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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
第一章:ダンジョンについての有識者会議
12/83

1−12:ただの刀オタク

 翌日。

「……よし。」

 俺はノートを閉じた。

 書き終わったページ数は二十七。

 内容は全部、昨日公開された青い鉱石について。

 もちろん実物は見ていない。

 映像だけ。

 それでも、気になったことはいくつもあった。

「うーん……」

 やっぱり金属には見えない。

 あれは鉱石。

 精錬して初めて素材になるタイプじゃないか。

 ……知らんけど。

 所詮は映像だけだ。

 外れていてもおかしくない。

「まぁ、考えるだけならタダだし。」

 そう言いながら、スマホを手に取る。

 最近はニュースを見るより、Xを見る時間の方が長い。

 みんな色々考察していて面白い。

『あれはミスリル!』

『魔力を含んだ鉱石!』

『未知の元素!』

『触ったらスキル覚醒!』

「最後はないな。」

 たぶん。

 いや、あってほしい気持ちはあるけど。

 そんな都合のいい話はないだろう。

 ……多分。

 流れてくる投稿を眺めながら、ふと指が止まる。

「書いてみるか。」

 どうせ誰も見ない。

 普段から刀の写真とか鍛冶動画の感想しか投稿してないアカウントだ。

 フォロワーも百人ちょっと。

 半分くらい海外の刀好き。

 そんなアカウントである。

 適当に文章を打つ。

公開映像を見た限りだと、あれは「金属」じゃなくて「鉱石」に見える。

精錬前の状態なんじゃないかな。

もしそうなら、研究は加工じゃなくて精錬方法から考えた方がいい気がする。

※もちろん映像だけなので外れてる可能性大です。

「……よし。」

 投稿。

 数秒後。

 いいねが一つ付く。

「早。」

 海外のフォロワーだった。

 いつもの人だ。

 鍛冶についての動画を投稿すると毎回反応してくれる。

 ありがたい。

 大学へ向かう。

 講義を受ける。

 昼休み。

 学食でカレーを食べながらスマホを見る。

「ん?」

 通知が増えていた。

 十五件。

「珍しい。」

 開く。

『なるほど』

『そういう見方もあるのか』

『鍛冶やってる人?』

『刀好きの人だ』

「……。」

 刀好きの人。

 間違ってはいない。

 というか、その通りだ。

「錬司。」

「ん?」

「何見てんの?」

「いや、昨日の鉱石の話。」

「あー。」

 友人もスマホを覗き込む。

「投稿したの?」

「うん。」

「どれ。」

 見せる。

「ふーん……。」

 数秒。

「何書いてあるか分からん。」

「だろうな。」

「でも反応多いじゃん。」

「ちょっとだけ。」

 リポストが二十件くらい。

 普段の何十倍だ。

「プチバズじゃん。」

「そうなの?」

「お前普段どれくらい?」

「いいね三。」

「十分バズってる。」

 そういうものなのか。

 よく分からない。

 スマホを閉じようとして。

「あ。」

 一つの通知が目に入った。

@____

面白い考察です。

私も同じ印象を受けました。

「……。」

 アイコンは、日本刀。

 名前を見る。

「え。」

 思わず声が出た。

「どうした?」

「いや。」

 友人へスマホを向ける。

「この人。」

「誰?」

「知らない?」

「知らん。」

「マジ?」

 鍛冶好きなら知らない人はいない。

 登録者三万人。

 前に見つけた、あの鍛冶師のチャンネル。

 配信も動画も何度も見た。

 我が心の師匠、その本人だった。

「……。」

 嘘だろ。

 本物?

 偽物じゃないよな?

 認証バッジも付いてる。

「いやいや。」

 落ち着け。

 たまたまだ。

 たまたま目に留まっただけ。

 それだけ。

 でも。

 画面を見ながら。

 少しだけ頬が緩む。

「……嬉しいな。」

 尊敬している人に、自分の考えを認めてもらえた。

 それだけで。

 今日はちょっと、いい日だった。


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