ダンジョンマスター
面白かったら評価をお願いします!
「さあ、ごはんの時間だよ~。いっぱいお食べ~」
現在朝の6時。カートに血の滴る生肉を満載し、それを餌皿に取り分けていく。
5mを超える黒い大きい狼に餌をやる、オレンジの腕章を左腕に巻いている人。
赤い髪をサイドテールにまとめ、ラフなシャツと長ズボン姿の成魔人女性。彼女の名前はベリル。
ダンジョンマスター・ベリル。
彼女の仕事は冒険者たちに夢と希望と絶望を与える仕事だ。
今、彼女がいるのはダンジョンの6階層目。10階層あるうちのちょうど真ん中あたりだ。
現在、一番進んでいたパーティは4階層で全滅してしまったため、閉じられた部屋にいる6階層のボスである黒狼に食料が必要となったわけだった。
「おトイレも綺麗にしたし、次!」
「え~と次は、4階層のジャイアントモスキートに人間の血液っと」
端末を操作しながら次にやる仕事を口に出して確認するベリル。仕事熱心でえらい。
背中に紫の翼を生やして、ビューンと飛び上の4階層へ。休憩室にあった500mlボトルを1本拝借した。
「あ、いたいた、ホムくん血ィちょうだい!」
うろついていた顔のない人型のモンスター、その腕を手刀でぶった切り、ホムンクルスからボトルに採血した。
「はいオッケー、ありがと~」
ホムンクルスの腕に魔法をかけ、治す。元通りになった。
ホムンクルスは治った腕をふりふりしてベリルに挨拶した。かわいい。
「はい到着。にしても増えたなぁ」
木の籠にいっぱい入ったジャイアントモスキート。その大きさは手のひら大。
ボトルの中から血液を皿に盛り付け、小窓を開けて給餌。
最近の冒険者たちは4層にもたどり着けない軟弱者ばかりだったのでジャイアントモスキートは増えるばかりだった。
「次、3層の触手畑が燃やされたと」
3階層はうねうねとした触手が配置されたプールがある。
当然、ここまできた男用のサービスである。
女冒険者の薄着姿が見られるし、うまくやれば触手で・・・・・・といった趣旨らしい。
「え~と、たしか・・・・・・これでつついて産卵、混ぜて繁殖と」
ベリルが残った触手に休憩室のロッカー横に立てかけられていた特殊な木の棒でつついて、出てきた種子に倍速の魔法をかけて増やしていく。
わずか30分ほどで燃やされる前の状態へと元通りになった。
「ひとまず休憩だ~。戻ってお昼を食べて、午後は―タイタンさんの面接ね」
端末を指さし確認するベリル。現在時刻は午前11時40分。
11階層へと魔導エレベーターで戻り、魔界ゲートをくぐって目の前の食堂でコロッケ蕎麦を食べるベリル。
僕はカツ丼をいただきました。ごちそうさま。
休憩中に生演奏の魔界ジャズを聴いたベリルの午後。
4階層でボスを務めていたタイタンが冒険者と相打ちし、長期入院になってしまったので欠員補充が必要だった。
姿消しの魔法を使ってベリルの隣に座る。面接するタイタンに僕の存在で圧迫感を与えないようにだ。
「よろしくお願いします!」
「はい、ご応募ありがとうございます。どうぞ座ってください! タイゾウさん、前職は―ああ、他社さまですね。転職の理由はやはり待遇と。志望動機は、やっぱりご家族へ仕送りしたい、とかですか?」
「はい! 母ちゃんと兄弟を楽させてやりたいです!」
「何かアピールしておきたいこととかあります?」
「オレ、全魔界武闘大会で予選2回戦まで行ったことあります! 体力に自信あるんで20年でも30年でも頑張れます!」
本来、いつもなら4階層のボスは半年ずつ交代なのだが人手不足でそうもいってられず、今回の募集は長期勤務可能な者を考えていた。
「よし! 採用! いつから働けますか?」
汎用モンスター語で書かれた履歴書にハンコを押して、満面の笑みを浮かべるベリル。
「ありがとうございます! いつからでも大丈夫です! オレ一生懸命頑張ります!」
「じゃあ明日から勤務してもらうので、今日は一日ゆっくりしてもらって。では明日の午前8時に11層正門前で」
「わかりました! 失礼いたします!!」
3mの体をくの字にぴっちりお辞儀をして、礼儀正しく部屋を後にしたタイゾウ。
ベリルは面接部屋の鍵を掛け、書類仕事に戻る。
明日タイゾウに渡す書類を作らなければならないのだ。
「うがぁ~つっかれたあ~」
18時ちょっとすぎ、勤務時間終了。次の交代先であるサブマスターへ引継ぎの日誌を入力し、今日のベリルの業務は終了。
ここで業務密着取材42日目の終了です。
魔界ゲートをくぐり最寄りの居酒屋へ。
「ここからはオフシーンとなります」
「今日も私の業務へ密着おつかれさまでした。かんぱ~い」
「かんぱ~い」
ダンジョンに入れるのは1日に1パーティのみ。これは不文律である。
ダンジョン内には最大で7パーティが滞在でき、攻略できる。
中に7パーティ以上が入っている場合、入口のドアが開かない。
ちなみに、今だかつて冒険者や勇者というパーティがこのベースメントピット最奥10階層の地を踏んだことはない。
もちろん従業員用の11階層の存在などは知るわけもない。
階層ごとに生態系があり、生き物が勝手に生息している―なんていうことはない。
ベリルのようなダンジョンマスターらが管理の元、運営されているのだ。
例えば1階層のゴブリンやコボルドもきちんと魔界の養殖場から買って放流している。
少し値の張るゴブリンシャーマンなども血統書付きのものをブリーダーから買っている。もぐりの業者から買ったものとではやはりイキがちがう。
そこがダンジョンの歯ごたえに直結するし、妥協できないところだった。
そして、冒険者が1階層で詰まることが多ければ放流する量を調節し、2階層目へ9割ほどが向えるようになるよう日々管理している。
2階層の水辺では食料が枯渇して詰まらないように野生生物を増やし、高速化の魔法でちょうどいい肉質に。
これは冒険者から、
『マーマンとかゴブリンなんて食えねぇよ。気持ち悪いし臭いし』
という意見を多数受けて改善したものだった。
ここで食料を調達し、次の3階層へ向かう冒険者。
3階層は人工的に作られたような遺物がテーマとなっている。
主なモンスターはスケルトンとかゴーストとかグールとか。
そこの4層へ下るための場所に、魔法禁止で突破しなければならない触手入りのプールを泳ぐ必要がある。
4層は人型モンスターの階層。主にピクシーやインプ、ホムンクルスなど。
5層は魔導機械の階層。
6層は雪原。
7層はドラゴンの住む山。火山もあるよ。
8層は悪魔の潜む階層。
9層は天使や低級神の階層。
10層は―まだ秘密かな。
腕試しでダンジョンへ入る冒険者は多数いる。
大体が6層くらいで肉体や精神が限界をむかえ、引き返すことになる。
前回入ってきた冒険者たちはけっこう前向きな思考で奥へ奥へと進み、4層へとたどり着き、タイタンと戦い全滅。
いままででの冒険者及び勇者パーティの最高到達地点は8層。
とりあえずついている魔という文字にツッコんだり、にやりとしてしまったらアナタの負けです。
何かコメントしたり宣伝しておいてください。




