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アイコン三国志  作者: 小金沢
第四章 官渡の戦い
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29/126

〇二八   偽帝の末路

~~~揚州(ようしゅう) 寿春(じゅしゅん)の都~~~



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「劉備と曹操の連合軍が迫ってきてるザンスって!?」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「はい! その数およそ5万!」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「5万ザンスか……。

呂布に負ける前だったら屁でもなかったザンスが、

今のミーの兵力では微妙ザンスよね、周瑜? ……周瑜?」



挿絵(By みてみん) 紀霊(きれい)

「周瑜だったら、陛下の指示で視察に出てるぜ」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ミーの指示で? そんな指示出したザンスかね?

まあそれならすぐに帰ってくるザンスね。

周瑜が帰るまでは打って出てはダメザンス。

それと孫策や袁紹を援軍に来させるザンス!」



~~~揚州 北部 劉備軍~~~



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「まったくどうなってんのよ?

国境線どころか、前線を簡単に突破できちゃったわ。

袁術軍は閉じこもってばかりで

ろくに応戦してこないみたいじゃない」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「さてはわしが怖くて出てこられないんじゃな!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「仮に怖がってるとしてもそれはアンタじゃなくて

アタイや関羽だと思うわよ」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「ヒッヒッヒッ。抵抗しないならば好都合だ。

思うままに蹂躙してやろう。

もし抵抗するならば殲滅するだけだがな」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「……どうせそれをやるのはアタイたちなんでしょ」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「ここまで袁術軍が無抵抗ならば我々が力を貸すまでもない」



挿絵(By みてみん) 簡雍(かんよう)

「たいした援軍だのう」



挿絵(By みてみん) 糜竺(びじく)

「おや、偵察に出ていた弟が帰ってきましたよ」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「報告アル。前方に袁術軍の主力が集結しているようアルが……」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「アルが? 何かあったんか」



挿絵(By みてみん) 糜芳(びほう)

「あるアル。

袁術軍は何者かにすでに襲撃され、大混乱に陥ってるアル」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「好機だ! 混乱に乗じて袁術軍を殺戮せよ!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「……アタイたちが殺戮すんのよね?」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「無論だ。混乱している相手など我々が助力するまでもあるまい」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「はいはい。なるべく兵を消耗したくないのよね曹操サマは」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………ッ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「ほれほれ、関さんはニンジンを見つけた馬みたいに

飛びかかって行ったぞ。張さんも早く行かんか!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「まったくアンタらは! アンタらと来たら!!」



~~~揚州 北部 袁術軍~~~



挿絵(By みてみん) 雷薄(らいはく)

「ヒャッホー! 略奪だぜえっ!」



挿絵(By みてみん) 陳蘭(ちんらん)

「昨日の友は今日の敵ってな!

悪いが飯の種を奪わせてもらうぜ!」



挿絵(By みてみん) 李豊(りほう)

「おのれ陳蘭に雷薄め!

呂布との戦いで軍を捨てて逃げ帰っただけではなく、

我らを襲撃するとはな!」



挿絵(By みてみん) 紀霊(きれい)

「李豊将軍! 劉備軍も攻めかかってきやすぜ!」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「これでは勝負にならん! 退け! 退けーい!」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………ッ!!」



挿絵(By みてみん) 紀霊(きれい)

「お前が関羽か!

袁術陛下の秘密兵器こと紀霊様がここは通さんぞ!」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「ッッ!!」



挿絵(By みてみん) 紀霊(きれい)

「ぐわあっ!!」



挿絵(By みてみん) 陳蘭(ちんらん)

「おーっと逃がさねえぜ」



挿絵(By みてみん) 雷薄(らいはく)

「てめえらの退路なんてお見通しだ!!」



挿絵(By みてみん) 李豊(りほう)

「うぎゃあああああっ!!」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「口ほどにもないわねアンタら!」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「退けい! 退けーい!!」



~~~揚州 寿春~~~



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「周瑜はまだ帰らないザンスか!?

