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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
間章(1ー2)
35/94

間章-3:隣国の背中を追って

ソウル、大統領府。


大統領・**尹 秀賢ユン・スヒョン**は、報告書を読みながら、何度も頷いていた。


「日本の探索者制度、想像以上に完成度が高いですね」


科学技術担当の秘書官が言う。


「だろうな」


尹は、資料の写真――五段階のバッジデザインまで見て、思わず苦笑した。


「あの国は、こういう時の本気の出し方が違う」


「羨ましい、という声も国内で上がっています」


「羨ましいだけでは終わらせん」


尹は、資料を机に置いた。


「我が国の強みは何だ」


「......コンテンツ産業、でしょうか」


「そうだ」


尹は身を乗り出す。


「ウェブトゥーン。オンラインゲーム。この国は、世界のどこよりも早く、その辺の想像力を産業として育ててきた」


「日本の招集した専門家たちとは、少し畑が違いますが」


「畑が違うからこそ、いい」


尹は、資料に付箋を貼っていく。


「ウェブトゥーン作家、MMORPGの運営経験者、e スポーツの大会設計者。彼らを、正式に招集する」


「実現すれば、日本とは違う切り口の制度になりますね」


「隣に、あれだけの前例がある。ゼロから考える必要すらない」


尹の声には、焦りと同時に、確かな勝算があった。


「日本の制度を分析しろ。真似るところは真似て、我が国らしくアレンジできるところはアレンジする」


「かしこまりました」


「それと、もう一つ」


「はい」


「発表は、なるべく早く行う。国民の期待も、限界に近い」


実際、ここ数週間、国内の世論は沸騰していた。


日本の若者たちが探索者として活躍する映像がSNSで拡散されるたび、「なぜウチはまだなのか」という声が強まっている。


「大統領、拙速な発表はリスクも」


「分かっている。だが、隣国が示してくれた道標がある以上、我々が同じだけ慎重である必要はない」


尹は、窓の外、漢江の景色を見る。


「隣に、いい先生がいる。それを活かさない手はない」


その言葉には、対抗心と、ある種の敬意が入り混じっていた。


「制度の詳細案、二週間で用意しろ」


「二週間、ですか」


「日本に負けていられん」


尹は、小さく笑った。


「それに――」


「?」


「あちらの総理、なかなか面白い決断をする人物のようだ。一度、直接話してみたいものだな」


その願いが叶うのは、思ったよりずっと早いことになる。


だが、それはまた別の話だった。


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