王川小学校②
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高校三年の夏。
王川小学校。
夕暮れはもうすぐ終わりそう。空が薄暗くなってきた。
「ま、それで両親が死んでさ……、最初のうちは大丈夫だったんだけど、だんだん辛くなってね、色んな人に迷惑もかけて……、とても、野球なんてやれる状態じゃなくなった。それでやめた」
自分のわがままのせいで両親は死んだ。
向き合わないで逃げた結果、夏海を悲しませた。
ただ、楽しかったからやっていた野球を逃げ場所にしたあげく、汚してしまった。
もう野球は出来ない。
そして退部した。
「陽太……、そんなことがあったなんて」
「俺もいろいろあるだろ? はは……」
「陽太ー!」
「お……! お、おい!」
蒼衣は僕に抱きついて押し倒した。
「――ッ、痛っ……、な、なにを――」
「陽太! ぎゅうぅだよ! ぎゅうぅぅぅ!」
「は、はぁ?」
「ぎゅうぅぅするから! ぎゅうぅぅってしてあげるから!」
蒼衣はそう言って僕を力強く抱きしめた。
温かい体温。暑苦しいくらいだ。
汗の匂い。髪の匂い。花の香りみたいに甘い。
「だから大丈夫だよ! 陽太! 陽太は悪くないよ!」
「あ、蒼衣ちゃん……」
「ぎゅううぅぅぅ!」
「お、おいッ……、! く、苦しいから! やめろって」
「やめないよ! 陽太が嫌なこと全部忘れるくらいに苦しむまで!」
「は、はぁ? な、なにを言って――」
「嫌なことで苦しむんだったら、嬉しいことで苦しんだ方がいいに決まってるもん!」
「嬉しいこと?」
「そうだよ! だってこんなに可愛い美少女JKに抱きしめられて嬉しくない男の子なんているはずないもん!」
「い、意味不明だから」
「もうー、陽太は照れ屋なんだから!。素直に嬉しいって言えばいいのに!」
「バカにつける薬はないなぁ」
「なんだとー! このバカ陽太め!」
蒼衣はそう言ってもっと力強く僕を抱きしめた。
胸が圧迫されて呼吸が苦しかった。




