新しい国
誤字報告、感想をありがとうございます!
アールスハインが王様になるための準備に忙しい中、久々に休みが取れたので、ユーグラムとディーグリーも休みをあわせてダンジョンに来てる。
王様としての御披露目も兼ねた大規模な式典とパーティーは一ヶ月後。
ダンジョンにはポツポツと魔物も湧いてきて、ダンジョン周辺には幾つかの新しい宿と武器屋が出来た。
「あー、とうとうハインも王様か~」
「そう言うタスクは近衛隊長でしょ~?大出世じゃん?」
「まあ、他国の隊長になるとは思ってもいなかったけどよ!」
「まあそうだろ~ね~」
「ですが信頼の置ける者が近くに居るのは安心でしょう?」
「ああ、心強いよ」
アールスハインの言葉に助が照れてる。
「俺もね、この国の商売を任される事になったよ~」
「ん?行商は止めるのか?」
「いや、あれは趣味だから続けるけど、この国って王様に服従して魔道具つけないと商売させて貰えない国だったからさ、ラバー商会の店が全然無いんだよ~。だからここぞとばかりに販路を拡げてこい!って兄ちゃんに命令されちゃったわけ~」
「それはそれで大変そうだな?」
「大変だろうけど、楽しそうでもあるよね~?」
ニシシッと笑うディーグリーは本当に楽しそう。
「実は私もこの国の大神官になりました」
「は?まだ見習いじゃなかったっけ?」
「それが、カッパ族の子玉の功績が認められてしまって、一足飛びに大神官に」
「大出世じゃ~ん!」
「子玉の事は、半分以上がケータちゃんの功績なんですがね?」
「まあ良いじゃん?その後のカッパ族との契約を取ってきたのはユーグなんだし!」
「納得しても良いものでしょうか?」
「それはこれからの働きで返せば良いんじゃないか?」
「そうそう!前向きにやっていこ~!」
「だな~!俺等もまだまだ失敗を恐れる歳じゃね~だろ!色々試して最善を考えようぜ~!」
「良いね~!格好いいぞタスク!」
「ナハハハハハハ」
皆が進路を発表した後で、視線が俺に向く。
「ケータは特に。やりたい事やってりゅ」
「王様を助けてやんね~の?」
「ん~?ケータてちゅだったら、ハインがこまりゅでしょ?」
「あーまぁな。聖獣に助けられたって噂になれば、ハインの能力を疑われるし、あの爺さんの時みたいに恐れられて逆らう奴が居なくなるかもな?」
「それはダメでしょ?」
「ああ駄目だな」
「ケータはケータで居てくれたら良いだろ」
「うん、そのちゅもり~」
「…………………あー、ケータちゃんが聖獣ってのはばらしても良かったのかな?」
「そうだろうとは思ってましたが、明言はされてませんでしたよね?」
「ああ、今更だが二人にならばれても問題ないだろう」
「も~知ってる思ってた~」
「俺も、とっくにばれてると思ってた」
「いやまあ、他の妖精や精霊や聖獣とか見た後だから、聖獣だろうとは思ってたけど~、ずっと秘密にしとくのかと思ってた~」
「ええ。直接には言われていませんし、他の者に紹介する時は妖精と言われてましたし。バレないように配慮しているのだろうと」
「吹聴する気はないが、妖精でも聖獣でもケータはケータだからな。それを知っている二人になら構わないだろう?」
「ああ、物凄く納得した!確かにケータちゃんはケータちゃんだね~」
「そうですね。ケータちゃんはケータちゃんですからね」
なんか納得された。
随分前から聖獣だとばれてたっぽいし、今更だよね!
ゆっくりとダンジョンを探索して休暇を楽しんだら、またそれぞれに忙しい日々に戻っていく。
アールスハインには国内外から大量の釣書が送られてきてた。
今度のパーティーにも大勢の嫁候補が参加するらしく、目を通すだけでうんざりしてた。
リュグナトフ国からの釣書は、半分以上が写真付きで、国の発展ぶりが感じられる。
他の国の釣書は姿絵とかが送られてきたんだけど、あれ絶対美化され過ぎてるよね?人間のウエストがあんなに細かったら内臓無いよね?
あとやたらおっぱいが強調されてるのも多い。
アールスハインはおっぱい星人と思われてるのだろうか?実際はどうなんだろうか?
あまり好みのタイプとか話したことはなかったね?
