死者への弔い
魔界歴で12月。この月にはダンジョン運営で欠かせない行事のある月である。
この土曜日に、ダンジョンの運営は全てサブマスターや夜勤の者が仮眠を挟みながら24時間体制で働くようになる。
なぜか。その理由はあとで話すとして、現在、僕やベリル、そのほか50名ほどが魔界列車に揺られ、1時間ほどが経っている。
「・・・・・・」
対面に座ったベリルはヘッドホンで音楽を聴きながらリラックスしているようだ。
この車内の全員がピッとした清潔感のある姿。普段はパンツ1枚のポーロですら黒いスーツを着ている。
車内ではきちんとマナーを守って魔員の全員が行動している。
仲の良い同士集まって雑談するもの、2体でチェスをするもの、飯を食らうもの。様々だ。
僕は車窓に流れる田舎道を撮影しながら暇をつぶしていた。
そして2時間後。目的地に着いた。
残念ながらここからはカメラ不可なので、僕が見たこと、感じたことなどを記述していきます。
「では、黙とう!」
「・・・・・・」
全員が黙り頭を垂れる。
しばしの静寂。
地球で言えばアジア風のお堂といったところ。
お香の独特の匂いがあたりに漂っている。
なにを行っているのか。死者への黙とうである。
ダンジョン運営というものは多量の死を扱う。
自らの手で人間を殺すものもいる。そして人間に殺されたものの死に対して敬意を払うのだ。
ダンジョンに関わるものは全員がこの祈りをささげることになっている。
たとえどんな魔物でも、そうする知能があるものは全員。もちろん強制参加ではないが。
ここに自分が存在しているのはすべて死んだもののおかげ。そういう気持ちでこれからもダンジョンを動かしていく。
「黙とうを終了してください」
そして、死亡したものの名前が続々と読み上げられる。
今年ベースメントピットで死亡した魔員は20名ほど。
大体が4層の派遣、一撃で死んでしまったり、とっさの脱出に失敗したりだ。
夜勤で気を抜いてダンジョン内に閉じ込められ、やられたものも数名。
ベリルの管理している時間では閉じ込めで亡くなった者はいなかった。
毎回お偉方は遺族への謝罪に奔走している。
人間の名前はないが、ダンジョンで何人が死んだのかはちゃんと数えて、ベリルが報告している。
今年に死んだ人間は216人。これには石化など実質死亡も含まれる。
最後に下級魔物がまとめて供養された。
共同墓に花を手向けていく僕ら。みんなの表情は暗い。
ベリルたちが終わったあとは、サブマスターたち夜勤組がこの儀式を行うので、ベリルたちが仮眠を取りながら翌日夜まで運営を行う。
その後はまた2交代に戻るのだった。
この行事は年末かつ忙しくないときに予約を入れる。
ベリルの会社では、死を扱う部署で必ず行うことになっていた。
理由は簡単。たとえ命の軽いダンジョン運営でも死を軽率に扱わない、命を扱うということを忘れないための儀式だった。
命は等価。生まれる立場が違ったら自分が死ぬ番だったのかもしれないのだ。
『2年後を目安に地球への侵攻作戦が行われるそうです。首相官邸から―』
「え~。日本に手を出すのはやめてよねぇ? ねぇ? 美味しいごはん食べに行きたいし」
今はベースメントピットへ帰る前の食事を摂っている。
木製の田舎食堂で流れるモニターを見ながら。明日までに仕事に戻れれば、好きなことをしてから帰っていいのだ。
ベリルから僕に話が振られる。
「う~ん。僕は詳しくないけど、占領したらその土地とかにダンジョン作る話とかが上のほうから提案されてるんだよね」
「マジで? 地球の神ってけっこう頭固いって聞いてたから許可下りたんだ」




