表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
間章(1ー2)
38/83

間章-6:独自の道

パリ、エリゼ宮。


大統領・**フィリップ・ロシュフォール**は、報告書を読みながら、ワイングラスには手をつけずにいた。


珍しいことだった。


「日本の制度、率直な感想は」


「見事、の一言です」


文化担当大臣が答える。


「特に、創作という文化を、国家の危機管理に正面から組み込んだ発想力には、脱帽するほかありません」


「わしも同感だ」


ロシュフォールは頷く。


「だが」


「だが?」


「同じことを、そのまま真似るのは、我が国の流儀ではない」


ロシュフォールは、机の上に、別の資料を広げた。


ジュール・ヴェルヌ。


中世の騎士道物語。


フランスにも、未知への想像力を積み重ねてきた、長い文学の歴史がある。


「日本は、現代のライトノベルやゲームといった文化から知見を集めた。それは、あの国の強みだ」


「我が国は、違う形で?」


「我々には、我々の物語の蓄積がある。SF文学、哲学、そして芸術。想像力の形は、一つではない」


ロシュフォールは、少し得意げに言った。


「猿真似ではなく、フランスならではの視座で、この危機に向き合う」


「具体的には」


「文学者、哲学者、そして映画製作者を招集する。日本とは違う切り口で、危険と可能性を再検討させる」


プライドと、確かな文化的自負。


それが、この国の意思決定の根底にあった。


「制度設計そのものは、ある程度、日本を参考にせざるを得ないでしょうが」


「それは構わん。優れたものを取り入れることに、恥じることはない」


ロシュフォールは、ようやくワインに口をつけた。


「ただし、我が国の色を、必ず出す」


「承知しました」


「あと、労働組合との協議も忘れるな」


「......探索者の労働条件について、ですか」


「当然だろう。危険な仕事だ。適正な保障がなければ、誰も進んで潜ろうとはせん」


いかにも、この国らしい視点だった。


安全性の議論だけでなく、労働者としての権利をどう保証するか。


そこにまで、真剣な議論が及んでいる。


「発表の時期は」


「急がん」


ロシュフォールは、はっきりと言った。


「良いものを作るには、時間がかかる。それは、恥ではない」


窓の外、セーヌ川の夜景が広がっている。


「我々は我々のやり方で、この新しい時代に向き合う」


その言葉には、静かな誇りが滲んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