25 処分のその先
25 処分のその先
廊下へ出た私は、扉が閉まるのを見届けた。
「ずいぶん温情のある処分だな」
アレクサンダー殿下が不満そうに言う。
「全員を消し炭にするよりは、国のためになります」
「俺は、そのほうが手っ取り早いと思うが」
「だから、あなたを処分の決定から外したのです」
ギルバード殿下がアレクサンダー殿下を見上げた。
「アレク兄様。僕も少し軽いと思います」
「ギルバード殿下まで、そのようなことをおっしゃらないでください」
「でも、リシアの顔に傷が残ったら……」
ギルバード殿下は唇を噛み、血の残るマントを見つめた。
私は膝を折り、殿下と目線を合わせる。
「だからこそ、殿下まで怒りに任せてはなりません。リシア嬢が目を覚ましたとき、殿下が自分のために誰かを殺したと知れば、喜ぶと思われますか?」
「……喜ばないと思います」
「ならば、彼女が安心して療養できるようにしてあげてください。それが今、殿下にできることです」
「ギルバード、傷が残ってもリシアはリシアだ。変わらない」
「そうですね。兄上」
「そうだ。その時はあいつらの顔に同じことをすればいい」
「はい、兄上」
ギルバード殿下はアレクサンダー殿下と顔を見合わせて笑った。
「わかりました。リシアのところへ戻ります」
「医師の指示には従ってください」
「努力します」
ギルバード殿下は真面目な顔をしているが念を押した。
「従うと約束してください」
「……はい」
ギルバード殿下が歩き出すと、アレクサンダー殿下もそのあとを追った。魔術師団員たちも一礼し、二人に続いていく。
私は遠ざかる背中を見送り、重い息を吐いた。
これで終わりではない。
四家が本当に娘たちの罪と向き合うのか、監督しなければならない。奉仕活動が形だけのものにならぬよう、定期的な報告も必要だ。リシア嬢の怪我の経過によっては、処分の見直しもあり得る。
何より、娘たちがなぜあれほど他人を妬み、身分の低い者を傷つけるようになったのか。それを家族が理解しなければ、同じことが繰り返される。
(親が娘を捨てて終わりにすることだけは、許してはならない)
修道院入りも勘当も禁じたのは、そのためだった。
罪を犯した者だけを切り離せば、家は何も学ばない。本人は自らの行いに向き合い、見て見ぬふりをしてきた家族も、自分たちの責任を認めなければならない。
罰を与えるだけなら簡単だ。
だが、国を治める者が考えなければならないのは、その先である。
罪を犯した者を、二度と同じ罪へ戻さないこと。
その家族にも、自分たちの責任を理解させること。
そして、傷つけられた者が安心して暮らせる場所を取り戻すこと。
それが、国の下す処分でなければならない。
「さて……」
私は疲れた額を押さえた。
「次は医師を説得して、あの御二人が病室へ居座るのを認めてもらわねばならぬのか」
先ほどまでの厳しい顔を保つこともできず、私は再び深いため息をついた。




