魔女と2人
『ビー、ビー、ビー。警告! 警告! チート使用者が進入しました!!』
「来たわね―」
午前12時。今お昼ご飯に向かおうとしたところ。
緊急をつげるブザーが鳴る。宇宙船内部のような、各魔員用通路に設置された青いパトランプが一斉に回りだす。
ベリルはロッカーからスーツを取り出し、更衣室へと消えた。
戻ってくると、ベレー帽に深紅のスーツに身を包んだベリルになっていた。
「状況確認!」
『魔法使いが2名。どちらも女性。少年が1名。魔法使い・・・・・・リーダーっぽいのは魔女って感じの若作りしたやつです』
「それならドローンがバレて壊されるの勿体ないから私がアナライズしに行くわ」
『ラジャー』
ベリルはいつもの通りにエレベーターで5層へ。
休憩室の鍵を4つ開けて、6層のアンチチートだけオンにした。
その足で2層の監視室へ。
「―はい、動画が撮れたっと。ノーパソでいいか」
撮ったデータをノートパソコンで簡易アナライズにかける。
「おおう。こいつ、見た目よりけっこうなおばさんよ? なんでそんな年でダンジョンに? って感じだわ」
「逆にお付きの2人は若すぎるわね。片方は成人直後くらいだし、少年は10歳くらいじゃないの」
「どういう関係なのかしらね? そして魔力が―すごいあるのね。これに反応したんだわ」
「普通にプチメテオくらいは使えて、即死のデスまで扱えそうね」
「面倒ね~。タイゾウもまた避難だわ。ユーベルトって即死はどうなんだろう?」
「確かこの前の健康診断で耐性が無くなってるって聞いたよ。年のせいで」
「じゃあどうしましょうかね~。9層か最悪私が出るかも」
「9層に呼ぶ低級神って誰なのさ?」
「ユーベルトの後輩に朱雀っていうのがいて、そいつならいつでも呼べるって」
「ふぅん。そんな便利な方がいるんだ」
「・・・・・・ハラスメントで仕事クビになって、離婚して暇になったんだって」
「―そうなんだ」
なんだか悲しい境遇の方が仲間入り? したようだ。
僕が知らない間に幹部チャットでもしていたのだろう。
そしてベリルの端末に通話が入った。
通知を見て、スピーカーにしてくれる。
『ベリルさま、今回はわたくしめにおまかせを』
「お、急にどうしたのワイアット?」
『3層が全然活躍していないので、そろそろ日の目をみていいころかと。まあ日の目はまずいんですが。ハッハー↑』
「ふふ、面白い! いいわよ~。何か私たちにやってほしいこととかあるのかしら?」
『バジリスクではつまらないので、今までの勇者どもの死体から最強の合成レブナントでも作ろうかと』
「・・・・・・すぐにできるの?」
『多少不安定なものであればすぐに作れますぞ! 土葬になっている連中を掘り出す許可をいただければ、わずか1時間ちょっとで』
「へ~。じゃあいいわよ」
3層管理者、リッチのワイアット。伸ばし棒はつけたりつけなかったり。どちらでもいいらしい。
彼は成金趣味だ。リッチという種族は全員そんな感じ。
元は人間で、だいたい何かしらの世の理から外れた行為をして死ななくなっている。
彼のそれが何かはわからないが、とにかく不死身。
だから僕のような若輩者上司にはお茶目なこともしてくる。
彼はゴーストや他の下級アンデッドたちに命令できる資格を持っている。カリスマとかではない。
その国家資格は低知能でもわかるようにキンキラ金なのだ。見たら偉いのがすぐにわかる。
彼に合成レブナントを任せ、僕たちは魔女をまったり観察する。
9層までの魔員がなんとなく揃っている現在の環境で焦ることはほとんどない。
デスの魔法が使える以上、無理な魔員を出す必要もない。3層、5層、6層あたりで苦戦してもらえれば御の字だ。
1層の魔女たちはまるでピクニックにでも来たかのように、休み休み歩を進めていく。
道中の魔物は1体も殺さずにだ。
不殺の誓いでも立てているのだろうか?
僕たちは魔界から出前のピザを取って、監視室で様子を見ながら食べていた。
そのピザの数、大小合わせて10枚。ハイオークのみんなはLLサイズを1枚くらいペロリだから。炭酸にお茶にポテトもある。
「このカレーコーンピザ美味いわね」
「だろう?」
「こっちのバジルのも美味いですぞ」
魔女たちは昼食時に入ってきたので、僕の奢りで監視室のみんなでワイワイとピザをシェアして食べながら監視中。
どうせ給料を使う時間はあまりないから、こういう時にみんなで楽しめるのがいい。
2層の途中でお付きの女の子が持っていた荷物からテントが出てきた。
水辺で眠るようだ。
ということでベリルの退勤時間。
問題があればサブマスターか翌日にベリルが対応する。




