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「……ここか。」
数ヵ月前の記憶を人目を気にしながら表通りと脇道を利用して俺は三階建ての建物の前までたどり着く。
『ギルド』。この世界に存在する魔法生物を討伐するために生まれた組織だ。この組織の支部は全世界にあり、国家間の移動をスムーズに行えるらしい。
しかも、ギルドの役人……『冒険者』と呼ばれる者になるには金がかからない上初期投資の武器はギルドが負担するらしい。
……何故、『らしい』という言葉がつくのかと言うと、あくまで知識として知っているだけであって冒険者がどのような人たちなのか分からないからだ。
まぁ……最悪の場合、殺してしまえばいいか。
(……絶対に心のたがが外れているよな。)
自分の考えに嫌気をさしながら扉を開けて中に入っていく。
ギルドの中は粗野な人たちでごった返しており、扉を開けた瞬間、何人かは俺の方を見たがすぐに自分の仲間と会話を始めた。
(……ここが、ギルドか。)
予想以上に粗野な場所だな。まぁ、俺が欲しいのはあくまで動くために必要な金だけだ。無駄に絡む必要はないし、絡む時も人を厳選して絡もう。
「あ、ここが受付でーす!」
受付から身を乗り出して手を振る少女の前まで歩いていると、少しずつ俺を見てくる視線が多くなっていく。
……殺意があるわけではない。恐らく、好奇心なんかだろうな。
「えっと……クエストを出しに来ましたか?」
「いや、ギルドに加入したい。」
俺を頭からてっぺんから爪先まで見た受付嬢は少し悩んだ表情をしたが羊皮紙と羽ペン、赤黒いインクを取り出す。
「では、ここに名前を書いて下さい。あ、代筆も可能です。」
「いや、自分で書ける。」
羽ペンを受付嬢から手に取ると先端にインクをつけて少し考え込む。
……名前か。俺には月読白と言う名前があるが、この世界は基本的に名前が前に来る。本来の名前を使えば確実に異世界人だとバレてしまう。
となると、偽名か……。
「――――書けたぞ。」
「はい、ありがとうございます。」
数分後、俺は羊皮紙を受付嬢に渡し、羽ペンとインクを受付嬢に返す。
……ちょっと変わった名前だけど、まぁ良いかな。
「えっと……『名前:ホワイト・コールド。前職:なし。武器:指定なし。適正:なし』これで良いですね?」
「あぁ、構わない。」
「では、紹介状を渡します。これを渡せば好きな武器や防具が買うことが出来ます。」
「……分かった。」
鍛冶屋への紹介状をもらうと面倒ごとに巻き込まれる前にさっさと建物から出ていく。
無駄に目線を集めて俺という存在を認識されると後が大変になるだけだ。さっさと鍛冶屋から武器と防具を手に入れよう。
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「はぁ……。」
「どうかしたのよ、浮かない顔をして。」
スタイル抜群の副ギルド長が休憩所で項垂れていた私に話しかけてきた。
……羨ましい。この幼児体型のせいで未だに子供扱いされる私に身長と胸の脂肪を奪いたい。
「私が受け持つ事になった冒険者を見てくださいよ。」
「どれどれ……何よこれ、殆んど書いてないじゃない。」
私が渡した羊皮紙に目を通した副ギルド長は頭に手を当ててやれやれ、と呆れてしまう。
ホワイト・コールドさんは名前以外の全てを書いていなかった。そんなド素人を受け持つ私の負担を考えてもらいたい。
「ホワイト・コールドはどんな人物?」
「うーん……悪い人には見えなかったとしか言えないかな。」
実際、私には彼がどんな人物なのか検討もつかない。
私は自分のスキルの影響で人の気配が分かるのだけど、ホワイト・コールドさんからくる気配は他の人たちの気配と同化していて全くと言って良いほど分からなかった。
これほどの気配を欺く技術を持ちながら表舞台に出てこなかった。それだけでも嫌な予感がしてならない。
「まぁ、取り敢えずスキル検査機にかけましょう。そうすればスキルくらいなら分かるはず。」
「はい!」
起き上がって私は副ギルド長の後を追いかけていく。
私が受け持つ事になった冒険者、私が初めて受け持つ冒険者……なるべく、面倒ごとを持ち込まないでね。




