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「事故物件って……」
祥子はオロオロとしているのか首が忙しなく動く。
「聞いたことくらいあるでしょ? その家やアパート、マンションの部屋で殺人や自殺、孤独死が起きてしまった物件ってこと」
祥子は首を止めて視線を山口に注ぐ。
「ここで何があったっていうの?」
「火事で家が全焼したんだって。鎮火すると一人の焼死体が出てきた。その家は家族三人暮らしで、三人の行方は分かっていない。けどその内の一人がこの遺体だろうってみている。単なる不幸な事故なら未だに二人が行方不明なのは説明がつかない。つまりは……」
二人が殺害した上に放火までして行方をくらませたのかーー?
「い、いくら住人が行方不明だからって……それで新しい家が建てたれるの? 万が一戻ってきたら別の家になってしまったなんて笑えないでしょ」
「そこはどうやら事件前に土地を売却する手続きをしていたみたいで……。
あとは購入希望者が現れるのを持っている最中の事件だったみたいなの。この家族、事前に家財道具の大半を清掃業者に処分してもらったりまるで終活しているみたいな動きもあったみたいで、荷物や土地を手放して身軽になるのも殺人計画の一環だったんじゃないかって推測できる」
「そんないわく付きの土地だったなんて聞かされてないよー」
「そこは駐車場になっているみたいだから」
「駐車場?」
「ご覧の通りここすっごい広い土地でしょ。以前は駐車場の位置に家が建っていたみたいで……遺体があった場所には家を建てていないので告知するする義務はありませんってロジックなんだと思う」
「はぁ。もういいけどね。この土地でかつて人が不幸な亡くなり方しましたなんて言ったらそりゃあ地球の長い歴史を考えたらどこだって当てはまるだろうし」
「祥子のそういうポジティブ思考好き」
この地でそんな事件かもしれない事が起きてもさほど動じない祥子に山口は羨望の目を向けた。
「ところでひろみ、なんでそんな私よりこの土地の事情に詳しいの?」
「一つはこの土地が事故物件サイトに掲載されていているから。短い事件内容も記載されている。あとは知り合いのホラー好きに情報提供してくれた方がいて、それを私も又聞きした」
「事故物件サイト……前にネットニュースでタイトルだけ見たことあるかも。管理者のインタビュー記事だったかな」
「でしょ。けっこう有名なサイトだよ。で、そんなサイトをホラー作家であるひさしさんが知らないなんてことは考えにくいの。新住居を建てる土地を決めるなんていう大きな決断だったら尚のこと事故物件であるのか関係なくこの土地や周辺のことを調べたりすると思う」
ひさしはこの土地が事故物件であることを知った上で決めたのではないのか?
そんな可能性を山口は提示したかった。
「ひさしさんはその事を知った上でここに家を建てたかもしれないってこと? なんでそんな」
「普通は避けるけどね。でもひさしさんホラー作家だし……試してみたかったのかも。曰く付きの土地に住んでみたら怪奇現象は起きるのかって。その家は全焼して、家は新しくなっているから軽めのお試しだけど。中にはいるからね、好んで血痕が残っている事故物件とかに住む人は」
「そういえば……一度だけ変な事があったの」
祥子はひさしと共に体験した妙に引っかかるあの晩の出来事を話した。
「ひさしさんから電話があった日か。その音は火災報知器の音みたいだったの?」
「うん、今どきの音じゃないジリジリってベルみたいな音で、何か異常を知らせる音に聞こえなくもない音だったと思う」
「その後に二人目の謎の訪問者が来た時にはひさしさんはなぜか出ることはなかったと」
「うん、その時のひさしさん怖かったかも。危険が迫っているような顔して」
「そんな対応ができるのも遂にきたかって察したからなんじゃないの、これって! 火災を連想させる音も聞いているわけだし」
「でもその音は近所の人も聞こえてたんだよ。それでうちに確認しにまで来たわけだし。怪奇現象ってそこに居た人にしか見聞きできないってイメージなんだけど。それで私、安心してきっと何か原因があるんだろうって思えたもん」
「そうね、あんまり広範囲に影響が及んでいるような怪奇現象もそんなに聞かないか……」
ここで会話が無くなる。
「いずれにせよそこらへんは、はっきりさせておいた方がいいんじゃない? ひさしさんはなんで事故物件になっているこの土地に住むことを決めたのか」
「どう、やって?」
「そんなの、ひさしさんの仕事部屋に入って何か手掛かりがないのかを調べてみるんだよ。パソコンならまだ手付かずであるでしょ」
祥子はそれを決めあぐねているみたいだ。
「ごめん、私の興味本位で調べようと言っているみたいだけど祥子だって気になるでしょ。ひさしさんがもしもホラー的な要因で亡くなったのであれば祥子の身も危ないかもしれないし」
「わかった、いいよ」
お茶を飲み干すと山口は「よし」と言った。




