3-2:合衆国、開く
ワシントンD.C.、封鎖区域の一つ。
大統領・マーカス・ウェインは、特設された壇上に立っていた。
目の前には、資格を取得した数百人の探索者たちが列を成している。
空には、複数の中継ヘリが旋回していた。
「今日という日を、我々は長く待った」
ウェインの声が、拡声器を通して響く。
「半年前、日本が示した道を、我々は疑いと敬意の両方を持って見つめてきた。そして今、我々自身の足で、同じ場所に立つ」
拍手が起こる。
この日のために、様々な議論と調整を重ねてきた。
州兵との連携。
民間軍事会社の関与を巡る法整備。
銃器主体だった治安機構に、近接武器という新しい選択肢を組み込む作業。
簡単な道のりではなかった。
「本日をもって、合衆国全州において、探索者資格保持者の一般立ち入りを、正式に解禁する」
歓声が上がる。
中には、既にカメラを構えている者たちも多数いた。
「大統領」
式典の後、補佐官が耳打ちする。
「配信申請、既に三千件を超えています」
「多いな」
「ハリウッド関係者、ゲーム実況者、退役軍人系のチャンネルまで、様々です。特に、退役軍人による『実戦経験を活かした攻略解説』系のチャンネルが、初日から急上昇しています」
ウェインは、小さく笑った。
「この国らしいな」
「日本の刀オタク氏のような、突出したスター性を持つ配信者は、まだ現れていません。ですが」
「ですが?」
「早くも、あの探索者を意識した名乗りが、いくつか見られます。『ライフル狂』とか、『弾丸オタク』とか」
「......真似から入るのも、この国らしい」
ウェインは苦笑した。
だが、それも悪くない、と思う。
誰かの背中を追いかけることから、独自のものが生まれることもある。
「魔素の研究状況は」
「複数の探索者に、知覚の変化が報告され始めています。ただし、まだ、明確な"魔法"の発現例はありません」
「日本の、あの索敵役の女性のような例は」
「今のところ、確認されていません」
ウェインは、資料を閉じ、夕暮れの空を見上げた。
この国は、これから、独自の探索者文化を築いていくことになる。
派手で、賑やかで、時に無秩序で。
だが、それもまた、この国らしいやり方だった。
「引き続き、安全管理を最優先に。だが」
「はい」
「彼らの挑戦を、後押ししてやってくれ。今日という日を、待ちわびていた者たちだ」
「かしこまりました」
封鎖線の向こう、あの門へ向かって、次々と探索者たちが歩き出していく。
その足取りには、緊張と、それ以上の高揚があった。
合衆国にとっての、新しい時代の幕開けだった。




