1−11:違和感
「……これ、公開するんだ。」
大学から帰宅して、夕飯を食べ終えた頃。
テレビでは、今日一日ずっとダンジョンの話題だった。
どの局も同じ。
ニュース。
特番。
専門家。
ニュース。
専門家。
またニュース。
さすがに飽きる。
……飽きるけど。
「素材は気になる。」
そこだけは別。
リモコンを置いてテレビを見る。
画面には、今日回収されたという青い鉱石が映っていた。
『こちらが、政府が回収した未知の物質です。』
アップで映される。
青い。
綺麗だ。
宝石みたいだ。
「へぇ……」
思わず前のめりになる。
アナウンサーが続ける。
『現在、この物質は既知の金属とは一致せず──』
「金属じゃないな。」
思わず呟いた。
その瞬間だった。
『……え?』
テレビの専門家が固まった。
いや、違う。
俺が勝手にテレビへツッコんだだけだった。
「いや、これ金属じゃなくない?」
もう一回見る。
録画を戻す。
一時停止。
「ほら。」
画面を指差す。
「これ、劈開してる。」
綺麗に割れた断面。
層状の模様。
金属なら、こんな割れ方はしない。
少なくとも。
「鋳造でも鍛造でもないよなぁ。」
天然鉱物。
そう考えた方がしっくり来る。
テレビでは、
『未知の金属ではないか』
という議論が続いている。
「いやぁ……。」
違うと思う。
なんとなくだけど。
違う。
そんな気がする。
「……ネット見るか。」
スマホを開く。
案の定。
SNSは大騒ぎだった。
『ミスリルきた!』
『オリハルコン!』
『金属確定!』
「確定ではないな。」
まだ。
何も確定していない。
でも。
もし鉱石なら。
「精錬しないと。」
そこまで考えて。
止まる。
「……あ。」
精錬。
つまり。
「インゴットにできるのか?」
急にワクワクしてきた。
未知の鉱石。
未知の精錬方法。
未知の金属。
未知の熱処理。
未知の焼き入れ。
「……。」
ダメだ。
楽しすぎる。
まだ手元に一欠片もないのに。
頭の中では、もう刀を打ち始めている。
「まず成分分析。」
「融点。」
「比重。」
「炭素入る?」
「いや、そもそも鉄なのか?」
独り言が止まらない。
ノートを取り出す。
気付けば、大学のレポートを書くより真剣な顔でメモを始めていた。
──未知の鉱石から刀を作るには。
そんなタイトルを書いてから。
「……いや。」
苦笑する。
「まだダンジョン素材って決まってないから。」
早とちりにも程がある。
そう思いながらも、ペンは止まらない。
翌日。
そのノートは、二十ページを超えていた。




