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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
間章(1ー2)
33/94

間章-1:アメリカ、動く

ホワイトハウス、状況分析室。


大統領・**マーカス・ウェイン**は、モニターに映る映像を、もう二十回は見ていた。


東京の会見。


九条という日本の総理大臣が、探索者たちの列を見送る映像。


「......で?」


ウェインは、集まった閣僚たちを見回した。


「我々は、いつまで見ているだけなんだ?」


「大統領」


国防長官が口を開く。


「現在、各州の国家警備隊による封鎖を継続中です。民間開放については、まだ議会の合意が――」


「議会はいつだって合意しない」


ウェインは資料を叩いた。


「日本を見ろ。政府がやると決めて、専門家を集めて、制度を作って、もう一般人が潜ってる。何ヶ月かかった?」


「......数ヶ月です」


「うちは何ヶ月同じ場所で足踏みしてる?」


誰も答えなかった。


答えられなかった。


「州兵を並べてるだけの国が、いつまでも先進国面していられると思うな」


ウェインは、テーブルに広げられた資料を見る。


日本の資格制度の翻訳版。


五段階のランク。


安全講習の内容。


素材管理のガイドライン。


どれも、驚くほど整理されている。


「これを、参考にする」


「大統領、独自の制度設計をすべきでは」


「ゼロから作る時間があるか? ないだろ」


ウェインは立ち上がった。


「いいか。プライドは大事だ。だが、今優先すべきは国民の安全と、機会だ」


国民の中には、既に痺れを切らしている層がいる。


封鎖線の外で、探索を許可しろとデモをする者。


民間軍事会社が、勝手に調査を試みて拘束される事件も起きていた。


これ以上、時間をかける余裕はない。


「国防総省、日本の制度を分析し、我が国向けに調整した案を一週間以内に出せ」


「一週間ですか」


「一週間だ」


もう一つ、ウェインには考えがあった。


「それと」


「はい」


「作家やゲーム会社にも声をかけろ。日本がやったのと同じことを」


「......創作関係者、ですか」


「馬鹿にするな。うちにはハリウッドがある。SF作家がいる。ゲーム産業だって世界一だ」


ウェインは、少しだけ口の端を上げた。


「我が国の"想像力"を、なめてもらっちゃ困る」


閣僚たちが顔を見合わせる。


半信半疑の空気の中、しかし誰も反対はしなかった。


「大統領」


補佐官が、遠慮がちに手を挙げる。


「近接武器の携行についても、日本は特例を設けたようですが」


「銃社会のこの国で、剣を持ち歩く許可を出せと?」


ウェインは、少し考えてから答えた。


「専門家の意見を聞く。もし本当に必要なら、検討する。ただし――」


「ただし?」


「乱射事件より厄介な問題を増やすつもりはない。慎重にやれ」


現実的な判断だった。


派手さより、実効性。


それが、この国のやり方だ。


「会議を終える」


ウェインは、モニターの中の日本の映像を、もう一度見つめた。


(先を越されたな)


悔しさより、闘志の方が強かった。


「......追いつくぞ、日本」


誰にともなく呟いて、部屋を後にした。


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