4層管理者、タイゾウ
ということで、4層。現在は2層までしか攻略者はいない。
休憩室ではなく、タイゾウの部屋。管理者用のやつ。
まずノック。コンコンコン。
『はい! あいてるっす!』
ベリルと僕は部屋に入る。
お、壁に有名な映画のピンナップが貼ってある。
筋肉ムキムキ(魔界基準でも)のオーガの大男が世界樹の木を彼女を助けるために引っこ抜く名シーン。
彼は魔界で有名な役者で、もともとプロレスラーだった。
おそらくタイゾウの憧れの魔物なのだろう。魔物ならみんな強いものに憧れるのは当然だ!
「タイゾウ、ちょっといいかしら」
「はい、大丈夫っす」
「最近、戦いのほうはどうかしら? 敵が弱いと感じてる?」
「まあそうっすね。30%から40%で戦ってるっす」
「・・・・・・あなた、相当強いのね」
「あざっす!」
「それで、本題なんだけれど、どうしたら冒険者に負けられるかしら」
「!? まさか八百長しろっていうんすか!?」
「そのまさかは―やっぱイヤよね?」
「絶対イヤっす。ベリルさんの命令でも、それをするくらいならここを辞めるっす」
タイタンや巨人族などは正々堂々、勝利を貴ぶ種族。
手を抜くことはあっても自分から敗北はしない。彼の反応は当然だ。
「わかった! じゃあ正直に話すから相談に乗ってちょうだい」
「いいすよ」
「あんたが強すぎて、下の階層に普通の冒険者連中が行けなくて評判が落ちてる」
「う・・・・・・」
タイゾウは痛いところを突かれたという苦い顔になった。
「負けられないというのならば、代替案をちょうだい」
「その、一個聞いていいすか?」
「いいわよ。なんでも聞いてちょうだい」
「誰が文句言ってるんすか?」
「ああ、そうだったわね。普通は知らないんだった」
「あなたに殺された、死んだやつらの魂ってやつが、よ」
「どこで?」
「詳しくは知らないわ。でもあるの」
「ほんとうっすか~?」
「タイゾウ君。ベリルの上司である僕があるって断言するよ。評判はダンジョンにおいて不可欠だ」
「・・・・・・すまねぇっす」
「なら例えばっすけど、オレ以外、たぶんタイタンとか巨人じゃないやつならそういうのもできるから、他の魔員をたまに使うとか」
「悪くないわ。でもそれをするとあの部屋をあなた以外が使うときがあるってことよね?」
「そうっすね」
「それだと一応、層の管理者は各1体って決まってるから、あなたの上か下につくことになるけど」
「別にいいっすよ。どちらでも」
「あなた、派遣の方々以外に部下がいたことは?」
「ないっす」
「指導はできそうかしら?」
「ちょっと自信ないっすね。それなら上の方のがいいと思うっす」
しばらくの間ののち。
ベリルが口を開いた。
「・・・・・・わかった。その方向で探しておく。もし決まったら早めに連絡入れるわ」
「それまでは普通に戦っていい。言ったからにはそうそう負けるんじゃあないわよ」
「―ありがとうございます」
「じゃあ、失礼したわ」
11層に下るエレベーターの中、僕はベリルに聞いてみる。
「誰か当てはあるのかな?」
「ないわよ。これから探す」
「社内によさそうな魔員がいるかどうか探っておこうかい?」
「・・・・・・頼むわ」
「了解」
僕らはそのあとパソコンとにらめっこして、タイゾウの代わりの魔員を探して終業時刻になった。
まだこの問題解決にはしばらくかかりそうだ。




