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オタク、刀に狂う  作者: Asansol ackey
間章(3ー4)
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間章-25:職人たちの夢

ローマ、キージ宮。


首相・ロレンツォ・ヴィスコンティは、南部の職人たちからの報告書を、感慨深く眺めていた。


「継刃の一件を受けて、南部の刃物職人たちが、ますます奮起しているようだな」


「はい」


側近が答える。


「『日本の若者にできるなら、我々にもできるはずだ』と、素材研究への参加希望者が、さらに増えています。特に、ソリンジェンならぬ、我が国のマニアーゴの刃物職人たちが、団結して、独自の研究会を立ち上げました」


「マニアーゴか。あそこの職人たちの意地の強さは、昔から有名だ」


ヴィスコンティは、小さく笑った。


「良いことだ。政権基盤は、相変わらず不安定なままだが」


「はい、それは……」


「だが、この分野に関しては、党派を超えて、皆が同じ方向を向いている。これは、大事にすべきことだ」


「継刃の研究について、我が国独自の進展は」


「まだ、模索段階です。ただ、皮革や金属加工の伝統技術を組み合わせた、独自のアプローチを試している職人たちもいます。中には、ヴェネツィアのガラス職人が、あの刀の刃文――炎猴の素材による橙色の輝きを見て、『あれは、うちのガラス細工の発色技術と、どこか似ている』と発言し、話題になっています」


「ガラス職人が、刀の話に食いつくとは」


「熱を操る技術という意味では、共通点があるのかもしれません」


「面白いな」


ヴィスコンティは、頷いた。


「派手な研究機関でなくとも、この国には、代々受け継がれてきた技がある。それを、侮る必要はない」


「魔素の観測状況は」


「南北問わず、報告例が増えています。まだ、発現には至っていませんが、シチリアの探索者の一人が、火山性の歪みの近くで、特に強い違和感を訴えています」


「火山、か。この国らしい場所だな」


「はい。研究班は、地質学的な特性と、魔素濃度の相関関係についても、調査を広げています」


「良い着眼点だ」


ヴィスコンティは、資料を閉じた。


「あの神崎という青年の生き方、南部の職人たちにとって、良い刺激になっているようだな」


「はい。『好きなことを、突き詰めた先に、あそこまでの結果がある』と、若い職人たちが、目を輝かせています。実は、マニアーゴの若手職人の一人が、日本への視察を、正式に申請してきました」


「許可してやってくれ。技術交流は、大いに歓迎すべきだ」


「予算については」


「南部振興予算から、捻出できないか、財務省と調整しろ。これは、単なる技術視察ではない。この国の未来への投資だ」


「かしこまりました」


ヴィスコンティは、窓の外、ローマの街並みを見上げた。


「政権は不安定でも、人々の情熱までは、揺るがない」


「閣下は、よく、そうおっしゃいますね」


「事実だからな」


ヴィスコンティは、小さく笑った。


「この国の歴史を見てみろ。政治がどれだけ混乱しようと、芸術も、料理も、職人技も、途切れることなく続いてきた。今回も、同じだ」


その言葉には、この国なりの、確かな誇りが込められていた。


「それと、もう一つ」


「はい」


「南北の格差是正についても、この機会を活かせないか、検討してくれ。南部の職人たちに、正当な評価と支援を。それが、この国全体の底上げに繋がるはずだ」


「かしこまりました。具体案を、早急にまとめます」


窓の外、夕暮れの光が、ローマの古い建物を、静かに照らしていた。


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