29 王宮に必要な私たち アンヌ目線
29 王宮に必要な私たち
学院へ入学した私は、お母様に教えられたとおり、家柄のよい令息たちへ積極的に声をかけた。
皆、私との会話を楽しみ、親しくしてくれた。
けれど、結婚の話を出すと、急に返事を濁した。
「アンヌ嬢ほど魅力的な女性を、私一人が独占するわけにはいきません」
「あなたには、私などよりふさわしい方がいますよ」
皆、同じようなことを言った。
(私が優秀すぎるから、恐れ多いのね)
そう考えれば納得できた。
結婚相手を探すことを最優先にしたため、学院の成績はあまりよくなかった。
結局、婚約者がいないまま卒業することになった私は、教授へ誠意を込めて何度もお願いし、文官の見習い心得へ推薦してもらった。
見習い心得など、すぐに卒業できると思っていた。
私は、見た目だけの令嬢ではない。その気になれば、外国語だってすぐに覚えられる。あのエリシアお姉様に使えたのだから、私に使えないはずがない。
ところが、私の優秀さは、実務ではなかなか認められなかった。
あとから入った者が、次々と私を追い越していく。
けれど、いつしか私を慕うメアリーとジェシカ、それにロザモンドが集まるようになった。
私たちがおしゃれをして王宮をそぞろ歩けば、廊下にいる者は皆、こちらを見た。
(やはり、私たちは王宮に必要なのだわ)
難しい書類と向き合うだけが仕事ではない。疲れている者たちの目を楽しませ、心を癒やす。それが私たちの役割なのだと理解した。
そんな私の生活を、おもしろくないものにする女が現れた。
姉と同じ、銀色の髪をした女だった。




