魔界七夕の日
「・・・・・・この日は―そうかあの日か」
昼休憩、ベリルは2週間後の魔員のスケジュールを端末からチェックしていた。
先月からどうにもそのあたりの有給休暇申請がやたら多かったのだ。
その日は魔界暦で7月7日、年に一度の魔界七夕の日。魔界パチンコや魔界競馬に魔界風俗が一番賑わう日でもある。
織姫と彦星という2人がミルキーウェイを越えて年に1度出会うと言われる日。7が二つ揃うことから特にギャンブルの縁起が良いとされ、他社のダンジョン内でも露骨な催しが行われる場合もある。
「にしてもなぁ。私とリィラ以外ほぼ全員じゃないの」
金が大好きな6層管理のラミアや、2層警備のハイオークのポーロに4層ボスであるタイタンのタイゾウまでもがこの日のために有給申請を取っておいたようだ。
ちなみに入社してまだちょっとのタイゾウも魔界労働基準法により3日の有給申請が可能だった。
ダンジョン経営というのも世間のイベント事に敏感にならねば務まらない。
人間も魔物も今日はツイてるとかツイてないとかを気にするものだから。
冒険者や勇者によっては指定した日にしか入らないというパーティも存在するくらいだ。特に信仰の厚い神職の者やギャンブラーがいるパーティはそういう傾向が強い。
ベリルのダンジョンであるベースメントピットは多少その人間たちを優遇することにしている。というか魔界暦で7月7日に関しては魔員不足もあり相当攻略は簡単だ。
もっともそれに人間たちが気づいているかは怪しいところ。
優遇している日や人間を作るのは単純な理由で、お宝を持って帰って貰わないと評判にならないからだ。
ちなみにベリルは民営のギャンブルに興味はないが、盆休みの後半に行われる魔界甲子園に毎年ボーナスの2割を賭けている。
魔界公営のギャンブルであり、666校からなる高校から優勝する高校を1校選び、金を賭けることができる。
魔界マイナンバーと紐づいており、賭けることができる金額上限もあり、さらに1校以外に賭けることはできない。
代わりに還元率は96%で税金を取られることもないという破格のものだ。
ベリルは働き始めて今まで1度だけ的中したことがある。ド本命だったため倍率は大したことがなかったが、そのときは正月休みに日本という地へ家族旅行をした。




