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アイコン三国志  作者: 小金沢
第四章 官渡の戦い
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30/126

〇二九   曹操暗殺計画

~~~許昌(きょしょう)の新都 曹操邸~~~



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「曹操様、お加減はいかがですか?」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「ああ、いつもの頭痛が起こってるよ。

これじゃあろくに考えもまとまらない。

早く君の薬を飲ませてくれ」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「はい。今日は特製の薬を処方して参りました。

こちらをどうぞ」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「ほう、新しい薬かい。それは楽しみだ」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

(クックックッ……。一滴だ。

ほんの一滴、口に含めばお前は最期だ)



挿絵(By みてみん) 曹沖(そうちゅう)

「父上、ちょっとすみません」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「うん? どうした曹沖君」



挿絵(By みてみん) 曹沖(そうちゅう)

「それが先ほどから少し頭痛がしていまして……。

よろしければそのお薬を分けてはいただけませんか」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「あ……」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「なんだい吉平君?」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「い、いえ。その薬はとても苦いですし、

子供には、曹沖様には少し効き目が強すぎるかもしれません」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「そうなのか。でも、子供が飲んだからといって

死ぬわけじゃないだろう?」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「え、ええ……」



挿絵(By みてみん) 曹沖(そうちゅう)

「それではお先にいただいてもよろしいですか?」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

(まずいぞ……。このガキが先に飲み、死んでしまったら、

曹操が飲まなくなってしまう。

だ、だがたったの一滴でもいいから口に含ませればいいのだ。

曹沖が苦しむのに驚いたところで、

この予備の薬を曹操の口に振りかければ……)



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「吉平君? さっきからどうしたんだい。

何か言いたそうじゃないか」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「なんでもございません。

ささ、早くお薬をどうぞ。よく効きますぞ」



挿絵(By みてみん) 曹沖(そうちゅう)

「ああ、本当に苦そうな匂いがしますね。

ぼくにも飲めるかな……」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

(ええい、さっさと飲まんかこのガキは!)



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「待った」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「ああ! そ、曹操様、どうしてお薬を捨てられるのですか!」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「吉平君。君は四つの間違いを犯した」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「は?」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「一つ、君と董承(とうじょう)君の関係はもうつかんでいる。

二つ、目的のためならば子供も構わず殺そうというのは感心しない。

三つ、曹沖君をただの子供とあなどってはいけない」



挿絵(By みてみん) 曹沖(そうちゅう)

「あなたは父上の症状を伺う前から、

もう薬を用意してきていました。

こんな不思議なことがあるでしょうか。

その薬は、何か別の目的のために用意したと

考えるのが自然でしょう」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「あ、あがががが……」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「そして四つ、これが最も大事なことだが……

医者は人を治すのが本分だ。

それを忘れて僕らを殺そうとした君は、もはや医者でもなんでもない。

僕の典医のままならば僕を殺すこともできたかもしれないが、

ただの謀叛人である君には、僕は殺せないよ」



挿絵(By みてみん) 吉平(きっぺい)

「………………」



~~~許昌(きょしょう)の新都 拷問所~~~



挿絵(By みてみん) 許褚(きょちょ)

「誰の差し金だ?

吉平とお前たちだけで企んだことではあるまい。黒幕がいるのか?

どうせお前らはここで死ぬのだ。白状しろ!」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「…………」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「く、黒幕などと無礼なことを言うな!

これは勅命だ! 献帝陛下が私に逆賊を討てと命じたのだ!」



挿絵(By みてみん) 許褚(きょちょ)

「勅命だと!?」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「そうだ。勅命を受けたのは私だけではない。

劉備や袁紹、孫策に劉表、馬騰……

皆が陛下の命により曹操の首を狙っているのだ!」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

(やれやれ……。

この男、最後の最後まで陛下に迷惑しか掛けなかったな。

どうせ死ぬのだからと皆を道連れにしようとしている)



挿絵(By みてみん) 許褚(きょちょ)

「黙れ! 曹操様は陛下をお守りし、

漢の世を推戴する忠臣であるぞ!」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「ぎゃあああああああ!!」



