社内行事 その1 料理大会
魔界もすっかり秋めいてきたこのごろ。
だんだんとジャック・オー・ランタンの男が街を徘徊するようになる季節。
年一の社内行事が開催される。
今年は『料理バトル』。年変わりで様々なことが行われる。
その名前の通り料理の腕前を競うのだ。
参加者は8名。そして5名の審査員の中にベリルが含まれている。
業務の合間を縫って、昼食を抜き、午後から行われるこれは参加者のボーナスがかかった遊びではない対決だった。
かなり広い、撮影対応の料理ホールで、そこを貸し切ってバトルは行われる。
僕は控室の中を撮影。各魔員を映していく。
本格的なコック帽を被っている男性魔人もいる。気合の入りようが違う。
あ、参加者にキララもいた。
「キララさん料理上手いの?」
「こっちに来てから自炊はしますし、食べられるものなら・・・・・・」
「誰か出ないといけないようだったので、指名されちゃいました」
「そっか。頑張ってね!」
そして今回のテーマは、"あなた世代の休日のお昼ご飯"。
前菜、メインとデザートの3種を提出することになる。
もちろん事前の打ち合わせによって、メニューが被ることはない。
そのメインの内訳は肉4、魚3、他1となっていて、どれを使うかは事前にくじ引きしてある。
キララは無難な肉を引き当てていたようで、挽肉をこねている。
ハンバーグかミートローフ、はたまたピーマンの肉詰めといったところだろう。
僕の料理への解像度が低すぎるのはひとまずおいて。
「ポテトサラダにハンバーガー、デザートはミルクシャーベットです!」
年功序列順に料理を審査員へ出していく。キララは一番手だ。
とても無難だが、とてもいいと思われる。僕が審査員なら文句なしで満点だ。
トマトにオニオンにレタスにチーズのハンバーガー。シェイクよりも食べやすいアイスクリームにしたようだ。
テーマの通り、若い彼女はがっつり食べるだろうし合致している。
問題は審査員の年のいったお偉方はダブルのハンバーガーで胸やけしないだろうかという懸念。
1つのメニューをすべて食していてはお腹がいっぱいになってしまうので、4分の1サイズに取り分けられ、希望者は追加で食べることができるルールになっている。
食べ終わって紙ナプキンで口を拭ったベリル。
「とても美味しい。9点で」
たくさんの拍手が上がる。10点満点で9点をつけた。
「惜しいのは、このポテトサラダ。せっかくだからもう少しポテトがゴロゴロとしていても良かったと思うわ」
他のお偉方も頷く。
そんなのは好みの範疇だが、そこも勝負。
結局、キララの点数は50点満点で36点。
だいぶ上の世代に対してはうけが悪かったが、上々の結果だろう。
順次料理が出され、評価されていく。
分厚いステーキは22点。現在最低評価だった。
コック帽を投げ捨てる男性魔人。実はプロだったのだろうか?
ちなみに優勝したのはまさかのベースメントピットから参加、6層管理のラミアのメイだった。43点。
卵という他の食材を引いたメイだったが、高級キャビアを乗せたローストビーフがお偉方の舌と、比較的胃に優しいメニューでお腹を掴み優勝となったのだ。
ずるい。けどルール上は魚卵だろうが卵だ。そういうアイデアも込みでの高評価。
優勝した彼女には6か月分の賞与が追加で支給される。
もちろん参加者にはそこそこの手当が支給される。こちらは商品券をその場で貰える。
「はいキララ。美味しかったわよ!」
ベリルはキララへ封筒に入った商品券を渡す。魔界通販で何でも買える万能通貨だ。
「じゃあもう一点くれればよかったじゃないですか!」
「だってポテト感があまりなかったもの。そこは嘘をつけないわ」
「それなら今度はベリルさんが作ってみてください!」
「そうだねぇ。僕も食べてみたいよベリルの料理」
「・・・・・・死ぬわよ? 美味しすぎて」
「絶対嘘でしょ。毎日外食じゃないの」
「バレないようにプロのとすり替えてやるから」
というようなどうでもいい雑談をして、キララと別れ、ダンジョンへ戻った僕たちだった。




