した。


「王宮の案内はまた今度だ。先に魔法研究室へ向かう」


「きっと、リア殿の魔法についても何か分かるかもしれません」


 ノアが穏やかに言う。


「本当に?」


 リアの目が輝いた。


「私も、自分が何をしたのか知りたいです!」


「では、急ぎましょう」


 ノアは笑みを浮かべた。


 こうしてリアは、魔法研究室へ向かうことになった。

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