挿絵(By みてみん) 許褚(きょちょ)

「今の話を曹操様に報告してくる。

お前たちは死体を片付けろ」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

(先に首さえ斬られていなければ、

董承を千の言葉で罵ってあげたかったな……)



~~~徐州(じょしゅう)~~~



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「ご苦労であったな。我々は引き上げるが、

車胄(しゃちゅう)や楊奉(ようほう)は残していく。

何かあれば連絡しろ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほいほい。自分のことでなければ気前がいいんじゃな」



挿絵(By みてみん) 張遼(ちょうりょう)

「関羽のダンナ、オレも帰るけどよ、またいつか飲もうな!」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………(笑)」



挿絵(By みてみん) 楊奉(ようほう)

「チッ。俺は居残りかよ」



挿絵(By みてみん) 車胄(しゃちゅう)

「文句を言うな。見回りに行くぞ。ついてこい」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「でもさ。せっかく袁術から奪った揚州には兵を置かないの?

孫策に獲られちゃうわよ」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「お前らの知ったことではない。さらばだ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「……あいつ絶対に友達少ないわよね」



挿絵(By みてみん) 陳登(ちんとう)

「要するに曹操軍には兵が足りないのだろう」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「おお、あんたはわしらが呂布に徐州を追われた時に

呂布に降ったくせに、あっさり曹操に寝返って

今またわしの配下に戻った陳登さんじゃないか」



挿絵(By みてみん) 陳登(ちんとう)

「ご紹介ありがとう。

話を戻すが、曹操軍には揚州にまで版図を広げる余裕が無いのだ。

青州黄巾軍30万を得たとはいえ、四方に敵を抱え、領土も広大だ。

いくら兵があっても足りない」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「そのうえ袁紹との戦いを控えてるから、

手元に少しでも兵力を温存しておきたいのね」



挿絵(By みてみん) 陳登(ちんとう)

「孫策も反乱軍や山越(さんえつ)族の鎮圧に明け暮れて、

揚州にまで手が回らない。

曹操はこの徐州に多少の兵を残し、警戒だけしておくということだ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ふ~ん。ややこしいもんじゃな政治っつーのは。

陳登さんも張さんもよく話の裏がわかるもんじゃ」



挿絵(By みてみん) 簡雍(かんよう)

「いちおう劉ちゃんは刺史サマなんだから、

そのくらいは理解しておいて欲しいもんだな」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わはは。違いないのう」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「笑い事じゃないわよこの無能男が!」



~~~許昌の新都 宮廷~~~



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「曹操、朕は……」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「おっと、それ以上は言わなくていいよ。

陛下が僕に敵意を持っていないことは知っている。

全ては董承君の陰謀だろう。それにもし陛下が関与していれば、

もう少しマシな計画になっていたはずだしね」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「…………」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「だけど陛下の口から否定にしろ弁解にしろ発せられてしまったら、

余計な波風が立ってしまう。だから何も言わないでくれたまえ」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「朕はあの時、董承を処刑しておくべきだったのだろうな」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「陛下、それも言ってはいけない。

『綸言汗の如し』と言うとおり、陛下の言葉は絶対なんだ。

いったん口に出したことを取り消したり、

後悔したりする必要はないよ」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「……お前は朕よりも、皇帝の在り方について詳しいのだな」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「おたわむれを。

話は前後するけど、董承君が名前を挙げた人々は、

いちおう取り調べさせてもらうよ。

特に劉備君に関しては、この件を悪用させてもらう」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「な、何をするつもりなのだ」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「彼には消えてもらう」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「!」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「袁紹君と戦うために僕には徐州が必要なんだ。

劉備君には悪いけど、譲り渡してもらうよ」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「お、叔父上は朕と親しく話してくれた。

義兄弟もそうだ。本当に叔父のような気がしたのだ。

劉備を、その義兄弟もできれば殺さないでくれないか……」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「命まで取るつもりはないよ。

しかし、戦は何が起こるかわからない」



挿絵(By みてみん) 献帝(けんてい)

