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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
間章(2ー3)
63/88

間章-13:静観の終わり

オタワ、議事堂。


首相・ジャック・ルモンドは、新しい報告書を前に、これまでとは違う緊張を感じていた。


「北部の観測地点、複数箇所で、出現率上昇の兆候が確認されました」


防衛担当大臣が、地図を指し示す。


「日本の事例と、似たパターンです」


「......うちにも、来るということか」


「可能性は、否定できません」


ルモンドは、これまで机に置いたままだった、日本の制度資料を、改めて手に取った。


半年近く、静観を続けてきた。


国土の広さ、気候、先住民族の方々との協議。


どれも、拙速を避けるべき、正当な理由だった。


「先住民族の方々との協議は」


「継続しています。丁寧な対応を、崩すつもりはありません」


「それでいい」


ルモンドは、頷いた。


「だが、並行して、資格制度の試験導入を、前倒しで進める」


「よろしいのですか。これまでの慎重な方針から――」


「方針は変わらない。速度が、変わるだけだ」


ルモンドは、はっきりと言った。


「もし、あの鬼のような個体が、我が国でも現れるなら。それに対応できる人材を、今から育てておかねば、間に合わない」


「魔素の件についても」


「うちの研究機関にも、分析を急がせている。もし、国民の中に、特殊な適性を持つ者が現れた場合の、受け入れ体制も並行して整えろ」


「かしこまりました」


ルモンドは、窓の外、まだ雪の残る景色を見た。


この国は、これまでずっと、自分たちの速度で進んできた。


その姿勢を、変えるつもりはない。


だが。


「注視から、対応へ。我々の言葉を、今日から改めよう」


「承知しました」


「創作関係者の招集についても、本格的に進める。悪くない発想だと、以前から思っていた」


ルモンドは、小さく笑った。


「焦る必要はない、と言い続けてきたが」


「はい」


「そろそろ、腰を上げる時のようだ」


静観の時代は、静かに、しかし確実に終わろうとしていた。


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