復讐の決意と見守る者たち
「うっ……あ……。」
うめき声と共に脚を持ち上げ、立ち上がる。
……顔の一部が焼けるように痛い。恐らく、火傷が出来ているだろう。目が失明していないだけ運が良かったのか……。
飛ばされた場所は……両親が眠る花園か……?あの熱量のせいで土は捲れ、花は枯れ、二人の墓は……見るも無惨な状況になっていた。
「酷い……。」
花園だった場所から村を見下ろし、絶句する。
村があった場所はまるで隕石でも落ちたかのようなクレーターとなり、土は赤や緑、紫色に変色、歪みきった魔力がプラズマとなっていた。
あんな状況じゃ……もう、誰も生きていないだろう……。あれは核兵器を遥かに凌駕している……人為的な『天災』その物だ。
何で……俺たちが殺されなければならなかったんだ……?魔族だからか?たかがその程度の事で……慎ましくも得難い幸せを、潰されたのか……?
これが……俺の悲劇だというのか……?
「ふざけんなッッッ!」
地面に咲き誇っていた花を泣きながら焼け焦げたブーツで蹴り飛ばす。
例え世間一般から見て害獣だとしても、そこにあった幸せを潰していけない!これをやった勇者たち……いや、これを命じた王国を許すつもりは……ない。
王国は……俺の手で……潰す。
「……行ってくるでな、父さん、母さん。」
涙を拭い、俺は墓石を元の位置に戻して二人に旅立ちの挨拶をして……背を向ける。
許さないぞ……ニブルヘルト王国。これは復讐だ。親父たち今まで死んでいったEランク勇者、天災を享受するしかなかった魔族……虐げられてきたものたちの代表として……この悲劇を作った者たちに……復讐してやる。
それが―――――生き残った俺が唯一できる事だ。
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「……行ってしまいましたか……はぁ……。」
私は彼の姿を見ながら、私のスキルの力の一端である『時の鏡』を消す。
私のスキルは『時間指標』。時間という『概念』その物に干渉し、ありとあらゆる時間を見定め、操ることができるEランクの勇者スキルです。
この事から『仙』に至った者たちからは『時間の番人』なんて言われています。
運命に守られた世界から凄まじいエネルギーを察知して『仙』に至った者たちの大半が見ていましたが……まさか、人間があのような領域に……。
「あの、お二人は……どう思っているのでしょうか。」
「私としては息子が元気に育って良かったと思っているわよ?彼だって私たちを殺したあの憎い王国に仇をうってくれるのなら……それは嬉しいことだわ。」
「僕も……そうだね。彼が復讐の道に人生を費やすとなると、天月さんや大河さん、秦さんが予知していたから驚かないけどね。」
『時の鏡』を誰よりも集中して見ていた白髪の女性が笑い、黒髪の青年が少し微笑を浮かべる。
白髪の女性は白鈴 蝴臨。星が持つ莫大な魔力を直接扱える『星天術理』のスキルを持つ『星の巫女』。黒髪の青年は月読 白亜。生物の中で最強にして災害と言われるドラゴンの力を行使する『魔竜咆哮』のスキルを持つ『魔竜王』。
彼らは……悲劇を持って復讐の道を歩き始めた月読 白の両親である。
「にしてもよ……運命をダイスする『幸運変動』でもここまでの悲劇になならなかった筈だぜ?」
「……多分、それはあの者が既に我らに近づいているからじゃないかの、『運の仙』よ。我らに近づいたらのなら……運命を歪めるお主のスキルを使ったところで歪めきれなかったのじゃ。」
「ぎゃははははは!確かにな、『文の仙』。」
……ギーラさんも秦さんも笑っている暇はないのですが……。
「……それにしても、あの時の少年が貴方たちの息子ですか……。成る程、あの胆力は『星の巫女』譲りですか。」
「そうわね。」
「……読めた。」
皆さんが話している間に瞑想をしていた天月 琥珀さんが歴史を読み解きました。
天月さんのスキルは人のステータスを『アカシックレコードを遥かに凌駕する精度で見る事が出来る『歴史調査』。
この事から彼女は『歴史の盗掘者』と呼ばれてます。……不名誉だから『仙』として通していますが。
「それで、私の息子のステータスはどんな感じなの?」
「……これです。」
声音が弾んでいる蝴臨さんに天月さんは羊皮紙を渡す。
彼女のスキルは羊皮紙にその結果を書き写すことが出来ますからそれをしたのでしょう。彼のスキルには興味があります。どれどれ…………
☆☆☆☆☆
月読 白 種族:ヒューマン(概念到達者)
魔力:5000/5000 生命力10000/10000
俊敏:700 耐久:20000
スキル
・炎魔法(概念) ・確約された悲劇
・水魔法(概念)・呪詛
・深淵 ・精神防御
・気配察知 ・精神汚染
・回避
Eランク勇者スキル
・仙界境面
内容:現象、物質、概念を消滅させる光を放つ鏡を作り出す。
・予測不能
内容:如何なる予知能力でも完全な予知を不可能とする。
・万神の消滅
内容:因果その物を縫い付けた攻撃。その力は不死者や天使、悪魔、神すらも殺す。
☆☆☆☆☆
「これは……。」
「すげぇ……。」
余りにも反則の領域にあるスキルに全員が唖然とする。
「凄いわよ、さすが私の息子!」
「いや、僕たちの息子だけどね。」
……あそこで騒いでいる両親を除けば。
いや、驚く事も無理はない、か。
Eランク勇者スキルが三つ、二つの属性魔法はその『概念』を操る程になっている。しかも、予知能力では彼の完全な未来を見れないときた。
まるで……私たちの手を借りる事もなく目的を遂行したいと言っているかのように。
「では……見定めましょうか。」
天月さんの鶴の一声で辺りは静寂に包まれる。
そう……彼には私たちを殺した王国への敵討ちがある。それは私たちも同じこと。彼なら……出来るでしょうか。
「ええ。」
「分かっている。」
「この少年が。」
「「「「「「我々の願いを叶える存在か。」」」」」」
「しかと、見届けましょう。」