袁紹は!? 孫策の援軍は!?」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「袁紹殿のもとに向かわせた使者は、

すべて旧呂布軍によって捕らえられたようです。

奴らはさらに北上して、袁紹殿の軍とにらみ合っており、

援軍が来るのは望み薄かと……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「それなら孫策は何をしてるザンスか!?」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「孫策はかつてお借りした兵を

十倍にしてお返ししたいと申し出てきましたが……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「やったザンス!

3千を貸したから3万になって返ってくるザンスよ!」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「そ、それが3万の兵は我々に向けて槍や矢を向けたまま動かず、

どうやら返すというのは名ばかりで、

攻撃こそしてこないものの我々に協力する気はないようです」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「…………し、周瑜は?」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「その3万の兵を率いているのが周瑜です」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「なんなんザンスかその三段落ちは!?

許さないザンス!

周瑜も孫策も曹操も劉備もみんな殺してやるザンス!!」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「そ、そうしたいのはやまやまですが、

我々にはもうそれほどの兵力は……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ぬぬぬぬぬぬぬ」



挿絵(By みてみん) 劉馥(りゅうふく)

「なあ陛下、こうなったら覚悟を決めましょうや」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「な、なんの覚悟ザンスか?」



挿絵(By みてみん) 劉馥(りゅうふく)

「曹操に降伏するんですよ。

玉璽(ぎょくじ)を差し出せば、命までは取らないでしょうや」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ぎ、ぎ、玉璽を!? ふ、ふざけるなザンス!!」



挿絵(By みてみん) 劉馥(りゅうふく)

「ハンコと命を引き換えにするんですかい?」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「玉璽はミーの魂ザンス! 誰にも渡さないザンス!」



挿絵(By みてみん) 劉馥(りゅうふく)

「そうですかい。

あっしの首と玉璽で、陛下の助命を頼もうと思ったんですがね。

じゃあ残念だが、もうあっしにできることはありやせん。

ここでお別れしますわ。今までお世話になりやした」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ユーの顔なんて見たくないザンス! さっさと消えるザンス!

あ! ま、待つザンス!

今までくれてやった褒美は全部置いていくザンス!」



挿絵(By みてみん) 劉馥(りゅうふく)

「言われなくてももう、あっしの家に全部まとめてありやすよ。

それじゃあどちらもお元気で……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ち、ち、張勲! 塩をまくザンス!

あと周瑜と孫策と曹操と劉備の首を持ってくるザンス!」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「それができたら世話はない……」



~~~揚州 北部 劉備軍~~~



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「袁術は財宝だけ持ってとんずらこいたみたいね」



挿絵(By みてみん) 楊奉(ようほう)

「主だった将はほとんど討たれたからな。

抵抗する力なんて無いんだろうよ」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「ククククク……。偽帝め、逃がしはせぬぞ。

昼夜を分かたず追い詰め、追い込み、追い打ちするのだ!

袁術にこの世の地獄を見せてやれ!」



挿絵(By みてみん) 劉備(りゅうび)

「それをわしらの軍がやるんじゃな?」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「無論だ。兵糧と武器は供出してやる。

褒美は思いのままだ。行け」



挿絵(By みてみん) 簡雍(かんよう)

「褒美は曹操が出すんだろうな」



挿絵(By みてみん) 張飛(ちょうひ)

「この男、自分では何もしないのね」



挿絵(By みてみん) 朱霊(しゅれい)

「私は人を使うことにかけては天才的だからな。さあ、行け」



挿絵(By みてみん) 関羽(かんう)

「…………」



~~~揚州 南部 袁術軍~~~



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「…………」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「昼も夜も劉備や曹操、陳蘭らに追い回され、

部下はみな逃げ散ってしまった。

せっかく持ち出した財宝も残らず奪い去られた……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「…………」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「そのくせ玉璽だけは肌身離さず持っておられる。

