警戒心の強い勇者②
5層。前回挑戦時は仲間を守るほど余裕がなく、2人が死亡して撤退していた。
今回は物理攻撃には鉄壁の防御魔法がある。
偏屈な伝説の冒険者のオヤジに教わること1年。耐えに耐えた結果、知られているほとんどの魔法は使えるようになったはずだ。
・・・・・・俺の魔力が足りるやつならな。
俺の魔法力は思ったよりチートではないのだった。
6層。見渡す限りの雪原。
聞いていた通りに上の階へ戻ってアイテムを取り出す。
魔法は詠唱できれば使えるらしい。
実は無詠唱魔法はチート能力に含まれるようで、この階層では使えないらしいとのことだった。
現地の白魔法使いの彼はまるで問題ない。俺も1年間修業したおかげで詠唱魔法ができる。
7層。小型のドラゴンが闊歩する地帯だった。
緑や赤のドラゴンを倒しつつ先へと進んでいく。
宝箱には宝石が入っているものがあった。
大粒のこれ1つで3人分の生涯年収くらいだろう。
地図を見ながら階段へ向かうついでに取れる宝石をさらっていく。その数30以上。
壁に埋まっているこのデカいルビー1つでも取れれば小さな国一つくらいになるのだが。
どんな魔法でも掘り出せなかった。専用のチート能力でもないと無理だろう。
8層。夕方の森だ。
だがおそらく敵はいなかった。
ただただ数十キロ歩くだけ。
9層のボスは火の鳥だった。
どこにもそんな情報は出回っていなかった。
だがここでの負けは死を意味する。
たとえ知らない敵でも倒す以外道はなかった。
魔法壁が強い風に吹き飛ばされた。何らかの魔法を打ち消す効果があるようだ。
非常にマズイ、暴風で集中できず、魔法が使いづらい。
火の鳥は大量の羽に火を点けて飛ばしてくる。
回復役の白魔法使いが狙われた。肉が焦げる臭いに包まれる。
服は焦げ、半裸になる白魔法使い。息を深く吸ってしまったらしく、肺までやられて死んだよう。
後でアイテムによる蘇生を試みるが、たぶん厳しい。
突風に乗った火の粉が目に入った。
俺はその場でのたうち回る。
急に痛みがなくなった。右目がまったく見えない。焼けてしまったようだ。
これで決意した。
「転移!!」
不利を悟った俺は火の粉に焼かれた片目のまま、札を握りしめ転移を発動。
なんとか札は炎で焼けずに入口へとワープすることに成功した。
すぐに治癒の魔法を受けられなかったので目はもう治らないだろう。
「・・・・・・」
転移直前にやられた、感覚のない大やけどした足を引きずりながら階段を何とか上る。
片足切断は免れないだろうが、なんとか生き延びた!!
アイテムボックスには7層で手に入れた莫大な価値の宝石がある!!
目と足が無くなろうが、代わりに使える人間をいくらでも雇えるだろう。
今回は俺の勝ちだ。




