え? マジ!?
翌日。朝の作業を済ませて、パソコンルーム。
机に置いた端末が鳴る。サブマスターから通話連絡だ。
「え? 親方のお友達がちょっと前に入ったって? そういえばそんな話をだいぶ前に―」
「ちょっと待って、この魔女じゃないわよね・・・・・・」
「マジ!? 大変だわ!! 財界にパイプがある!?」
「げ!! 3層に入りそう!?」
「ワイアット! ストップ! レブナントを回収して!!」
『はい? もう手がつけられませんぞう。暴走状態で放ってしまったので。一週間経って朽ちるまで―』
「やべー。今、私が入ったらダメよね?」
ベリルはワイアットとの通話をブチ切り。
聞いている限り、魔女はやっつけてはいけない人間のようだ。
僕に助けを求めてくるが、僕にも規定上守らねばならない一線がある。
冒険者や勇者に対して最終階層以外でダンジョンマスターは姿を見せてはならない。
この前の救出の一件だってギリギリすぎたのだ。あれで見つかっていたら厳しいペナルティが課される。
まあポーロ達がもみ消せばセーフになる可能性はあるが、カメラを扱うハイオーク全員の口を封じるのは難しいだろう。
ちなみに透明化の魔法は行動が著しく制限されるため、戦闘には向いていない。
そして、表向きは勇者扱いの魔女に姿をさらすこともできない。
「ダメです」
「じゃあアンタが止めてきてくんない?」
「無理です」
天を仰ぎ始めたベリル。
「やっちゃったら減給で済むか? 左遷? 解雇? でも何も連絡してこなかったあっちも悪いし・・・・・・」
「責任取ってアンタが養って?」
ベリルは混乱しておかしなことを言い始めた。
「いや、僕は今回何も口出ししてなくない?」
「ああ。その言葉で冷静になったわ。親方に土下座してこないと」
ベリルはフラフラと出て行こうとするので止めた。
「ちょっと待とうよ。まだヤバくなってないし。ユーベルトとかタイゾウ君とかハイオークのみんなとかがいるでしょ。特別手当でもだしてさ」
「いや、今までの勇者どものハイブリッドとか普通の魔員で倒すの無理でしょ」
「それはそうだけども」
「はい、終わった~。じゃあ飲みに付き合ってくれてありがとう。キララにもよろしくね」
「いやいやいや。まだあきらめちゃダメでしょ。2層で見守ろう」
「不殺の誓いの、あのおばさ―」
「お、ね、え、さ、ん、ね!!」
「痛い! 痛い! 痛いですって!! 昨日と態度違いすぎ!?」
ベリルはポーロの発言にアイアンクローで答えていた。
ポーロにことの重大さを説明したベリル。
「あなたたちハイオーク、あのレブナント今からどうにかできたりしない?」
「―もしかしてベリルさま」
「そうよ!! 私だってミスくらいするわよ!! 確認ミス!! あの人に私のクビも掛かってるかもしれないのよ!!」
「・・・・・・行きたいのはやまやまですが、意外と大丈夫かと」
「へ? マジで!?」
「詳細をアナライズした結果、彼女は黄金級の冒険者証を持っていた過去がありました」
「いつ、どこで?」
「古すぎて詳細不明でしたが、地球でいうと1700年頃かと」
「は~伝説級じゃないの」
「だから案外あれくらいなら倒せちゃうかもですよ」
レブナント。
死者が強い怨念などで蘇ったものだ。
勇者の肉体をつぎはぎしてワイアットが合成レブナントを作ったようだ。
見た目は180cmくらいの大柄男性。いたるところに縫合の跡がある。股間はモザイクをかけなくていいように切除してもらった。
いろんな人間の怨念が入っているから、ごちゃごちゃになって見た相手を手あたり次第襲うだろうということだ。
勇者たちの強靭な肉体、魔法耐性、知恵は、まあ・・・・・・
ベリルのクビがかかってるんだ! 負けてくれレブナント!!
そして今月中旬から親方が作った3層に変更している。
転移の魔法の応用で、ダンジョン層をまるっと移動させて入れ替えた。
ということで3層は墓場だ。いろんなテイストの墓が並んでいる。
灯りは変わらず紫の炎を街灯にしている。破壊不能の街灯。
十字架だったり、なにやら人形のようなものが飾ってあったり、漢字が彫ってあったり。
そこの下からアンデッドが登場! となるのだが、今回はゴーストの諸君と合成レブナントだけだ。
いちいち墓を元通りにするのが面倒になりそうだと親方は言っていたが、どうせワイアットがやるからとベリルは気にしなかった。
「そうだ!! ゴーストに録音機でも持たせて―」
「ベリル、もうそういうのはあきらめよう。僕も謝りに行くから」
ゴーストのみんなは現世に言葉などを伝えることができない。
うっすらと目視でき、ひっそりと精気と魔力を吸い取る。いっぱい集まればポルターガイスト程度は起こせる。
ワイアットの命令を聞き、冒険者のリソースを奪うのだ。
「―頼む! 本気で戦ってちょうだい!!」
まずお付きの女の子がサイクロンの魔法でレブナントを上空へと吹き飛ばした。
そしてレブナントをマジックソードで真っ二つ。
しかし、その程度ではまるで効いていない。すぐに再生して走り出した。
レブナントは右手に癒着したロングソードを振るう。これで紛失したりしない。わざわざ見た目も怖い感じにこだわったという。
魔女のお姉さんが唱えたアイシクルランスで胴部を貫かれたが、すぐに自動回復が働いて治った。
これを終わらせるには、彼らの怨念があきらめる限界まで肉体を破壊するしかない。
このへんは全てが終わってからワイアットに聞いた。
「近接戦闘!? それはヤバイでしょ!!」
杖を魔法で鎌にして武器破壊を狙った魔女のお姉さんだったが、残念ながら勇者の持つ伝説武器。そう簡単には無力化できなくなっている。
掴みを回避するのに、二段ジャンプの要領で空中宙返りをしたお姉さん。
「あ、ヤバイかも―」
神速の二段突きを繰り出したレブナント。ギリギリ魔人動体視力で見切れるレベルだ。
「おお!! 幻影だわ!!」
魔女はもうそこにはいなかった。影は胸を貫かれてかき消えた。
そして足止め魔法と火炎魔法でレブナントを焼き切った。
灰と化したレブナント。
ワイアットの1時間の成果は魔女のお姉さんを10分足らず遊ばせただけだった。
「はぇ~、すげぇ~。絶対私が戦わなくて助かったやつだ~」
そして相変わらず触手プールも存在する。
プールを見た魔女たちは道を引き返し始めた。
それを見て胸をなでおろした僕たちは3層のワイアットに話を聞きに行った。
「そんなことでしたらわたくしが行ったのに。ゾンビアタックで同士討ち。別に死にませんから。骨を拾ってくだされば。ハッハー↑」
「・・・・・・また一週間休んでいい?」
「ダメです」
この一連のお話のうまい見せ方が思いつきませんでした。




