天使病
「またですか間坂さん!」
医局室の窓から日光が差し込み、鳥のさえずりが聴こえる。少し体が怠いが大したことではない。今大変なのは、目の前にいるこの青年を落ち着かせることである。
この青年は、私、間坂賢治が勤めている桜第二病院に今月から配属された新人の医者で、名前は確か天野優助だったはずだ。どこかお偉いさんの息子らしいが人当たりがよく、顔も悪くないためすぐに我が病院のアイドル的存在にまで上り詰めた。
「話聞いてますか間坂さん。研究するのは良いことですがもっと自分の体を大切にして下さい」
「はいはい。以後気をつけます」
「その台詞、何回目ですか」彼はため息を吐き、コーヒーメーカーを起動させた。
いつもの何気ない会話。私はこの時、この日々がいつまでも続くことを信じて疑わなかった。
お昼時、午前の診察を終えた私は財布を手に購買へと足を進めようした時、天野くんが私を呼び止めた。
「間坂さん、さっき院長さんが呼んでましたけど、またなんかやらかしたんですか?」
「いつもやらかしてるみたいに言うのはやめろ」
「すいません。でも、用事って何でしょうね」
「さーな。どうせまた院長の気まぐれだろ。まあ、行ってくるわ」
と言って、私は院長室へと行先を変更した。
とは言っても、確かに彼がそう言うのもおかしくない。我が病院の院長は隣の桜第一病院の院長も兼任していて、基本的にいつも向こうに在中している。こちらに来ることは、月に一度の定例会ぐらいで、誰かが呼び出されたという話自体、今まで聞いたことがない。
「私は一体、どんな事をやらかしたんだろう」と、直近の行動を思い出しながら歩いていると、気づけば院長室の前にいた。
コンコンと扉をノックし、「外科の間坂賢治です」と言うと、「入りたまえ」と図太い声がした。「失礼します」と扉を開けると、そこには院長と見知らぬ背広の男が1人ソファに座っていた。
「間坂くん、忙しい中急に来てもらって悪いな。この御方は、天使省大臣の天宮さんだ」
「天宮だ。どうぞよろしく間坂くん」と言ってこの男は手を差し出した。
この人の笑顔がどうも恐怖すら感じるのは気のせいだろうか。それでも私は勇気を出して、
「よろしくお願いします」と手を出して、握手を交わした。
「まあ、立ったままでいるのもなんだから座りたまえ」と天使省大臣の天宮さんは私をソファへと促した。
ここで渋るのは失礼だなと思い、言われた通り院長の隣に腰を下ろすと、男は口を開いた。
「早速だが本題に入らせてもらおう。君に折り入って頼みがあるのだが、君がこの病院で“天使病“の研究をしているのは間違いないかね」
「はい、確かに」
この時点で私はこの男がこれから言わんとすることにある程度見当がついていた。
「そこで私の頼みというのは、ぜひ私の娘を救ってくれないだろうか」
この男に娘がいることやその娘が”天使病“を患っていることに少し驚きはしたが、それは重要なことではない。私の返事はもう既に決まっている。
「すみません。その頼みにお応えすることはできません」
「それはどうしたかね」
「まず、そもそも”天使病“の治療方法はまだ完全には確立していません。もし今、この状態で無理に治療すれば症状が悪化したり、後遺症が残る可能性があります。次に、これは私個人の理由なのですが、この病気の治療方法が確立したらまず初めに救ってあげたい相手がいるんです。彼女は私の幼馴染で、私がこの病気の研究を始めたのも彼女を助けるためなんです」
私がこの話を話し終えた後、隣の院長がやけに息を荒く何かに怯えているのをその時、私は気づかなかった。
「そうか、それは仕方のないことだな。すまないな、貴重な時間を使わせてしまって。私の娘は彼女の後でも構わない、治療方法が確立したらまた連絡してくれ。君はもう自分の仕事に戻って良いぞ。」
「ありがとうございます。では失礼しました」
私はソファから立ち上がり、扉の方へ顔を向けた。瞬間、バンッと大きな音が私の背中で鳴り響いた。
それが銃声であると気づいた頃にはもう遅く、胸のはち切れんばかりの痛みで私はその場で膝から崩れ落ち、その場で倒れ込んだ。
私の作品を見ていただきありがとうございます。
文章を書くことは上手くないので、誤字や表現がおかしいところがあるかもしれませんがご愛嬌のことよろしくお願いします!




