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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
第三章:ファンタジー
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3-18:世界の探索者たち

会場に指定されたのは、都内の国際会議場だった。


案内された部屋には、既に、見慣れない顔ぶれが揃っていた。


「......思ったより、本格的だな」


通訳の職員に案内されながら、思わず呟く。


通常の探索者向け施設とは違い、各国の国旗が並んだ、いかにも「国際会議」といった雰囲気の部屋だった。


「神崎さん、こちらへどうぞ」


案内されるまま、席に着く。


正面には、三人の外国人探索者と、その付添の通訳、そして懐かしい顔――自衛隊の相馬が座っていた。


「相馬さん!」


「久しいな、神崎」


相馬が、片手を挙げる。


「今回、この調査団全体の安全管理責任者を任された。よろしく頼む」


「心強いです」


あの鬼との一戦を共に乗り越えた相手が、また同じ場にいる。


それだけで、少し緊張が和らいだ。


「では、順番に自己紹介を」


通訳の合図で、まず、体格のいい中年の男性が立ち上がった。


「ジェイク・モリソンだ。元海兵隊、今は探索者をやってる」


握手を交わす。


握力が、尋常じゃなかった。


「......もしかして」


「ああ」


モリソンが、少しばつが悪そうに笑う。


「向こうじゃ、"ライフル狂"って呼ばれてる。お前さんの二つ名を、勝手に真似させてもらった形になるな」


「光栄です」


「光栄がることか?」


「めちゃくちゃ光栄です」


自分の存在が、こんなところにまで影響しているとは、なんだか妙な感覚だった。


次に、若い女性が立ち上がる。


「エミリー・ハートです。考古学を専攻していて、構造物の様式解析を担当しています」


「あなたの配信、いつも参考にしています。素材の断面から、歴史的背景を読み解く視点、とても興味深いです」


「......ありがとうございます」


思わぬ角度から褒められて、少し照れる。


最後に、快活そうな青年が、勢いよく立ち上がった。


「パク・ソジュンです! よろしくお願いします!」


「配信、いつも見てます! 鬼との戦い、何回も見返しました!」


「あ、ありがとうございます」


「僕は元々、ゲームの大会に出てたんですけど、今は探索者やってます。機動力には、自信あります!」


三者三様の個性が、一気に部屋に溢れた。


「賑やかだろう」


相馬が、苦笑しながら言う。


「だが、それぞれ、実力は本物だ。事前に提出された資料も見たが、モリソンは自国で八層、ハートは六層、ソジュンは七層まで、それぞれ単独到達の実績がある」


「日本より、浅いんですね」


「ああ。今のところ、十層を超えて活動している探索者は、世界でもごく僅かだ。お前は、その最前線にいる」


「頼もしいですね」


「お前もな」


相馬が、真剣な顔で続ける。


「あの一件以来、各国の担当者から、お前についての問い合わせが、何度も来ている。今回の編成でも、お前を中心に据えることに、誰も異論を挟まなかった」


その言葉に、少し身が引き締まる。


「よろしくお願いします、皆さん」


改めて、頭を下げた。


「では、これより、探索計画について説明します」


職員が、資料を配る。


対象区域は、これまで未探索だった、十一層から十三層にかけての一帯。


様々な種類の生物が確認されている、多様性の高い区域だという。


「多様性が高い、というのは」


「複数の環境が混在している区域です。水辺、洞窟、開けた広間。それぞれで、生息する個体の種類が、大きく異なります」


資料をめくりながら、思わず、腰の継刃に目をやる。


様々な種類の敵。


この機会で、あの奇妙な感覚の正体が、少しでも見えてくるかもしれない。


「神崎さん」


ハートが、興味深そうにこちらを見ている。


「その刀、ずっと気になっていました。もしよければ、後で見せてもらえますか」


「あ、はい。もちろん」


「僕も見たいです!」


ソジュンも、身を乗り出す。


「モリソンさんは?」


「俺は、実際に振るってるところを見たいな」


モリソンが、にやりと笑った。


「配信で見た動き、本物だとどんな感じなのか、興味がある」


「機会があれば、ぜひ」


賑やかなやり取りに、思わず笑ってしまう。


言葉も文化も違うのに、こうして刀の話で盛り上がれるのは、なんだか嬉しかった。


「では、本日は顔合わせと、最終的な装備確認までとします」


職員が、話をまとめる。


「実際の合同探索は、明日からの予定です」


「よろしくお願いします」


全員が、頭を下げ合う。


会議が終わり、控室に戻る道すがら、相馬が、隣に並んだ。


「どうだ、初めての国際チームは」


「......楽しみです、素直に」


「そうか」


相馬が、小さく笑う。


「あの三人、それぞれ癖はあるが、悪い奴らじゃない。うまくやれるだろう」


「はい」


窓の外、夕暮れの空を見上げる。


明日から、この国のダンジョンの、まだ見ぬ区域へ。


様々な国から集まった仲間たちと共に、足を踏み入れることになる。


腰の継刃に、そっと手を添えた。


「......明日、色々分かるといいな」


小さく呟いた声は、誰にも届かないまま、夕暮れの空に溶けていった。


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