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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
間章(1ー2)
36/110

間章-4:静観の理由

オタワ、議事堂。


首相・**ジャック・ルモンド**は、地図を見つめていた。


カナダ国内で確認されている、空間の歪みの位置。


その多くが、人里離れた森林地帯や、先住民族の伝統的な土地に重なっている。


「日本のようにはいかない、ということですね」


先住民問題担当大臣が言う。


「そうだな」


ルモンドは頷いた。


「日本の門は、都市近郊にあった。だから、迅速な調査も、制度整備もしやすかった」


「我が国の場合は」


「アクセスからして違う。ヘリでしか近づけない場所もある」


資料をめくる。


「加えて、先住民族の方々との協議も、丁寧に進める必要がある。これは、拙速に扱っていい問題ではない」


「その通りです」


「気候の問題もある」


ルモンドは続ける。


「冬季は、調査自体が困難になる地域が多い。日本のような四季の穏やかさとは、条件が違いすぎる」


国土の広さと厳しい自然環境。


それは、この国の強みであると同時に、今回のような場面では足枷にもなる。


「では、我が国は、当面静観という方針で」


「静観、ではない」


ルモンドは、はっきりと訂正した。


「注視だ。日本、アメリカ、韓国。積極的に動いている国々の制度と、その結果を、丁寧に見ていく」


「学ぶ、ということですね」


「そうだ。慌てて真似て、我が国の地理的事情に合わない制度を作れば、それこそ危険を招く」


ルモンドは、椅子に深く腰掛けた。


「幸い、我が国には時間がある。焦る必要はない」


「創作関係者の招集については、いかがされますか」


「悪くない発想だとは思う」


ルモンドは、少しだけ笑った。


「我が国にも、優れた作家やゲーム開発者は多い。いずれ声をかけることになるだろう。だが、今はまだ、地に足のついた調査を優先すべき段階だ」


カナダらしい、慎重で、実直な判断だった。


「他国からの視察要請には」


「歓迎する。学び合うことは、悪いことではない」


ルモンドは、窓の外、雪の残る景色を見た。


「我々のやり方で、我々の速度で進む。それでいい」


誰かに追いつくためではなく、自分たちの国土と国民に合った形で。


その姿勢は、地味ではあったが、着実だった。


「では、引き続き調査班の報告待ちということで」


「頼む」


ルモンドは、資料を閉じた。


急ぐ理由はない。


少なくとも、今はまだ。


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