金銭的な価値はほとんど無いだろうに。見上げた根性だ……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「……ハチミツ舐めたい」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「はいはい。水なら少しはありますよ」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「やだ。ハチミツ」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「ありません。

陛下は全てを失い幼児退行してしまったようだ……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ぐすん。ハチミツ舐めたい」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「うるせえ! 無えつってんだろ!!」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ハチミツハチミツハチミツハチミツハチミツハチミツ……」



挿絵(By みてみん) 袁術(えんじゅつ)

「ハ・チ・ミ・ツ~~~~!!!!!」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「……これが皇帝にまでなった男の断末魔とはな。

やれやれ。だがこれで玉璽は俺の物となった。

これさえあれば、命をつなぐこともできるだろう」



挿絵(By みてみん) ??

「ほう、それが玉璽か」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「だ、誰だ!?」



挿絵(By みてみん) ??

「貴様にはもったいない代物だ。余が預かってやろう」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「ガキが! 俺をなめるなよ!」



挿絵(By みてみん) ??

「黙れ脇役。死ね」



挿絵(By みてみん) ??

「はいです。殺すです」



挿絵(By みてみん) 張勲(ちょうくん)

「ぐわああああッ!!」



挿絵(By みてみん) ??

「……あっさり殺しすぎだ貴様」



挿絵(By みてみん) ??

「死ねと仰せでしたので殺しただけです」



挿絵(By みてみん) ??

「違う。余をガキ呼ばわりした者を、

何故もっと苦しませてから殺さぬ?」



挿絵(By みてみん) ??

「申し訳ありませんです。

御主人様は実際にガキだから悪口とは気づかなかったです」



挿絵(By みてみん) ??

「貴様も死ね」



挿絵(By みてみん) ??

「嫌です」



挿絵(By みてみん) ??

「余の命令には絶対服従ではなかったのか」



挿絵(By みてみん) ??

「嫌です」



挿絵(By みてみん) ??

「……使えぬ従者だ」



~~~許昌(きょしょう)の新都~~~



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「あれだけの勢力を誇った袁術も、あっさり敗れ去ったか」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「しかも自分では手を下さず、

戦はもっぱら劉備殿の軍に任せたそうだ」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「曹操の権力も軍事力も日増しに強くなっている。

これではいつ陛下の地位も脅かされることか……」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「おやおや、陛下を害しようとした人間の言葉とは思えないね」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「だからこそ言っているのだ。

私は陛下の温情により生き永らえているだけだ。

謀叛人の私を許して下さった陛下を守り、

御恩に報いなければならない」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「殊勝な心がけだね」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「私の謀叛未遂は曹操も知っている。

陛下の地位が曹操に脅かされることになれば、

それはすなわち私の身の危険にもつながる」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「……前言を撤回しよう」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「王子服、お前にとっても他人事ではないのだぞ。

曹操が実権を握れば、お前のような家柄の良さだけで

禄を食んでいる人間に居場所はなくなるのだ」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「それはご親切にどうも。

……要するに君は、僕を何かの計画に抱き込みたいのかな?」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「ああ。曹操を暗殺する」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「大きく出たね。勝算はあるのかい?」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「もちろんだ。手伝ってくれるな王子服よ」



挿絵(By みてみん) 王子服(おうしふく)

「聞いてしまったからには、断れば僕を殺すつもりだろう?

君に殺されるくらいなら、失敗して曹操に殺されたほうがマシだ。

駄目もとで手伝うよ」



挿絵(By みてみん) 董承(とうじょう)

「案ずるな。私の計画は完璧だ……」



~~~~~~~~~



かくして偽帝・袁術は無惨な最期を迎えた。

覇権をめぐる趨勢はいよいよ定まりつつあったが、

曹操の背後には董承の陰謀が迫っていた。


次回 〇二九   曹操暗殺計画

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