珍しい現象
「う~ん、なんか不死身の人間が混ざっていたゾウ」
ルピンは人間をお姫様だっこして連れて帰ってきた。
頭と胸に2発分ずつ傷跡がある。とどめを刺すことを試しはしたようだ。しかし傷は塞がり、胸は鼓動をうっているようだ。
意識こそないが、しっかり生存しているっぽい。
「・・・・・・どうするベリル?」
「こんなの初めてだわ。どうする? いったん医者に連れて行きましょうか」
「目が覚めたかしら。人間さん」
「ここは・・・・・・」
「魔界の病院よ」
「どうして・・・・・・わたし、銃で撃たれて死んだんじゃ―」
「あなた、なかなか死なないか、不死身の体質かもしれないわ」
「魔界へようこそ。こちらで生きていくなら歓迎するわ」
「というか生きていくなら拒否権は無いわ。魔界のことを知っている人間は外にほいほい出すわけにはいかないの」
「・・・・・・あなたは誰? 何者? エルフ?」
「いいえ。魔人のベリル。あなたの攻略しようとしていたダンジョンの主。ダンジョンマスターのベリルよ」
「!? 狙撃していたのは? あなたじゃないの?」
「ああ、あれは同僚のルピンよ」
「同僚?」
「その辺の説明は後でするわ。どう? 生きていく? それとも不死身を消して死を選ぶ?」
「わたしはこの世界のことを知ってみたいです!! 生きていきます、ここで!!」
「じゃあここにサインをちょうだい。別にへんな契約とかじゃないから安心して」
「ボールペン?」
「ああ、ほとんど人間界の最先端と変わらないわよ魔界は」
サラサラとペンでサインを書いた人間の彼女。
ユイナというようだ。
「魔法と科学で発展してるから。よかったわね~ユイナ。トイレとかも快適よ。ただ―」
「不死の者に子供はできないわ。忘れないでおいて」
「―おかしいと思ってたの。こんな年齢でまだ・・・・・・」
「あの世界で相談するところなんてないものね」
「ところで、田舎の人間学校に行くか、比較的言葉が通じる私たちのところで働くかなんだけど」
「・・・・・・もしかして言語が全然違うの?」
「そうね。共通語はモンスター語と呼ばれるものよ」
「大学出身で言語を学んでいるような者じゃないと日本語はできないわ。だから魔界生まれの魔法使いの子供とかが通うような学校がある」
「どちらを選んでもいいわ。それほど生活に差はないでしょう」
「覚えておいて欲しいのは、いずれにしても、力のない人間は最底辺よ。理不尽なこともあると思う」
「わたし、魔界のことを覚えてから、あなたの元で色々してみたい!」
「じゃあ田舎で学んできなさい。数日以内に話せる役所のやつが来るでしょう。戸籍をとって、魔界の一員よ」
「それまではゆっくり寝てるといいわ。あ、検査でそれどころではないか」
「アンタ、顔見せしておく?」
僕は透明化を解いて、ベッドの横にカメラを構えた状態で現れた。
「!! いつからそこに!?」
「私が入ってきたときからずっといたわよ? 上司のガノン。今はただのカメラマンだけど」
「よろしくね。僕は日本に詳しいから困ったら色々相談に乗れるよ」
「眼鏡、壊れちゃったけど大丈夫?」
「えっと、なんか視力が良くなってるみたいで。平気です。あれ? 耳も治ってる」
「死ぬようなことがあったから、治癒が強くかかったのかな? まあよかったね」
「にしてもこの瓶底眼鏡っていうの? 本当にあの世界不便よねぇ」
「それもすごく高くて。プラスチックとかが無いから」
「ホント、力をもらっても生きていける気がしないわ。虫もいっぱい、病気も蔓延、治安も最悪。ウォシュレットがないと無理!」
「じゃあごめんなさい。時間が来たから私たちは戻るわ。ここに連絡先のメモを置いておくから端末が支給されたら連絡ちょうだいね」
手を振って僕たちは彼女と別れた。
「上から許可が出るとは思わなかったわ。外務官もずいぶんあっさり認めたし、もしかしたら上では周知のことだったのかも」
「そういう人間がベースメントピットに入ってくるのがわかっていたのか・・・・・・」
「まあ僕たちは現場の仕事をするだけだろう? ユイナさんの人生は好きにしてもらおう」
「そうね」