絵姿を見て助は爆笑してたけど。
アールスハインも微妙な顔をしてたけど。
パーティーまでの間、暇な俺はお城に作られた託児所で子供達とワチャワチャしてた。
シェルの子供は五歳と二歳と一歳の三人も居て、シェルにも旦那さんにもどっちにも似てた。
五歳児に微妙に身長が負けてるのが納得いかないけど!
シェルの旦那さんの副将軍さんは、この国の新しい将軍になった。
元々この国の将軍だった人と対戦して呆気なく勝っちゃったからね。
魔法庁、この国では魔法局って呼ばれてたけど、そこの長官はなんと!リュグナトフ国の元副長官だった、怪しい男ジャンディスが押し掛けてきてちゃっかり就任してた。
長年魔力を奪われ続けてたこの国の魔法使い達は、自分には大した魔力がないのだと洗脳されて、必要以上に魔力を奪われてた。
でも魔道具の扱いはリュグナトフ国以上に堪能なので、そのまま雇用し続けられる。
本来の魔力が戻ったので、改めて訓練もされるらしいしね。
文官関係は、書式がリュグナトフ式に変わったくらいで、混乱は少なかった。
指示があれば従順に従うのが生き残る術と洗脳されてる人達は、驚くほどすんなりと上に立った人の言葉に従う。
リュグナトフから移住してきた文官さん達が、ちょっと気味悪がっていた。
下働きの人達は普通に仕事してるし、大臣達も命令をきく人達ばかりなので、混乱は少ない。
アールスハインの国王就任はすんなりと認められつつある。
まあ、今度のパーティーでの、地方貴族達の態度も見ないと分からないけどね。
子供達にせがまれて外遊びをしたり、絵本の読み聞かせをしたり、うっかり一緒に昼寝したりしながら俺はのんびりと過ごした。
元ササナスラ王国は王族が多いわりに貴族の人数は少ない。
それは元国王が自分の権力を誇示するためであり、国の半分は王領地として各王族に管理させていた事からも窺える。
国の面積で言えばアマテ国の三倍はあるのに、貴族の数は倍にも満たない。
そんな国中の全貴族が集まるパーティー。
午前中は新国王の就任式が国で一番大きな教会で、外国の来賓の方々が見守る中、 教皇様が自らこの国に来てくれて、リュグナトフ国の宝物庫に長年しまわれていたやたら豪華な宝冠を、新国王の為に用意してくれて、教皇様がアールスハインの頭に宝冠を載せ、新たな国王の誕生を祝ってくれた。
教会からこれまた豪華馬車に乗って、国民に手を振りながらお城へ。
城の広場を開放してバルコニーから手を振る顔見せ。
ずっと微笑んでるアールスハインの顔が引きつってきてるけど。
パーティーの入場は下位貴族からなので暫く休憩。
軽食を食べながらお疲れのアールスハインを励ます。
実は斜め後ろにずっと控えてた助も結構お疲れ。
友人代表として身分に関係なく招待され、この場に居るユーグラムとディーグリーと三人でニヤニヤと二人を眺める。
ユーグラムは無表情だけど、雰囲気は面白がってるのが感じられるしね。
貴族に続いて各国の来賓方が入場して、こそっと俺達も会場入りして、いよいよアールスハイン新国王の登場。
来賓の方々の盛大な拍手と、この国の貴族達の礼に迎えられ、堂々と胸を張って現れたアールスハイン。とその斜め後ろに助と新将軍。
助と新将軍が一段低い場所に立って、なんと!助が、
「新国王、アールスハイン陛下である」
とか宣言してる。
前世ノミの心臓で社内会議でも胃薬必須だったのに、成長しとる!
「面を上げよ。半年前に滅びたササナスラ王国は、今日この日をもって、リュグナスラ王国と名を改め、新たな国として立つ。民が飢えることのない、どの様な種族でも差別の無い国を作っていきたい。貴族諸兄には是非とも協力を願う」
アールスハインが初心表明して、各国の来賓の方々がまた盛大な拍手をしてくれる。
元ササナスラの貴族達はどこか戸惑った様子。
王様に協力を願われたのが、とても驚いてそして不思議そう。
今までは命令されるばかりで意見を聞かれた事さえなかっただろうからね。
国名が安直だけど、その方が馴染むのが早いんじゃないか?との将軍さんの助言で決まりました。
何だか微妙な空気の中パーティーは始まった。
連日暑すぎる日が続いておりますが、皆様体調に気をつけてお過ごし下さい。