「…………」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「そんな顔をしないでくれたまえ。努力はするよ」



~~~徐州~~~



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わしが? 陛下に? 謀叛を? 董承と? 組んで?

わっはっはっ。なんの冗談じゃそれは」



挿絵(By みてみん) 糜竺(びじく)

「あっはっはっ。何かの間違いでしょう。

劉備様ほど陛下に忠誠を誓っている方はいません」



挿絵(By みてみん) 孫乾(そんけん)

「劉備様の内心はどうあれ、

謀叛の容疑を掛けられ討伐令が出たのは事実です!」



挿絵(By みてみん) 糜竺(びじく)

「………………」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「………………それはまずいのう」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「まずいどころじゃないわよ!

曹操が来んのよ! すぐに逃げるわよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ええー。わしは無実なのに逃げたくないのう」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「何をのんきなこと言ってんのよ! 見なさいよこの手配書を。

アンタ、帝位を狙ってるって曹操に言ったそうじゃないの。

これマジで言ったの?」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「言った」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「馬鹿じゃないの?

いや、馬鹿なのね。三國無双の馬鹿なのね!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「でもいつか皇帝になりたいって話は、

みんなにしょっちゅう言っとるけどなあ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「曹操に言ったのがまずいのよ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「まあわしと曹さんの仲じゃから話せばわかるじゃろ」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「アンタと曹操の親密度がMAXでも無理よ!

回避不能イベントよ!」



挿絵(By みてみん) 簡雍(かんよう)

「曹操が来るより先に、徐州に駐屯しとる車胄と楊奉はどうする?

すぐに逮捕に来るぞ」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「その心配はない!」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「ち、ちょっと関羽!

アンタが両手に提げてるその首って……」



挿絵(By みてみん) 挿絵(By みてみん)

「「………………」」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「車胄と楊奉の首だ。先手を打って彼らはこの関羽が討ち取った!

……と父は思っています」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「あっちゃあ~。これでもう弁解は無理じゃのう。

しかたない、逃げるか」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「もともと無理だって言ってるでしょ!

関羽、あいかわらずやることはむちゃくちゃだけど、今回はお手柄よ。

これで劉備のバカも腰を上げてくれたわ」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「拙者は曹操に出頭し時間を稼ぐ。今のうちに逃げられよ!

……と父はそうも思っています」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「……死ぬんじゃないわよ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「それで軍師の張さんや、どこに逃げればいいかのう?」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「都合のいい時だけ軍師サマなんだから……。

そうね、やっぱり袁紹を頼りましょう。

曹操に対抗できるのはアイツくらいだわ」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「わかった、そうしよう。

じゃあな関さん。悪いのう」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「構わぬ。義兄上は大義のために生きられよ!

……と父は思っています」



~~~徐州~~~



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「なるほど、劉備君を逃がすために捨て石になったというわけか」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



挿絵(By みてみん) 関平(かんぺい)

「否。曹操暗殺も車胄、楊奉の殺害も

全てこの関羽が一存で成したこと。

劉備は関係ない。拙者を処罰せよ!

……と父は思っています」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「いや、そうはいかない。首謀者は劉備君だ。

……怒らないでくれたまえ。

そういうことにしておかなければ、君たちを助けられないじゃないか。

陛下に君たちを殺すなと言われてしまったんだ」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「劉備君は関羽君に罪をなすりつけ逃亡した。

だから君たちを罪には問わない。

ああ、車胄君たちを殺したのはまずいな。それはどうしようか」



挿絵(By みてみん) 郭嘉(かくか)

「首」



挿絵(By みてみん) 曹操(そうそう)

「そうだね。首を獲った罪は、首を獲ることで償ってもらおうか。

関羽君、きたる袁紹君との戦いに力を貸してもらうよ。

そこで敵将の首を二つ挙げることで、罪は帳消しにしてあげよう」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



~~~~~~~~~



かくして劉備は徐州を失い、関羽は曹操の手に落ちた。

一方、袁紹は着々と北地の攻略を進め、公孫瓚を追い詰めていた。

曹操と袁紹、いよいよ両雄の決戦は間近に迫っていた。


次回 〇三〇   白馬の戦い

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