6層ボス、黒狼
第6層ボス、黒狼。
もとは高名なデュラハンを乗せていたのだが、ちょっと前にチート勇者に浄化されてしまったので、彼だけが残った。
寒い地方で生きている超大型の狼で、その体長は5mもある。
1層管理者兼牧場管理者のリィラになついており、彼女の命令にはよく従う。
簡単な言葉は理解し、最近はベリルや6層管理者のラミアのメイにキララの言うことも聞くようになった。女性が好きなのだろうか?
僕のことは別に邪見にも扱われないが、あまり興味を示してくれない。残念。
やはり、彼の強みと言えばスピードとパワーだろう。
敵が倒れるまで粘り強くヒットアンドアウェイを繰り返すので、防戦一方の敵と相性が良い。
逆に高火力かつ誘導する魔法にきわめて弱いという弱点もある。
と、いうことで、リィラの発案で、敵の魔法に反応し分身を生み出すデコイフレアの魔法が10回発動する首輪をつけたのだった。
じゃれているだけに見えても、人間には十分脅威である。
リィラがつがいを見つけるまでは、しばらくこのベースメントピットで戦ってもらう予定だ。
黒狼にはちゃんとご飯をくれる魔人と倒すべき普通の人間の区別はついている。賢い。
端末のボタン1つで黒狼を檻から放って、結界を張った。
「お、いいぞ! やれやれ~!」
「危なくなったらすぐに回収してあげるからね~。頑張れ~」
かわいがりモードに入った無邪気なベリル。この前人間に恨みがどうこう言っていたのが嘘のようだ。
そのあたりは魔界の出身。ある程度血気盛んだ。
噛み付きで1人死亡。
ちょっとグロテスクなものが映っているのでモザイク。
勇者たちは予想通りに魔法を使ったようだ。
黒狼の分身が現れ、全員うろたえている。
まあ分身は吠える動作程度しか動かないので魔法を引き付ける用だ。
もし、魔法を黒狼に対して当てるのならば、10回も分身を撃破する必要があるのだ。
8回魔法を使う間に勇者たちは壊滅。死体を食っている黒狼。
「あちゃあ。お腹壊さないといいけど~」
「よ~しよし、血で汚れちゃったからお風呂に入ろうか」
ベリルは黒狼を連れて荷物用大型エレベーターに乗せて、リィラのところへ。
魔光石と特大エアコンで快適な牧場。
「そいつといい子にして待ってるのよ~」
大きな柵に囲われた草原のところに黒狼を待てさせて、ベリルはリィラを呼びに行った。
・・・・・・「お手」、「おかわり」
やってくれない。ちょっと悲しい悔しい。やはり男ではだめなのか? ベリルも僕の方が下だと思ってるし。
僕は涼しい草原で大の字に寝転んで空を見る。地上を再現した雲もある昼間の空。
「・・・・・・臭い」
何かの糞が近くに転がっていた。放牧していた動物の糞だろう。
「はい、アンタはパソコンルームにゴーよ」
黒狼とベリルとリィラのお風呂シーンは許されなかった。視聴者のみんな、残念。
ということで映像はここまで。
黒狼を洗ってパソコンルームに戻ってきたベリル。
髪を直しながら僕の見ているパソコンの横に来た。
僕は魔界通販のサイトで黒狼につける別の首輪を調べていた。
「・・・・・・やっぱりちょっと強すぎたかしら」
「そう思ったから別の首輪を探してる」
「チート封じてやればいい勝負かと思ったけど一方的だったからね~」
「これなんかどうだい?」
「あ、6層の死体片付けなきゃ」
「―僕も行くよ」
パソコンをスリープにしてカメラをつけた。
エレベーターと窓を使って6層の森へ。
一応両手を合わせて合掌するベリル。
ボロボロになった防具とか骨を軍手をつけた手で拾って、台車の木箱に入れていく。
大体食べられる部位は黒狼が食べてしまっていた。
回収できるものはきちんと専用墓地へと埋葬する。




