27 私は家族になりたかった ロザモンド目線
27 私は家族になりたかった ロザモンド目線
爵位が下がった。
領地は半分になった。
お父様は、私と一緒に街の清掃や孤児院の手伝いをすることになった。
お兄様もお姉様も、これまでのように侯爵家の威光を振りかざすことはできない。
家族全員が、私の起こした事件に巻き込まれた。
「私は、あの人たちを破滅させようと思っていたわけではないわ。そんな力が自分にあるとも思っていなかった。でも、結果として、皆が破滅した」
お父様は処分を言い渡されたとき、呆然としていた。
自分まで奉仕活動を命じられるとは思っていなかったのだろう。
お姉様は泣きながら、私の頬を打った。
「どうして、このようなことをしたの!」
あのとき、言葉にできたなら、私はこう答えていた。
「知らなかったからよ」
どうして、誰も教えてくれなかったの?
どうして、園遊会へ出かける私を止めてくれなかったの。
どうして、学院で勉強するよう叱ってくれなかったの。
どうして、間違った振る舞いをしている私を見て、笑っていたの。
どうして、家族の誰一人、私をまともな人間に育てようとしなかったの。
「家へ戻ってから、私はお姉様に尋ねたわ。『私のどこが不満だったの』と、あなたは私に聞いたわよね。でも、私が不満を話したところで、聞いてくれた? 私が泣いても、あなたたちは一度も話を聞いてくれなかったじゃない、って」
お姉様は、何も言えなかった。
お父様も、お母様も、私から目をそらした。
「家族の誰か一人でも、私に思いやりを持って接してくれていたら、こんなことにはならなかったと思うの」
甘えたいいぐさだけど、そう思ってる。
抱きしめてくれなくてもよかった。だけど、間違ったことをしたときに、本気で叱ってくれるだけでよかった。
ドレスの選び方を教え、授業をきちんと受けなさいと言い、他人を傷つけてはいけないと教えてくれる人が、一人でもいればよかった。
「もちろん、私を育てる義務が、家族にだけあったとは言わないわ。私自身にも、いくらでも学ぶ機会はあった。でも、最初に教えるべきだったのは家族でしょう?」
「……そうね」
「それをしなかった。私が愚かなまま育っていくのを、皆で眺めて面白がっていた。だから、私が起こした事件で、家族全員が罰を受けることになったのよ」
私は窓の外へ目を向けた。
中庭では、お父様が掃除道具を手にしていた。
これまで使用人にさえ頭を下げたことのない人が、孤児院の職員から仕事を教えられている。
不慣れな手つきで働く姿は、ひどく惨めだった。
けれど、不思議と胸は晴れなかった。
もっと愉快だと思っていた。
家族全員が私のせいで落ちぶれたのだから、心から笑えると思っていた。
「ざまあみろって、思っているわ」
そう口にすると、声が震えた。
「今だって思っている。私を見捨てた罰よ。私を馬鹿にして、失敗する姿を楽しんでいた罰なのよ」
それなのに、涙がこぼれた。
「でも……本当は、こんな復讐なんてしたくなかった」
家族を破滅させたかったわけではない。
ただ一度でいいから、お父様に心配してほしかった。
お母様に抱きしめてほしかった。
お兄様やお姉様に、間違っていると叱ってほしかった。
「私は、家族になりたかっただけなのよ」
声に出した途端、ずっと胸の奥へ押し込めていた寂しさがあふれた。
「誰か一人でも、私を本当の家族だと思ってくれていたら……あの子を傷つけるような人間には、ならなかったかもしれないのに」
それでも、私が犯した罪は消えない。
あの子の傷も、恐怖も、なかったことにはできない。
だから明日も、私は働く。
お父様と一緒に街を掃除し、孤児院を手伝い、自分が見下してきた人たちから仕事を教えてもらう。
それが罰なのだ。
私の罪の代償を、家族全員が払っている。
家族が私を放っておいた結果を、今度は皆で背負っている。
私は涙を拭い、窓の外にいるお父様を見下ろした。
(ざまあみろ)
もう一度、心のなかで呟いた。
けれどその言葉は、少しも私を喜ばせてはくれなかった。




